小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
「賃貸併用住宅を建てる際のローンの取り扱いについて知りたい!」
「金利を抑える方法はある?」
「賃貸併用住宅で住宅ローンを使う際の注意点はなに?」
賃貸併用住宅を建てるにあたり、住宅ローンを活用したいと考えている方も多いでしょう。
住宅ローンを利用することで、低金利で借入できたり、高い節税効果を期待できたりなどのメリットがあります。
本記事では、賃貸併用住宅で住宅ローンを使うメリットや注意点などについて詳しく解説します。賃貸併用住宅の収益性を高める方法についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸併用住宅で住宅ローンを使うメリットは、以下の5つです。
それぞれ順に詳しく解説していきます。
なお、賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する際には、住宅部分が建物全体の50%以上を占めるなどの条件が定められています。例えば、延床面積が200㎡の建物の場合、自宅として使用する部分の面積は100㎡以上必要です。
条件を満たさない場合、住宅ローンではなく不動産投資ローンやアパートローンなどの適用となります。金融機関によってはさらに細かい条件が設定されている場合があるため、具体的な条件や審査基準を事前に確認しましょう。
賃貸併用住宅を建てる際に住宅ローンを利用することで、アパートローンよりも低い金利で借入できます。
以下は、住宅ローンとアパートローンの金利を比較した表です。
ローンの種類 | 金利の範囲 | 備考 |
---|---|---|
住宅ローン | 変動金利:0.3~0.5% 固定金利:1.0~2.0% |
・低金利 ・フラット35は、1.84~2.0%程度 |
アパートローン | 1.5~4.0% | ・平均金利は約2.7% ・住宅ローンより高い傾向 |
※2024年11月時点
※金融機関や時期によって異なる可能性があります
2024年11月現在の住宅ローンの変動金利は、0.3〜1.5%程度と低い水準にあります。固定金利の場合でも、1〜2%の範囲です。一方、アパートローンや不動産投資ローンの金利は1.5〜4%前後あり、平均的には2.7%ほどとされています。
低金利の住宅ローンを利用することで、返済負担の軽減を実現できることがメリットです。
賃貸併用住宅では、家賃収入を住宅ローンの返済に充てられることも大きなメリットです。
通常、住宅ローンの返済は借入者の給与収入に依存します。しかし、賃貸併用住宅では給与収入に加えて家賃収入が得られるため、返済原資が増え、返済の安定性が向上します。万が一、給与収入が減少した場合でも、家賃収入を活用することで、無理なく返済を続けることが可能です。
特に病気や失業などの予期しない状況でも、家賃収入という安定した収入源があるため、ローン返済を滞りなく行いやすくなります。
賃貸併用住宅で住宅ローンを活用することで、以下の節税効果が期待できる点も大きなメリットです。
これらの制度をうまく活用すれば、経済的な負担を軽減しつつ、安定した収入を得ることが可能です。それぞれ順に紹介します。
賃貸併用住宅に住宅ローンを利用することで、住宅ローン控除を受けることができます。その結果、住宅ローン残高の一定割合(通常は0.7%)が最大13年間、所得税から控除されます。例えば5,000万円の住宅ローンのうち自宅部分が50%であれば、2,500万円に対して控除が適用され、毎年の所得税負担を軽減することが可能です。
賃貸併用住宅は住宅用地として扱われるため、固定資産税に対しても軽減措置を受けることができます。詳細は以下のとおりです。
住宅用地の軽減措置 | 新築住宅の軽減措置(※) |
---|---|
200㎡まで:課税標準 × 1/6 200㎡超過部分:課税標準 ×1/3 |
120㎡まで:3年間または5年間にわたり、固定資産税が1/2に減額 |
※2020年3月31日までに新築された住宅に適用
賃貸併用住宅では、賃貸部分の評価額が自宅部分よりも低くなるため、相続時にかかる相続税の評価額を減少させることができます。
さらに、賃貸物件用の宅地については、「小規模宅地等の特例」により、最大50%(200㎡まで)の評価額減額を受けることが可能です。居住用の宅地についても、最大80%(330㎡まで)の減額が可能となり、相続税負担を大きく軽減することができます。
住宅ローンはアパートローンと比較して、審査に通りやすいといったメリットもあります。各ローンの審査基準を比較すると、以下のようになります。
審査項目 | 住宅ローン | アパートローン |
---|---|---|
主な審査基準 | 年収・勤続年数・信用情報 など | 物件収益性・投資経験・市場性 など |
返済原資 | 給与収入 | 家賃収入 |
融資金額の目安 | 年収の5〜8倍 | 年収の10〜20倍 |
※審査基準は金融機関によって異なる可能性があります
住宅ローンは主に借り手の年収、勤続年数、信用情報などに基づいて審査され、安定した給与収入があれば比較的容易に融資を受けられます。一方、アパートローンは投資用物件の購入を目的とした融資のため、審査基準がより厳格です。物件の収益性、市場性、借り手の投資経験などが厳しく評価されるため、初めての不動産投資の場合は審査を通過することが難しくなります。
返済原資の観点からも違いがあります。住宅ローンは主に給与収入に基づいて返済能力が評価されるため、安定した収入がある場合は審査に通りやすいことが特徴です。対して、アパートローンは家賃収入が返済原資となるため、賃貸経営の安定性が厳しく問われることがあります。
住宅ローンはアパートローンに比べて、借入期間を長く設定できる点もメリットとして挙げられます。借入期間を長く設定することで、月々の支払負担を軽減することが可能です。
住宅ローンの借入期間は一般的に30〜35年程度に設定されることが多い一方、アパートローンの借入期間は通常20〜30年ほどと短い傾向があります。アパートローンは収益物件の購入を目的としているため、金融機関はリスクを考慮し、比較的短い返済期間を設定することが一般的です。
賃貸併用住宅で住宅ローンを使う際の注意点は、以下の3つです。
大切なポイントなのでぜひ読み進めてみてください。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する場合、重要なポイントとなるのが自宅部分の面積です。住宅ローンの適用を受けるためには、自宅部分の床面積が建物全体の延床面積の50%以上を占めている必要があります。
条件を満たさない場合、住宅ローンの利用が認められず、金利が比較的高いアパートローンを検討せざるを得なくなります。
賃貸併用住宅の建築を計画する際は、設計段階から自宅部分と賃貸部分の面積バランスを慎重に検討することが重要です。
住宅ローンを使用するための審査において、借入者の年収と年齢が重要な審査基準となる点も注意が必要です。
例えば、年収が低い場合は借入可能額が制限され、思い描いていた規模の物件購入が困難になる可能性があります。また、年齢が高い場合も同様に、借入額が制限されることがあります。
心配な場合は物件購入を検討する前段階で金融機関に相談し、自身の収入や年齢に応じた借入可能額を把握しておくことが大切です。
住宅ローンを利用する際、金融機関によっては特定のサブリース会社の利用を指定される場合があります。金融機関がリスク管理の観点から、信頼できる管理会社を通じて安定的な賃貸運営を確保したいといった意図があるためです。
サブリース会社の選定は収益性に大きく影響するため、金融機関の指定条件については、住宅ローンの申し込み前に詳しく確認することをおすすめします。
一方、アパートローンの場合は、サブリースの利用はオーナーが自由に選択できることが多いです。
賃貸併用住宅で住宅ローンを借りて収益性を高める3つの方法を紹介します。
順に解説していきます。
1つ目の方法は、賃貸部分から得られる家賃収入を最大化することです。以下のポイントに留意することで、安定した収入を得られる可能性が高まります。
これらの施策を実行することで、賃貸部分の収益を最大化し、住宅ローンの返済を効率的に進めることが可能となります。
収益性を高めるためには、魅力的な設備を導入し、入居者に選ばれ続ける物件づくりを行うことも重要です。
具体的には、使い勝手の良い最新式キッチンや快適なバスルーム設備、全室設置のエアコン、充実した収納スペースなどが入居者から高い評価を得られる設備として挙げられます。インターネット接続を無料で提供するなど、入居者の生活をサポートする付加価値サービスも効果的です。
さらに、物件の特徴を明確にするための投資も検討価値があります。例えば、ペット可物件として設備を整えることで、ペットと暮らしたい入居者から選ばれやすくなり、競合物件との差別化が図れます。
設備投資は初期費用がかかりますが、住宅ローンの低金利や節税効果などをうまく活用した資金計画を立てることで、負担を軽減しながら収益性を高めることが可能です。
賃貸併用住宅の収益性を高めるためには、賃貸部分が空室にならないよう、空室対策を講じることも重要です。
具体的な対策として、賃貸管理を専門の管理会社に依頼する方法が効果的です。専門の管理会社は、空室募集活動や入居者対応を効率的に行い、入居者の獲得をスムーズに進めてくれるでしょう。
最後に、賃貸併用住宅で成功するための金利・ローン活用のポイントを5つ紹介します。
順に解説していきます。
金利タイプは複数あるので、自分のライフプランや収入の変動を考慮して無理のないプランを選ぶことが大切です。以下に代表的な金利タイプとその特徴を紹介します。
賃貸併用住宅の場合、安定した収益を確保できるため、将来の返済額が安定する固定金利型を選ぶ人が多い傾向にあります。一方、初期の金利が低い変動金利を選んで、将来的な金利上昇を見越して借り換えのタイミングを考えるのも選択肢の一つです。自分に合った金利タイプを選択することで、安心した資金計画を立てられるでしょう。
賃貸併用住宅のローンを組む際は、複数の金融機関を比較することがポイントです。金融機関によって金利や融資条件、手数料の設定などが異なるため、慎重に比較検討しましょう。
また、銀行によっては、自宅部分と賃貸部分の比率や賃貸収入を考慮した柔軟な条件を提示してくれる場合があります。
銀行の選定をしっかりと行うことで、自分にぴったりの支払い計画が立てられるでしょう。
繰上返済を活用することで総支払利息を削減でき、支払いの負担を抑えることが可能です。
さらに、繰上返済を計画的に行うことで、将来の金利上昇リスクを軽減する効果も期待できます。特に変動金利型ローンを利用している場合は、金利が上昇する前に繰上返済を行うことで、利息負担の増加を抑えられる可能性があります。
ただし、繰上返済を行う際には、手元資金に十分な余裕を持つことが必要です。急な出費や空室リスクに備えた資金を確保しつつ、無理のない範囲で計画的に実施することが重要です。
住宅ローン控除とは、一定の条件を満たせば所得税の控除を受けられる制度です。賃貸併用住宅でも、住宅部分のローンに関しては住宅ローン控除の対象となります。
控除を活用することで、税金面でのメリットを得られ、返済額の負担を軽減することができます。税制優遇を最大限に活用するために、住宅部分と賃貸部分の面積やローン額を適切に設定しましょう。
賃貸併用住宅のローンを成功させるためには、金融や不動産の専門家に相談することをおすすめします。
住宅ローンや事業用ローンの選択、金利タイプの比較、返済計画の策定といった複雑な手続きを専門家がサポートすることで、最適な選択がしやすくなります。また、専門家を活用することで、自分で気づきにくいリスクを把握し、事前に対策を講じることも可能になるでしょう。
M-LINEでは、土地活用から資金計画、税金、固定資産税など、様々なお悩みを解決するため、専門スタッフによるコンサルティングを実施しています。収益性を考慮した魅力的な賃貸併用住宅の提案も可能です。少しでも興味のある方は、お気軽にご相談ください。
本記事では、賃貸併用住宅で住宅ローンを使うメリットや注意点などについて詳しく解説しました。住宅ローンは、アパートローンと比べて低金利で利用できることが魅力です。節税効果が期待できるほか、比較的審査に通りやすいといったメリットもあります。
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M-LINEでは、東京23区に特化した建物づくりを行っています。東京都内特有の道路斜線制限や厳しい北側日影規制など、さまざまな課題をクリアしながらワンランク上の賃貸併用住宅を実現。狭い土地でも収益性を考慮した魅力的な賃貸併用物件を建てることが可能です。
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2024/11/29
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