小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
土地活用を検討する際に、どの程度の利回りなのか把握することは重要です。しかし、実際の利回りの相場や利回りの計算方法について分からない方は多いのではないでしょうか。
土地活用の利回りは表面利回りと実質利回りの2種類あり、どちらも計算方法と数値が違うため、状況に合わせて使い分ける必要があります。具体的な利回りを把握する上では、入居率などを考慮する必要もあるため、利回りの計算方法について理解しておきましょう。
この記事では、土地活用の2種類の利回りについてや利回りの相場、注意点などについて解説します。「所有する土地の利回りを計算したい」「提案された利回りが適正かどうか自分で判断したい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
利回りとは、投資金額に対する収益の割合を指します。土地活用においては、この利回りを把握することが非常に大切です。
利回りの種類は、以下の2つの種類があります。
簡単にいうと表面利回りは、1年間の収益だけを算出した利回りを表しています。実質利回りは、1年間の収益から諸経費などを差し引いて算出した利回りです。
以下では、2種類の利回りの特徴や計算方法などを解説するので、土地活用を検討する際に役立てましょう。
表面利回りとは、年間賃料の総額を投資額で割った数値を表します。経費などを差し引いた数値ではないため、1年間の収益の目安を付けるためによく使われる数値です。
表面利回りの計算方法は、以下の通りです。
表面利回り=(年間賃料収入総額÷投資額)×100%
例えば1億円の投資で1年間の収入が1,000万円の場合、表面利回りは10%となります。
表面利回りは、土地活用の計画の時点でシミュレーションなどをする際によく使われています。不動産のプラン提案の際や広告などの数値も、一般的には表面利回りの数値となっているため、実際に運用した際の利回りについてはもう少し低い数値となることを理解しておきましょう。
表面利回りは、土地活用の方法の比較やプラン提案の際に、簡単に利回りが計算できるのがメリットです。表面利回りの数値は参考程度にして、具体的な計画が決まったら実質利回りを数値化しましょう。
実質利回りとは、年間賃料の総額から年間経費を引いた純利益を投資額で割った数値です。海外の投資家や機関投資家の中では、NOI利回り(Net Operating Income)と呼ばれています。
実質利回りは表面利回りの計算と違い、諸経費などの支出も計算するため、より現実的な運用の数値の目安が立てられるのが特徴です。
実質利回りの計算方法は、以下の通りです。
実質利回り=(年間の賃料収入総額⁻諸経費)÷投資額×100%
例えば1億円の投資で1年間の収入が1,000万円、諸経費が200万円かかった場合、実質利回りは8%となります。
また、実質利回りを計算する際の経費は、以下のような費用が挙げられます。投資の判断をする際は、実質利回りを計算し、実態に近い状況で計画を立てることが大切です。
さらに、上記の経費以外にも、建物の経年劣化や空室による収入減などのリスクも考慮した上で、5~10年先の利回りを想定しておくとより現実的な数値となります。
土地活用の利回りの相場は、表面利回りで7~8%、実質利回りで4~6%程度が平均相場だといわれています。土地活用の利回りは、地域・周辺環境・坪単価・土地活用の種類によっても差があるため、事前に所有する土地の利回りの相場について調べておきましょう。
例えば1億円の不動産投資をした場合、実質利回り5%として計算すると、諸経費やローン返済などを差し引いても年間の収益は500万円程度です。
不動産投資では、土地を購入したローンなども入れた利回りを計算しているため、土地を所有している方はこの数値より利回りが高くなります。
できるだけ高い利回りを実現するためには、様々な土地活用の方法を比較検討することが大切です。所有する土地の立地や周辺環境を十分調査し、リスクなども想定した上で土地活用の方法を選定しましょう。
土地活用には様々な方法がありますが、高利回りを狙うなら以下の4つの方法がおすすめです。
土地活用では、所有する土地に建物を建築し、第三者に貸し出して家賃収入を得る方法が高利回りとなっています。中でも賃貸併用住宅は、家賃収入とマイホームと同時に手に入れることができるので非常に魅力的な手法です。
ここからは、上記の土地活用の特徴やそれぞれの利回りについて詳しく解説するので、高利回りな土地活用を検討している方はぜひ参考にしてください。
賃貸併用住宅は、戸建ての住宅の一部を賃貸住宅にした建物のことをいいます。家賃収入のあるマイホームという選択になるので、ローリスクハイリターンの非常に魅力的な土地活用の方法です。
賃貸併用住宅の利回りは、平均的に3~4%前後が相場だといわれており、アパートやマンション経営に比較すると半分程度となっています。理由としては、通常の賃貸物件より自宅部分を占める割合が高いためです。
ただし、地域や坪単価、経営方法によって相場が前後するので事前に相場を確認しておきましょう。
賃貸併用住宅は、オーナーの自宅部分が50%以上の場合は、住宅ローンが組めるのがメリットです。住宅ローンはアパートローンより金利が低く、借入期間も比較的長期で設定できるため、月々の返済の負担が軽減します。
また、土地に建物を建てて相続するため、現金をそのまま相続するより相続税の負担が軽減できるのもメリットです。ただし節税対策をするには、税金や住宅関係の知識が必要なため、税理士などの専門家に相談しましょう。
賃貸併用住宅は好条件で賃貸物件とマイホームを手に入れることができ、比較的高額で安定的な収益を得られるため、近年注目されている土地活用の方法です。空き部屋の際は、来客用として活用したり自分の事務所としたりできるため、ライフスタイルに合わせて運用できるのも魅力です。
貸店舗(テナント)経営は、コンビニや美容院、薬局など商業用のテナントとして建物を貸し出し賃料を得る方法です。貸店舗経営の平均利回りは5~7%が相場のため、高い利回りが見込めるでしょう。
アパートやマンションなどの賃貸では、エリアによって賃料相場が決まっている場合が多いです。しかし、貸店舗物件は事業者が売り上げを出せる立地であれば、比較的高く賃料を設定しても借り手が見つかります。
例えばある程度の広さのある大通り沿いのロードサイド物件では、車での来客を見越した商業テナントの需要があります。市街地の路面店や駅前のテナントビルであれば、更に集客が期待できるため、より高い利回りが期待できるでしょう。
上記のようにどのような事業者にテナントに貸し出すのか、ターゲットを決めることによって、より高い利回りを狙えます。貸店舗は長期入居が期待できるため、入居が決まれば比較的安定的に収益が見込めるのもメリットです。
貸し出した後は借りた事業者側が管理を行ってくれるため、オーナー側の管理負担もほとんどありません。ただし、賃料が高い分、空室や借り手が見つからない期間が長くなるリスクがあることを理解しておきましょう。
アパート経営はアパートを建築し、家賃収入を得る方法です。平均利回りは5~7%となっており、比較的高い数値となっています。
需要が高い土地であれば、高い入居率が期待でき、賃料単価も比較的高値で設定できるでしょう。一方で家賃相場が低い地域や生活の利便性に欠ける立地の場合は、空室のリスクも高くなり、利回りが下がることも考えられます。
そのため、所有する土地エリアはアパート経営の需要があるのかどうか慎重に判断する必要があります。ワンルームやファミリー向けの物件など、入居が期待できそうなターゲットを事前に設定することも重要な経営戦略です。
アパート経営は、固定資産税などの税金以外にも、管理委託料や修繕費、不動産仲介手数料などのランニングコストも多くかかります。これらを想定した上で、複数の企業にプランを提案してもらうのがおすすめです。
アパートの建築費用の見積もりや家賃設定などは、それぞれの企業で違います。そのため、複数の企業の見積もりを比較して、適切な経営プランを選ぶことが成功へのコツです。
マンション経営は、マンションを建築し、家賃収入を得る方法です。平均利回りは、アパート同様に5~7%となっており、高額な家賃収入が得られます。
マンションの建築費用はアパートと比較して高額になりますが、部屋数や条件が良いほど高額な家賃収入が得られるため、利回りはほぼ同等となっています。ただし、投資の規模はマンション経営の方が大きくなるため、収益性の高さを優先するならマンション経営がおすすめです。
マンション経営においても、需要があるのか、家賃相場がいくらなのかを事前に調査することが大切です。また、ランニングコストや空室のリスクなどを考慮した上で、具体的な実質利回りを計算し、適切な経営プランを作成しましょう。
土地活用の利回りを計算する上では、注意すべき点がいくつかあります。土地活用を検討する際に知っておくべき4つのポイントは、以下の通りです。
利回りが高い土地活用は、ハイリスクハイリターンであるものも多いため、慎重に判断しましょう。また、物件の経年劣化などによって利回りが変動するリスクなどもあるため、その点も踏まえて利回りを計算することが大切です。
以下で土地活用の利回りの注意点について、詳しく解説するのでチェックしておきましょう。
土地活用の判断においては、入居率を計算する必要があります。なぜなら不動産会社などで提案されるシミュレーションでは、表面利回りで計算される場合が多いため、入居率が考慮されていないからです。
表面利回りは、常に満室である状態の利回りで計算されているため、入居率が考慮されていません。空室の場合は一時的に収入が減ってしまうため、それらも考慮した上で利回りを計算する必要があります。
例えば、8,000万円で購入した8戸あるマンション一室の家賃が8万円/月だったとします。満室時は64万円/月、768万円/年になるため、利回りは9.6%です。
一方で入居率が80%だった場合は利回りが7.2%となり、48万/月、576万/年となってしまいます。このように入居率によって、利回りが大きく変化するため、必ず入居率が下がった場合を想定して計算しましょう。
満室の状態で利回りを計算すると、思わぬ出費の際に資金繰りが大変になる場合もあるため、余裕を持って計算しておくと良いです。
利回りが高い案件は、ハイリスクである土地活用になる場合が高いので注意しましょう。理由としては利回りが高く需要がある優良物件は競争率が高く、残っている物件は売れ残っている物件である可能性が高いためです。
高利回りでも、需要がなければ結果的に低い家賃を設定しなければならなくなってしまい、赤字となるケースも多いです。そのため、その物件が本当に需要があるのか判断しなくてはなりません。
また、魅力的な優良物件は、投資家や不動産会社がすぐに買い取ってしまうケースも多いです。高利回りな物件は、投資家などの数人だけに情報が公開され、一般的な市場には出回らない場合もあります。
そのため、利回りが高い物件の購入を検討する際は、一度専門家に相談してから判断するのがおすすめです。
ただし、新たに土地や建物を購入する場合ではなく、家賃相場が高いエリアに土地を所有するオーナーであれば、ローリスクハイリターンの土地活用が行えるでしょう。高い入居率を目指すには、需要に合った間取りや賃料などの設定が大切なので、こちらも専門家に相談してみるのがおすすめです。
土地活用を判断する際は、実質利回りを計算することが大切です。実質利回りは、税金・修繕費・管理費・水道光熱費などの諸経費が考慮されており、より現実的な運用の目安が立てられます。
不動産会社が提示する実質利回りは、初期費用や年間経費の見積もりが甘い可能性もあるため注意が必要です。実質利回りは細かい数値まで厳しく設定することで、よりリスクが少ない土地活用の方法を見極められるでしょう。
また、ローンの返済額や減価償却税金などは、実質利回りで考慮されません。より実践的に近い状況を予測するためには、その他のコストの支払いについてもシミュレーションしておきましょう。
利回りは、変動リスクがあることを理解しておきましょう。なぜなら運用中に建物の周辺環境が変化したり、建物が経年劣化したりする可能性があるからです。
例えば、建物は10年程度経過すると修繕費用がかかるため、利回りが低くなります。築年数が増えるほど人気もなくなってくるため、家賃設定を低くする必要もあるでしょう。
一方で、近くに新しく商業施設ができたり交通環境が良くなったりすることで、逆に賃料を高く設定できる場合もあります。このように経年劣化による影響や周辺環境によって、利回りが変動するリスクがあることを理解しておきましょう。
今回は、表面利回りや実質利回りについてや土地活用の利回りの相場、高利回りを狙えるおすすめの土地活用について解説しました。土地活用は様々な方法があり、立地や周辺環境などの需要に合った土地活用の種類を選ぶことが非常に重要なポイントです。
また、利回りを計算する上では、入居率を計算したりリスクを考慮したりするなど注意すべき点も多くあります。利回りが高い物件は、ハイリスクハイリターンであるものが多いため、土地活用の専門家に相談してみるのが失敗するリスクを軽減できるでしょう。
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2024/11/29
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