小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
東京で土地活用をお考えの方の中には、土地を効率よく利用できる「地下室のある賃貸物件」を検討中の方もいるのではないでしょうか。
今回は、東京で地下室のある賃貸物件の需要や建築のポイントについて解説します。地下室や半地下を上手く活用することで、狭小地でも土地活用の可能性が広がります。ぜひ参考にしてくださいね。
地下室は、コンクリートと土に囲まれた空間のため、防音性・遮音性が高くなるのが特徴です。
地下室の防音性の高さをアピールして、ホームシアターや音楽スタジオなどが欲しい層に向けた賃貸住宅を提供できます。
地下室は周囲の建物や道路からの視線が気にならないのもメリットです。
地下室は階下への振動を気にしなくて良いため、ランニングマシンなども気兼ねなく使えるのがメリットです。
お子さまが走り回っても振動によるクレームの心配がないため、お子さまのプレイルームとして地下室を活用したいファミリー層にも一定の需要があります。
20年以上前は、地下室を居室(継続的に使う部屋)として使うことは建築基準法で認められていませんでしたが、2000年の建築基準法改正によって、以下の条件(衛生上必要な措置)を満たせば地下も居室として認められるようになりました。
上記のいずれか、かつ
外壁等に一定の基準を満たした防水層を設置するとともに、土圧、水圧、及び地震等に対して構造耐力上安全であること
からぼり(ドライエリア)とは、地下室の外壁に面した土を掘り込んで、地下室に開口部を設けるものです。ドライエリアは、中庭のように室内に光や風を通せるので、湿気の貯まりやすい地下室の快適性が大きくアップします。
このドライエリアを、「地下テラス」や「専用庭」のある賃貸物件としてアピールできます。ドライエリアを上手に設計することで、賃貸でもプライバシー性の高い中庭でガーデニングやアウトドアリビングを楽しめる魅力的な物件になるでしょう。
地下を利用して、半地下+1階の吹き抜けのある物件など、メゾネットタイプの賃貸物件を作ることもできます。メゾネットタイプは開放感があり、地下部分にも光や風が入るため明るく快適性が高い物件になります。
ファミリー層をターゲットにする場合に特にオススメです。
地下室・半地下のある賃貸物件のメリットをご紹介しましたが、土地活用の面でも地下室には有利な点があります。
地下室は、一定の条件を満たすと「容積率の緩和」を受けられ、容積率を超えた広さの建物を建てられます。
ちなみに地下室(地階)とは、法的には次の2つの条件を満たす階のことです。
例えば、地下室の天井が高さ2.4mの場合、床から地盤面までの高さが80cm以上(80cm以上が土に埋まっている)であれば、一見1階のように見えても、その階は「地階」ということになります。
そして、「地下室による容積率の緩和」を受けるには、地階の天井高さと地盤面の差が1m以内にする必要があります。
先ほどの地下室の天井高さが2.4mの場合は、天井から地盤面の高さが1m以内、つまり地下室の床面から1.4m以上が地下に埋まっていることが条件になります。
この条件を満たせば、地下を含めた建物全体の床面積の合計の1/3までの地下室床面積は、容積率の対象になる延べ床面積に算入されません。
画像引用元:新宿区都市計画部「建築の手びきー知っておきたい建築のルールー2021年版」
この特例を利用することで、地下も含めて、より大きな建物を建てて賃貸住宅の収益性を上げられます。
地下室は、もともと地下を作りやすい傾斜地にもおすすめの手法です。傾斜地で建物を建てると、傾斜の高い方は基礎を深くするため、地下部分ができます。
地下部分を活用したビルトインガレージや多階層のスキップフロアの間取りなど、住みやすく個性的な賃貸物件を実現できます。
地階は住戸(居室)としてだけではなく、駐車場やトランクルームなどにして、地上階と活用方法を分けるアイデアもあります。エリアの需要を考慮して最適な活用方法を検討しましょう。
地下室・半地下のある賃貸住宅を建てたい場合は、まず、地下室のある物件を建築しても問題がない土地かを確かめる必要があります。
そして、地下物件の入居率を高めるためには、地下物件のイメージ払拭や、快適性を高める工夫、そして浸水など地下物件のリスクに対する対策が必須になります。
地下のある賃貸住宅の建築のポイントをまとめてみます。
地下室をつくる場合は、地盤など、その土地の状況を事前に調べ、建築会社と相談の上検討しましょう。
地盤調査によって地盤が弱いと判断された場合は、大規模な地盤改良工事が必要になります。また、地下水がどれくらい出るかによっても、山留め工事(周辺の地盤や建物が崩れないように周りの地面を固めたり、支えを作る工事)や土工事の手間やコストが変わってきます。
原則として、軟弱地盤や地下水が多い地盤は地下室には不向きでコストが大幅に上がるため避けたほうが無難です。
地下の大敵は「浸水」です。地下は道路面から雨水が流入しやすいため浸水が起こることがあります。また、下水管から下水が逆流し、排水管からあふれることもあります。
さらに、豪雨・洪水などで地上が冠水し、水位が地下室の出入り口の高さを超えると一気に水が流れ込み非常に危険です。
地下室のある建物を建築する際は、以下のような浸水予防対策を行いましょう。
例えば新宿区では、新宿区洪水ハザードマップに表示された「浸水した場合に想定される水深が0.1メートル以上の区域」に地下室等を設置する場合は届出が必要です。建設地の浸水ハザードマップ予想水位を必ず確認して、自治体ごとのルールに従って浸水予防措置を行いましょう。
ドライエリアは、地下に自然の光と風を取り込んで窓から換気ができ、暗さや湿気の多さを解消できるなどのメリットがあり、快適性が向上し物件の価値も高まります。また、ドライエリアは敷地外から見えにくくすれば、人目を気にせず窓を開けられるなどのメリットもあります。
ドライエリアを作る際の注意点
ドライエリアには排水ポンプを設置し、雨水が溜まらないように排出するシステムが必要です。排水ポンプの寿命は10年程度が目安で、定期的なメンテナンスや交換も必要な点も頭に入れておきましょう。
また、ドライエリアの外側の壁は、ある程度地上から高さのある塀などを作り、豪雨などでドライエリアに水がそのまま流れ込んでしまわないような対策も有効です。
また、地下のある建物でドライエリアを作る場合、ドライエリアのための面積が必要なので、その分住戸の面積や戸数が少なくなる可能性もあります。土地活用における希望や、求める収益性などに応じて選択しましょう。
地下のある建物は、地下のない建物よりも建築費用が上がるため、利回りや年間収入をシミュレーションして収益性を見極めることが重要になります。地下室を作ったとして本当に採算が取れるのか、建築会社としっかり相談しながらプランを決定しましょう。
今回は、地下室・半地下のある賃貸住宅のメリットや建築の注意点について解説しました。地下室のある賃貸住宅は、傾斜地(高低差のある土地)活用にもおすすめで、地下室の容積率緩和を利用すれば最大収益を上げられます。
ただし、今回解説したような地下室のデメリットが起こらないために、ドライエリアを作ったり、浸水対策を十分に行ったりなどの快適性・安全性を高める(空室率を下げる)工夫は必要です。
また、地下室を作ることで建築費用が上がるため、事前に収支・利回りの緻密なシミュレーションを行い、適切な構造・工法・設計を選ぶことがとても重要になってきます。
M-LINEは、工法・構造に縛られない家づくりで、他社からは決して出てこないプランをご提案します。
東京で新しい家や賃貸住宅を建築したいと考えた時、ネックになる部分は土地の問題です。自分たちの理想の立地条件で、思い描くような広さを入手できるとは限りません。
敷地が狭い中でどのようにして部屋数を確保するか、ゆとりを感じられる空間をつくれるか、収納などの機能性を高めることができるのかは、設計力にかかっています。家の良し悪しは、決して広さだけで決まるものではありません。建てる家が住む家族のライフスタイルに対して、快適なものであることが大切です。
M-LINEは、東京の限られた土地を最大限に活かした技術と設計で、理想の家づくり・土地活用をお手伝いします。
「変形した土地が原因で他の工務店に断られた」「狭小地に賃貸併用住宅を建てたい」そのような場合も、M-LINEなら希望に沿ったご提案が可能です。
狭小地や変形地での家づくり・土地活用をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
2024/10/31
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