小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
二世帯住宅は、「何坪必要?」「狭い土地では建てられない?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと30坪程度の広さがあれば二世帯住宅は十分建てられます。
また、二世帯住宅は完全同居型・一部共有型・完全分離型の3つのタイプがあり、それぞれ必要な坪数が違います。そのため、どのような二世帯住宅を希望するかによって必要な坪数や費用が変わってくるため注意しましょう。
そこで、本記事では二世帯住宅の何坪必要かや平均、二世帯住宅のタイプ別の間取りと坪数の目安、必要な坪数を確保できないときの対処法などについて詳しく解説。また、実例を基に実際に二世帯住宅を建てた際の例もタイプ別に紹介しているので、二世帯住宅を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
二世帯住宅を建てる際は居住する家族の人数にもよりますが、家族4人世帯の場合最低でも約30坪(50㎡)の広さが必要とされています。理由としては、国土交通省が定める居住面積水準の最低居住面積水準(家族4人世帯)を参考にしています。
【家族の4人の最低居住面積水準】
最低居住面積水準 | 50㎡(約30坪) |
都市居住型の誘導居住面積水準 | 95㎡(約60坪) |
郊外や都心部以外の誘導居住面積水準 | 125㎡(約80坪) |
上記のように東京などの都心に住んでいる場合と郊外などに住んでいる場合で、推奨されている広さが違います。例えば、6畳程度の子供部屋を追加したいなどの場合は、6畳(9.72㎡:2.94坪)を増やした坪数が必要です。
また、完全分離型・一部共有型・完全同居型などの二世帯住宅のタイプによっても、必要な坪数が異なるため、後の章でくわしく解説します。
二世帯住宅で必要とする坪数の平均は、30坪程度です。二世帯住宅で必要な坪数は、居住する家族の人数によって異なるため、一概に30坪とはいえません。
そこで、希望する間取りと間取り係数を基に計算しましょう。トイレ・収納・洗面所などの間取りは含めず、それ以外の希望する間取りの大きさを算出します。
【例】夫婦と子供2人世帯と両親2人が暮らす二世帯住宅
リビングダイニングキッチン13畳/寝室8畳×2/子ども部屋5.5畳×2=合計40畳
上記の40畳を間取り計数(※ゆとり度:1.6~2.0)をかけて、必要な延べ床面積を算出。間取り係数とは、建築家の吉田佳二氏が考案した数値で、係数が大きいほどゆとりのある間取りとなります。
今回は間取り係数でも、平均的な1.6~1.8で計算します。二世帯住宅で必要とする坪数の算出方法は以下の通りです。今回はすこしゆとりのある1.8の間取り係数で計算します。
計算式 | 上記例の場合の坪数 |
---|---|
部屋の畳数×間取り係数(※)÷2 | 37畳×1.8÷2=33.3坪 |
上記の計算方法から、夫婦と子供2人世帯と両親2人が暮らす二世帯住宅などの一般的な二世帯住宅の場合の平均は、30坪~35坪程度が平均となります。さらに部屋数を増やしたり書斎を増やしたりしたい場合は、希望する間取りの計算の際に足して計算を行い、希望する間取りが実現する土地探しを行いましょう。
二世帯住宅を建てる際の坪数は、二世帯住宅のタイプによって異なります。二世帯住宅のタイプは、以下の3つがあります。
完全同居型・一部共有型の場合は、一部のスペースを共有する形となるため、坪数を抑えられるのがメリットです。一方で完全分離型は、リビング・浴室などすべての設備や間取りが各世帯に必要になるため、坪数を多く用意しなくてはなりません。
ここからは各タイプに必要な坪数の目安、表の目安について解説するので、何坪必要か気になる方は参考にしてみてください。
完全同居型の二世帯住宅は、30坪程度の広さが目安になります。完全同居型の坪計算の目安は、以下の例で計算しました。
【例:両親・子供夫婦・子2人世帯(計6人世帯)】
間取り | 計算方法 |
---|---|
・寝室(9畳×2部屋) ・LDK(13畳) ・子ども部屋(5.5畳×2) ・収納等のスペース(4畳) |
間取り合計の39畳×1.6=62.4畳(30.57坪)が必要 |
完全同居型のメリットは、寝室以外の玄関・リビング・水回りなどの間取りをすべて共有するタイプです。そのため、広い土地が必要なく、限りなく費用を抑えることができるのがメリットです。
そのほかにも共有する空間が多いため、家族で顔を合わせる機会が増え、自然とコミュニケーションも多くなります。子育てや介護もしやすくなるため、二世帯が寄り添った生活が可能になるでしょう。
ただし、お互いの距離が近い分、プライバシーに配慮が必要です。生活リズムが違う、一定のプライバシーに配慮したいという場合は、完全同居型の二世帯住宅はおすすめしません。
一部共有型の二世帯住宅は、35坪程度の広さが目安になります。一部共有型の坪計算の目安は、以下の例で計算しました。
【例:両親・子供夫婦・子2人世帯(計6人世帯)】
間取り | 計算方法 |
---|---|
・寝室(8畳×2部屋) ・LDK(10畳×2) ・子ども部屋(5畳×2) ・収納等のスペース(4畳) |
間取り合計の44畳×1.6=70.4畳(34.49坪)が必要 |
上記の例では、寝室とLDKは各世帯で分け、玄関・浴室・洗面所などのスペースを共有するタイプです。共有スペースによって必要な広さを抑えつつ、一定のプライバシーを確保できるのがメリット。
世帯間で適度な距離感を保ち、建築費用も抑えることができます。ただし、共有する部分の使い方や支払いなどについては、事前に十分に話し合っておくことが大切です。
完全分離型の二世帯住宅は、45坪程度の広さが目安になります。完全分離型の坪計算の目安は、以下の例で計算しました。
【例:両親・子供夫婦・子2人世帯(計6人世帯)】
間取り | 計算方法 |
---|---|
・寝室(8畳×2部屋) ・LDK(10畳×2) ・子ども部屋(5畳×2) ・収納等のスペース(4畳) ・その他分離するスペース8畳 |
間取り合計の58畳×1.6=92.8畳(45.47坪)が必要 |
完全分離型の二世帯住宅は、間取りを完全に分けることができるため、各世帯のプライバシーを確保できるのがメリット。水道光熱費の費用も分離できるので、支払いで揉める心配も少なくなります。
さらに、玄関も完全に分離した左右分離型では、将来的に空き部屋になった際に賃貸に出すことも可能です。一方上下型は、広い土地がなくても二世帯住宅を建てられるメリットがあります。
このように、同じ二世帯住宅でもタイプや造り、間取りによって必要な坪数が違います。上記の例や計算方法を参考に、自分たちが建てたい家がどのくらいの坪数が必要なのかを計算してみてください。
二世帯住宅で必要な坪数を確保できない場合の対処法は、以下の5つが挙げられます。
予算や所有する土地の関係で二世帯住宅を建てられるか不安な方も多いでしょう。ここでは、限られた坪数で二世帯住宅を建てる具体的な対処法を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
二世帯住宅で坪数を確保できない時は、共有スペースを多くしましょう。完全分離型のように各世帯でLDKや玄関などを持つとそれなりの坪数が必要になりますが、共有スペースの多い完全同居型や一部共有型は必要な土地の広さや建築費用が抑えられます。
ただし、せっかく二世帯住宅を建てても住みにくい家を作っても意味がありません。どこまで共有するのか、生活しにくくならないか、支払いはどうするのかを慎重に検討しましょう。
部屋自体を狭くするのも、坪数を確保できないときの対処法の1つ。各部屋の間取りを少しずつ狭くすることによって、必要な広さを抑えられます。
しかし、狭すぎてもしまうと生活がしにくい場合もあるため、あらゆる想定をして部屋の広さを設定しましょう。例えば、子ども部屋など寝室としてしか使わない部屋とし、スタディースペースや遊び場はリビングなどの別の場所に設置するという例があります。
寝室としてだけの利用であれば、子ども部屋は4.5畳程度でもよいでしょう。実際にどう暮らしていくかを考えながら部屋の広さを決めましょう。
上下分離型にすることで、狭い土地に二世帯住宅を建てられます。理由としては、上下分離型で縦の空間を活かせるので狭い土地で建てられる可能性があるためです。
しかし、上下分離型の場合は玄関を共有する場合が多く、容積率や高さ制限などによって希望する間取りとならない可能性もあります。事前に玄関の共有とするのか話し合い、土地の建築制限や用途地域ではないのかなどを事前に調べておきましょう。
二世帯住宅を建てる際に必要な坪数が確保できない場合は、屋上を活用する場合も有効な方法です。なぜなら、庭のスペースを屋上に設置することで、浮いた庭の面積を住宅部分に最大限に活用できるためです。
屋上は縦の空間を活用でき、物干しスペースやガーデニングなどとして活用できるのも魅力。一目が気にならず、子どもやペットが道路に出る心配もないので二世帯住宅で庭作りを検討している方は屋上も視野に入れてみてください。
二世帯住宅の坪数を確保するには、間仕切り・ロフト・ステップ階段などを利用して空間を有効活用する方法がおすすめ。間仕切りは、壁で空間を仕切らず、引き戸や引き込み戸などを利用して空間を仕切るため、1部屋を広く使ったり空間を分けたりすることが可能になります。
ステップ階段は、壁などを設置しなくても空間を仕切れるのが特徴。住宅内の縦の空間を有効活用でき、ステップ階段の床下の空間を利用して収納スペースを確保することも可能です。
ロフトは、一部の部屋を二層式にした上部の空間を指します。収納場所としたり寝室スペースとしたり、子どもの遊び場にしたりとデッドスペースを有効活用できるのがメリットです。
二世帯住宅を建てられる坪数が確保できない場合は、こうした工夫を行うことで、理想に近い家づくりが可能になるでしょう。
二世帯住宅を必要な坪数で建てる際の目安は、2,000万円~4,000万円が目安です。この目安の数値は二世帯住宅の事例を参考にした目安になります。
2,000万円~4,000万円と目安の幅が広い理由は2つ。1つ目は、二世帯住宅のタイプや構造の違いによって建築費用が大きくかわるためです。
例えば、完全分離型と完全同居型では完全分離型の方が必要がかかります。完全分離型は各世帯でリビング、浴室、玄関、キッチンなどを設けるため、部屋数の建築費用や設備費用がかさむからです。
一方、完全同居型や一部分離型など共有スペースを増やすことによって、建築費用を抑えることができます。以下では、ローコストの完全同居型、一部共有型、完全分離型の実例を紹介するので、坪数に応じた価格の目安にしてみてください。
二世帯住宅のタイプ | 間取り | 価格 | 坪数(延べ床面積) | 家族構成 | 工法 |
---|---|---|---|---|---|
完全同居型 | 4LDK | 約2,000万円~2,200万円 | 約34坪(約114㎡) | 夫婦2人、子ども、両親 | 木造軸組 |
一部同居型 | 5LDK | 約2,800万円~3,000万円 | 約38坪(約128㎡) | 夫婦2人、子ども、両親 | 木造軸組 |
完全分離型 | 2LDK+3LDK | 2,900万円~4,000万円 | 約46坪(約152㎡) | 夫婦2人、子ども、両親 | 木造軸組 |
費用の幅が広い理由の2つ目は、ハウスメーカーによっても建築費用の幅が広いからです。ローコスト住宅を得意とするメーカー、高級層をターゲットするメーカーなど、さまざまなメーカーや工務店があります。
そのため、二世帯住宅を検討する際は、いろいろなメーカーに見積もりを出してもらいましょう。二世帯住宅の家づくりのアイデアを専門家目線で募ることができ、希望に近い価格で契約可能な場合もあります。
家づくりは安ければいいという訳ではなく、一生住み続ける大切な住居です。メンテナンスや住みやすさなども考慮し、家族全員が納得のいく二世帯住宅を造りましょう。
本記事では、二世帯住宅を建てるには何坪必要なのか、坪数の平均やその根拠などについて詳しく紹介しました。
一般的に両親、子世帯夫婦とその子供などの二世帯住宅を建てる場合は、30坪程度が必要です。また、二世帯住宅でも完全同居型・一部共有型、完全分離型などタイプによって必要な広さが違います。特に完全分離型は、各世帯でリビング、キッチン、玄関などを設ける必要があるため、それなりの坪数が必要になるでしょう。
土地の問題や費用の問題などで、多くの坪数を確保できない場合は設計や間取りを工夫することで二世帯が建てられる可能性があります。本記事では、二世帯で必要な坪数を確保できない場合の具体的な対処法を解説しているので、設計時の参考にしてみてください。
また、坪数を30坪以下に制限してしまうと、ゆとりがなくなってしまい、生活する上で住みにくいと感じてしまう可能性もあるので注意が必要です。しかし、20坪程度の狭小地でも縦の空間をうまく活用することで二世帯住宅を建てられる可能性があります。
M-LINEでは、二世帯住宅の建築の相談も承っております。狭小地の家づくりを得意としており、10坪・15坪・20坪などの坪数の家づくりなどの多数実績があります。
「他社では二世帯住宅を建てられないと断られた」「窮屈に感じないか心配」など二世帯住宅でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。ご要望を伺った上で、家づくりのエキスパートが家づくりのアイデアを提案させていただきます。
2024/10/31
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