小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
賃貸併用住宅を検討する際「頭金なしでも建てられる?」「頭金はどれくらい必要?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。賃貸併用住宅は特殊な構造をしているため、通常の注文住宅や戸建て住宅よりも費用が高くなってしまう可能性があります。
本記事では、頭金なしで賃貸併用住宅を建てられるかどうかに加えて、頭金を用意するメリットについて詳しく解説します。空いている土地の活用や、実家の相続、自宅の建て替えなどで賃貸併用住宅を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
賃貸併用住宅を検討する際に気になるのが頭金です。頭金は、住宅価格からローン借入分を差し引いた部分を指します。頭金を多く払えば払うほど、ローンの借入額は少なくなります。
頭金を用意しておくことで、より無理のない住宅ローンの返済が可能です。しかし、頭金が用意できない場合でも、住宅ローンを組むことはできます。
以下では、頭金に必要な金額の目安や、頭金がない場合の注意点について解説しています。
賃貸併用住宅の頭金の目安は約20%となっています。例えば、8,000万円の賃貸併用住宅を建てる場合、頭金は1,600万円程度です。しかし、建物を建てる際、税金や手数料などの諸経費も多く発生します。
諸経費は住宅購入価格の5%程度が目安となっているので、手元資金としては25%程度用意しておく必要があります。ただし、頭金を無理して目安より多く用意する必要はありません。頭金が多ければ多いほど総返済額は少なくなりますが、今後の生活に影響が出てしまう可能性が高いためです。
手元資金を頭金で使い切ってしまうと、万が一のときに対応できなくなります。そのため、月々の生活費や子供の教育費を考慮したうえで、頭金を用意することが大切です。
頭金がなくても、住宅ローンを組むことはできます。しかし、フルローンになると審査が厳しくなる点に注意が必要です。銀行によっては90%以上の借入になると、金利が高くなるところもあります。
金利が高くなると利息が増え、返済総額も高くなります。頭金がないと、希望する条件での借入が難しくなる可能性が高いです。
賃貸併用住宅を建築する際に、頭金を用意するメリットとして以下の3つが挙げられます。
頭金が多いほど借入額が少なくなるため、総支払額を少なくすることができます。また、金利が低いローン審査にも通りやすくなります。
一部の金融機関では、フルローンを組むよりも頭金を用意した方が金利が安くなります。金利が安くなると、借入総額を減らすことができます。頭金の割合によって金利が変わるローンもあり、割合が大きくなればなるほど金利は低くなる仕組みです。
頭金を自身で用意できない場合は、親のサポートを受けるのも1つの手です。ただし、サポートを受ける際は、事業計画をしっかり説明する必要があります。たとえ親子だとしても、金銭の貸し借りはトラブルに発展しやすいためです。
実際に借りる際は、借用書を作成すると良いでしょう。借入金額や利息の有無、支払いの延滞金などを細かく決めておくと、未然にトラブルを防ぐことができます。
頭金を支払うことで借入金が少なくなります。また、利息の支払額も少なくなり、返済負担が軽くなる点が大きなメリットです。ある住宅ローンで5,000万円の住宅を購入する場合、頭金ありとなしでシュミレーションすると以下の様になります。
頭金なし | 頭金10%(500万円) | 頭金20%(1,000万円) | |
---|---|---|---|
借入額 | 5,00万円 | 4,500万円 | 4,000万円 |
金利 | 〜10年:1.36% 11年〜:1.61% |
〜10年:1.05% 11年:〜1.30% |
〜10年:0.97% 11年:1.22% |
月々返済額(〜10年) | 15.0万円 | 12.8万円 | 11.2万円 |
毎月返済額(11年〜) | 15.4万円 | 13.2万円 | 11.6万円 |
諸費用 | 115万円 | 104万円 | 92万円 |
住宅ローン減税 | 351万円 | 336万円 | 271万円 |
総支払額 | 6,184万円 | 5,763万円 | 5,604万円 |
このシミュレーションでは頭金なしの場合、総支払額は6,184万円となります。それに対して、頭金を10%を用意した場合は5,763万円で頭金なしより421万円も少なくなり、頭金を20%用意した場合は5,604万円で頭金なしより580万円も少なくなります。
頭金が多くなると住宅ローン減税の戻りは少なくなりますが、それでも頭金を用意するメリットは大きいです。万が一、怪我や病気などで収入が減ったときのために一定の預貯金を持っておく必要はありますが、頭金が多ければ多いほどお得になります。
頭金を用意することで借入金が少なくなるため、ローンの審査も通りやすくなります。ローン審査の厳しさは金融機関によって異なりますが、金利が低いほど厳しくなるのが一般的です。低い金利でローンを利用したい場合は、頭金を多く用意する必要があります。
ローン審査の基準は借主の属性で、頭金を支払えば返済能力を証明できます。仮に頭金を用意できない場合、貯蓄が苦手で散財しやすい人と判断されてしまったり、返済能力に不信感を抱かれてしまったりする可能性が高いです。また、金融機関によっては、頭金を用意できるかどうかで審査が決まることもあります。
賃貸併用住宅を建築する際に、頭金を用意するデメリットとして以下の4つが挙げられます。
頭金を用意するのはメリットだけでなく、デメリットもあります。頭金は簡単に用意できるものではないため、時間をかけて貯める方が多いです。
また、頭金を支払った故に、急な出費に対応できなくなる可能性があります。そのため、一定の預貯金を残した上で、頭金を支払うことが大切です。
既に頭金を用意できている人は問題ありませんが、今から頭金を貯めようとすると時間がかかります。例えば、頭金として500万を貯金する場合、毎月4万円貯蓄するとしても約10年もの期間が必要です。また、60歳や65歳までに住宅ローンで完済できるようにするには、その分返済期間を短くする必要があります。
その間、金利が安いタイミングを逃したり、建てたい場所を取られてしまったりする可能性もあるため、必ずしも頭金を用意した方が良いとは言い切れません。
現在、賃貸に住んでいて家賃を支払っている場合、頭金が貯まるまで時間がかかるだけでなく、その間に家賃も発生します。500万円の頭金を貯めるのに5年かかった場合、年間で家賃が100万円なら合計500万円を家賃として支払うことになります。
例えば、頭金なしと500万円の場合、4,000万円の賃貸併用住宅を建てると総支払い額は頭金ありの方が少なくなります。しかし、5年間分の家賃を含むと頭金を貯めるメリットは小さいです。
頭金 | 諸経費(200万円)+頭金 | 5年間の家賃 | 借入金額 | 総返済額 (借入金額+金利) |
総支払額 (総返済額+家賃+諸経費+頭金) |
---|---|---|---|---|---|
なし | 200万円 | – | 4,000万円 | 約4,981万円 | 約5,181万円 |
500万円 | 700万円 | 500万円 | 3,500万円 | 約4,358万円 | 約5,558万円 |
手元資金を頭金に使うことで、緊急時の支払いができなくなる可能性もあります。賃貸物件を運営していると、補修など予想外の出費も少なくないのが現状です。毎月家賃収入を得られる場合でも、手元資金はある程度残しておく必要があります。
なぜなら、賃貸物件には空室リスクがあるためです。想定よりも空室ができてしまい、赤字経営になることも考えられます。そのため、住宅ローンを利用する際は、賃貸物件が満室の状態を想定してローンの返済額を決めないことが大切です。
賃貸併用住宅は戸数が少ないので、空室ができると収入は万単位で減少します。急な出費だけでなく、収入が減少するケースも考慮したうえで、頭金を用意するかどうか検討すると良いです。
賃貸併用住宅を建築する際は、住宅ローン控除を利用することができます。住宅ローン控除を適用するには、条件を満たす住宅を購入するだけでなく、条件を満たす住宅ローンを利用する必要があります。
賃貸併用住宅では、自宅部分の面積が50%以上の場合、住宅ローンの利用が可能です。
住宅ローン控除はこれらの条件を満たした場合、年末の時点でローン残高の1%が所得税から控除される仕組みです。なお、控除の上限額は年間40万円となっています。頭金を多く用意すると借入金を少なくすることはできますが、控除枠を上限まで利用できなくなる可能性があります。
賃貸併用住宅を頭金なしで建築する方法として、以下の2つが挙げられます。
住宅ローンやアパートローンを利用すれば、頭金なしでも賃貸併用住宅を建築することができます。
住宅ローンをフルローンで利用することで、頭金がなくても賃貸併用住宅を建築することができます。また、住宅ローン控除の適用も可能です。ただし、フルローンで利用する際は、建築費の全額を借り入れることになるため、金利の低いローンを利用できるかが重要です。
金利の低い住宅ローンを利用できるかどうかは、借主の属性や建築する賃貸併用住宅の条件によって異なります。属性としては、一般的に住宅ローンを利用する場合と同じです。借主の勤務先や勤続年数、年収、その他の借入状況などが条件となります。
また、立地の良さや賃貸の高さなども審査を左右する要素です。物件の収益率が高いとその分ローン返済比率が低くなるため、審査に通りやすくなります。
なお、住宅ローンを利用する場合は、自宅部分が総面積の50%以上でなければなりません。ただし、自宅部分が50%以下の場合でも利用できるケースもあります。細かい条件は金融機関によって異なるため、確認することをおすすめします。
住宅ローンでフルローンを利用できない場合は、アパートローンを利用する方法があります。賃貸併用住宅は賃貸経営を含むため、アパートローンを利用可能です。ただし、住宅ローンよりも金利が高くなる点に注意が必要です。
一般的に住宅ローンの金利が1%程度であるのに対して、アパートローンは2〜3%程度が目安となっています。そのうえ、長期的な支払い能力や購入金額などの審査基準も厳しいです。特にフルローンだと金融機関側の負担が大きく、リスクが高いと判断されるためです。
既に土地を所有している場合は担保余力が高いと判断され、審査で有利になります。そのほか、新築する建物の不動産評価額が住宅ローンの額を超えてるかどうかも審査の対象となります。連帯保証人は、職業や勤務先以外に、保証債務履行に対応できる資産を保有しているかが判断基準です。連帯保証人や担保がしっかりあると、審査に通りやすくなります。
頭金なしで賃貸併用住宅を建てる際の注意点として、以下の4つが挙げられます。
頭金がないと月々の返済負担は大きくなります。毎月安定して家賃収入を得られるとは限らないので、余裕のある返済プランを立てることが大切です。
頭金なしでローンを組んだ場合、金利が高くなり、返済期間が長くなる傾向があります。毎月の家賃収入をローン返済に充てることもできますが、必ずしも入居者が決まるとは限りません。想定よりも空室ができたり、突発的な出費があったりすると、返済が滞ってしまう可能性が考えられます。
そのほか、借入金利の上昇なども想定外のケースもあるため、余裕のある返済プランを立てることが大切です。想定される賃料や諸経費、月々の生活費や子供の教育費などをシュミレーションしたうえで、無理のない借入金額を決めることをおすすめします。
頭金なしで賃貸併用住宅を建てる場合、建築費が借入額となります。建築費が高くなればなるほど借入額が大きくなるため、利息部分の支払いも大きくなります。そのため、建築費を抑えて少しでもローンの支払い負担を軽減することが大切です。
建築費は複数社から見積もりを取り、比較することで抑えられます。同じ構造であっても、会社によって費用が異なるためです。見積もりの手間を省きたい場合は、一括請求プランの利用がおすすめです。
頭金なしでローンを利用すると、金利が高くなるケースが多いです。金利による負担が大きくなるため、金融機関ごとに金利を比較したうえで検討することをおすすめします。金利の基準は頭金が全体の1割以上かどうかです。
建築費としてかかる金額のうち9割を超えるかどうかで金利が決まる傾向があります。9割以下の場合に金利を低く設定する金融機関が多いです。住宅ローンでは1%程度が金利の目安となりますが、頭金がない場合だと2%を超えることもあります。
頭金なしでローンを組めたとしても、賃貸物件を運営していくには諸経費が必要になります。フルローンになるため、建築費用分だけローンで借り入れることが大切です。諸経費以外にも、自宅で使う家具や家電などを用意する費用も発生します。
また、緊急時に必要なお金を用意しておくと安心です。万が一の出費にも対応できるように、手元資金は取っておきましょう。
今回は、頭金なしで賃貸併用住宅を建てられるかどうかについて詳しく解説しました。頭金がなくても賃貸併用住宅を建てることは可能です。ただし、頭金を用意することで、金利が低くなったり、月々の返済額を減らせたりすることがあります。
一方で、頭金を貯めるのに時間がかかることや急な出費に対応できないことがデメリットです。メリットとデメリットを考慮したうえで、頭金を用意するかどうか検討することをおすすめします。
また、頭金なしで賃貸併用住宅を建てる場合は、少しでも建築費を抑えることが重要です。MLINEでは、ローコストで賃貸併用住宅を建てるノウハウを豊富に持っています。実績もあるので、賃貸併用住宅を検討している方はぜひお気軽にご相談ください。
2024/12/27
2024/12/27
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