小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
この記事では、賃貸併用住宅の建築相場と見積もりのポイントについて紹介します。
「賃貸併用住宅の建築相場ってどれくらい?」
「賃貸併用住宅の建築費用を抑える方法はある?」
など、不動産で賃貸併用住宅を検討している方はこのような疑問があるのではないでしょうか。
賃貸併用住宅は構造によって坪単価の相場が異なるため、建築相場や費用が変わってきます。
しかし、自分でも大まかな相場を理解しておけば、見積もりでも失敗することはありません。
ここから賃貸併用住宅の人気の理由をはじめ、建築相場や費用の抑え方まで丁寧に記載しているので、ぜひ参考にしてください。
最初にお伝えをしておくと現在、賃貸併用住宅は人気があります。
人気の理由は主に以下の5つです。
順に紹介していきます。
賃貸併用住宅が人気の理由で最も多いのは、家賃収入を住宅ローンの返済に充てることができる点です。
賃貸からの収入があることで、自分が住む住宅のローン負担を軽減でき、資金繰りに余裕が生まれます。特に長期的に安定した収入源が期待できるため、ローン返済にかかるリスクを軽減することが可能です。
ただし、家賃収入を効率的に得るには、立地や物件、賃料や他の物件にもよるので、しっかりとした市場調査が必要。
また、家賃収入を計算してローン返済のシミュレーションを行い、返済計画を入念に立てることも重要です。
賃貸併用住宅は相続税対策になるため、人気があります。
賃貸部分があることで、土地や建物の評価額が引き下げられる場合があり、結果として相続税が軽減されるというからくりです。
また、賃貸併用住宅は、賃貸部分が「借家権割合」により評価額が抑えられます。賃貸部分が自宅部分よりも約3割低く評価されるため、課税対象額が軽減されます。
また、賃貸の入居率や戸数も相続税額に影響し、入居率が高くなるとさらに税額が減少。そのため、賃貸部分の空室対策は不可欠です。
安定した運営を目指すことで、相続税負担の軽減に貢献できます。特に、相続人が多い場合や不動産を複数所有している場合、賃貸併用住宅を組み込んだ資産形成は有効な手段です。
税理士や専門家と相談し、具体的な税負担のシミュレーションを行うことで、より効果的な対策が可能です。
賃貸併用住宅は、固定資産税の減税措置を受けられる可能性があるため、人気の理由の一つになっています。
例えば、住宅用地の特例が適用されることで、土地に対する固定資産税の軽減が期待できます。
建物の一部を賃貸とすることで、住居用とみなされる割合に応じて税負担が軽減され、長期的に考えてもお得になるでしょう。
賃貸併用住宅は、立地の良い場所での建設が可能な点も人気のポイント。
交通アクセスや商業施設への利便性が高いエリアでの賃貸物件は、入居者にとっても魅力的であり、長期的に安定した家賃収入が期待できます。
また、良好な立地に住むことで、生活の質も向上する傾向があります。都心やアクセスが良いエリアでは、建築コストは高くなりますが、何倍ものリターンを得る可能性も高いのです。
賃貸併用住宅は、ライフステージや生活の変化に応じて柔軟に活用できる点も大きなメリットです。
子どもの独立後に空いた部屋を賃貸に出すことも可能ですし、逆に親との同居が必要になった場合は賃貸部分を住居に転用することもできます。
また、リタイア後には収入源として賃貸部分を活用し、老後の安定した収入を確保することも可能です。
自宅としての利便性と収益性を兼ね備えた選択肢として、ライフサイクルに合わせた活用が可能なことも人気の理由です。
賃貸併用住宅の建築費用は、延床面積に坪単価を掛けて算出されます。
建築構造によって坪単価の相場が異なり、以下のような目安があります。
このように、構造ごとに費用が異なるため、建設の際は用途や予算に合わせた選択が重要です。
賃貸併用住宅の建築費用は、住宅部分と賃貸部分の面積や仕様によって大きく変動します。
例えば、木造3階建てで1階を賃貸部分とする30坪程度の賃貸併用住宅であれば、約2,100~2,400万円が建築費の概算となります。
RC造(鉄筋コンクリート造)を選ぶと耐久性は高まりますが、さらに初期費用も増加。
そのため、建築費だけでなく、維持管理費や将来の収益を考慮した資金計画が重要です。
また、家賃収入によるローン返済を見据えた収支計画を立てることもポイントです。
賃貸併用住宅の建築費用を抑えるための工夫にはさまざまなものがありますが、今回は以下の項目について解説していきます。
賃貸住宅での不動産取得税を軽減する特例には、各戸の住戸面積を「40平米以上240平米以下」とする条件があります。
この住戸面積であれば、不動産取得税の計算方法は以下になります。
不動産取得税=固定資産税評価額−1,200万円×3%
不動産取得税が0円になる場合もあるので、賃貸併用住宅のランニングコストをかなり抑えることが可能に。
間取りとしては、2DKや1LDKですと単身者や新婚夫婦、少人数世帯に人気があります。また、3LDKに比べ賃貸需要が高く空室になるリスクが低いです。
また、18平米程度のワンルームは建築コストが高苦なってしまうため、40平米程度の広さがコスト面でもリスクを抑えやすいと言えます。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用することは費用を抑える工夫になります。
多くの金融機関では、住宅部分が賃貸併用住宅の50%以上の場合、建設資金を住宅ローンで借りられる条件を設定しています。
これにより通常のアパートローンよりも低金利での借入が可能です。アパートローンと比較すると、住宅ローンは金利が1%前半程度と低く、返済総額を減らすことが期待できます。
また、住宅ローンは35年までの長期返済が可能ですが、アパートローンは一般的に最大30年です。
つまり、住宅ローンが適用された方が長期的なスパンで返済が可能なので、余裕を持って完済することができます。
さらに、自宅部分が50%以上かつ50平米以上であれば、住宅ローン控除が適用されます。これにより所得税の軽減も可能です。
この控除は返済期間が10年以上のローンに適用され、自宅を購入した年から一定期間、所定の金額が所得税から控除される制度です。節税効果が高く、住宅ローンを利用するメリットとなっています。
ただし、住宅面積を50%以上にすることにこだわりすぎると、建物設計が複雑になる場合があります。
そのため、設計上の制約がある場合や事業としての賃貸部分を優先したい場合は、住宅ローンを利用しない選択肢も視野に入れて計画すると柔軟に対応できるでしょう。
4階建ての賃貸併用住宅では、エレベーターの設置を避けることで建築費や維持管理費の削減が可能です。
エレベーターの設置は、初期コストに加えてメンテナンス費用や将来的な交換費用も必要になるため、コストが増大します。
4階部分を自宅とし、1~3階を賃貸部分とすることで、入居者の利便性とコスト削減の両方のメリットがあります。さらに将来的に4階部分も貸し出せるよう、高仕様にしておいても良いでしょう。
建物のエレベーター設置義務は、階数ではなく高さに基づきます。
高さ31m以上の建物にはエレベーター設置が必要で、これはマンションに限らず他のビルにも適用されます。
高さ31mはだいたい10階建てに相当し、それ以下ならエレベーターなしでも法律違反にはなりません。
ただし、高齢者向け住宅や介護施設では、3階建て以上でエレベーターの設置が義務づけられるなど、さらに厳しい基準が設けられているため、注意してください。
賃貸併用住宅で収益性を高めるポイントには以下のようなものがあります。
どれも重要なことばかりなので、必ず最後まで目を通すようにしてください。
賃貸併用住宅で収益性を高めるためには、適切な家賃設定が非常に重要です。
家賃は最も重要な収益となるため、適切な価格設定を行うことで、空室を防ぎ安定した収益を確保することができます。
物件の立地や設備によっても家賃設定が変わります。例えば、駅から近い、周辺に商業施設が多い、清潔感のある内装が整っている、最新の設備を導入しているなどです。
物件の良い点、悪い点に応じた価格設定が求められます。
賃貸併用住宅の収益性を高めるためには、利回りシミュレーションを行い、収益とコストをしっかり把握することが重要です。
賃貸併用住宅の収益では、実質利回りが最も重要な指標です。この利回りは、物件の収益性を正確に反映し、実際の運営コストや諸経費を考慮しています。
実質利回りを計算することで、賃貸併用住宅がどれだけ効率的に収益を上げているかを判断することができます。
実質利回りは以下の計算式です。
実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間の諸経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100
年間家賃収入から諸経費を引き、物件の総投資額(物件価格+購入時諸経費)で割って計算します。これにより、実際の運営コストを差し引いた、収益率を求めることができます。
賃貸併用住宅で収益性を高めるためには、ランニングコストを効率的に抑えることが重要です。
ランニングコストは賃貸併用住宅の維持・運営にかかる費用で、継続的な支出です。
つまり、ランニングコストを適切に管理することで、収益を増やすことができます。
ランニングコストは以下のようなものがあります。
賃貸併用住宅の収益性を高めるためには、適切なタイミングでの修繕工事が非常に重要です。
修繕工事が早すぎると無駄な支出になります。逆に遅すぎると入居者に不便をかけて空室リスクや騒音トラブルの原因になるため、タイミングを見極めることが収益性向上に繋がります。
修繕工事のタイミングの良し悪しを判断するためには、定期的に賃貸併用住宅の状態を点検することが大切です。
また、修繕工事の期間についても注意しなければなりません。
1週間や2週間など短期間で済むものに関しては、入居者からクレームが出ることは少ないですが、数ヶ月以上に渡ってしまうものだと退去に繋がることも十分に考えられます。
期間が長くなってしまう大規模な改修工事などは極力控え、どうしても必要な場合は、必ず入居者への理解を得るようにしましょう。
最後に、賃貸併用住宅の建築相場と見積もりについての質問についての回答を用意しました。
気になる質問があればチェックしてみてください。
賃貸併用住宅で建築費をかけると、以下のようなメリットがあります。
例えば、内階段を設置すると、プライバシーと防犯面の両方で効果があります。
さらに内階段をそれぞれの部屋に設置した場合は、共用スペースが不要になります。そうなると、共同住宅に課される建築規制を回避できるという利点も生まれます。
ただし、各部屋に内階段を設置すると、当然、居住スペースは狭くなるため、戸数は少なくなってしまい、家賃収益には影響が出るので、注意してください。
賃貸併用住宅で遮音性が高い建築材を使うことは、オーナーであるあなたにも大きなメリットとなります。例えば、遮音性が高い建築材には以下のようなものがあります。
これらの建築材を使用すると、遮音性が高くなり、物件としての資産価値が高くなります。さらに、入居者やオーナーが快適に日々の生活を送ることが可能です。
賃貸併用住宅には、建築費用以外にも、さまざまな初期費用が発生します。
例えば、以下のような初期費用があります。
例えば、ボーリング調査費用とは、地盤調査のことです。さらに調査後に建物の規模や地盤の状態に応じて、杭工事が必要になる場合があります。
ボーリング調査を行い、地中の硬い支持層の深さを確認します。ボーリング調査の相場は、1ポイントあたりおよそ80~100万円です。
また、賃貸併用住宅の建築では、設計料が発生します。ハウスメーカーに依頼する場合でも設計料は必要で、工事費の1~3%程度が相場です。
設計事務所に別途依頼する場合は、監理料も含めて工事費の10~15%が相場です。
設計料は請負工事契約に含まれる場合があり、その際は工事費と合わせて支払います。
住宅ローンを使って賃貸併用住宅を建てた場合、ローンを払っている間は自分がその家に住み続けることが条件に設定されています。
もし引っ越しをすると、契約違反と見なされて、残りのローンをまとめて返すようになってしまうこともあります。
そのため、ローンを利用する際は、その家に住み続ける予定があるかを考えてから決めることが大切です。
賃貸併用住宅の建築費は以下の3つに分けることができます。
本体工事費とは、賃貸併用住宅の建設に必要な基礎から内装・外装、設備の設置までの費用を指します。
例えば、仮設足場や仮囲いの設置にかかる仮設工事費、基礎の施工費用、構造部の骨組みを作る躯体工事費、窓やドアなどの建具工事、外装や内装の仕上げ、電気や水道の配線・接続工事、エアコンの設置費用などです。
建物の規模や戸数が多いほど、これらの工事費用は増額します。
付帯工事費とは、賃貸併用住宅の本体以外に必要な工事にかかる費用です。
例えば、地盤の強化を行う地盤改良工事や、門や駐車場などの外構工事、地盤の状態を調べるボーリング調査、建物荷重を支えるための杭工事などです。
また、建物が既にある場合は、その解体工事も含まれます。地盤強化が必要な土地では、これらの工事費が相場より高くなることがあります。
賃貸併用住宅の売却は可能ですが、難しいとされています。
理由としては主に需要の少なさと投資効率が悪い面にあります。
賃貸併用住宅の購入者は一般的な住宅購入者よりも少ないです。
自宅部分と賃貸部分を併せ持つという特殊な物件形態であるため、需要が限定的な傾向にあります。そのため、売却には時間がかかる可能性が高くなってしまいます。
賃貸併用住宅は、投資効率が悪いことが多いため、不動産投資家たちからも需要は少ないです。賃貸部分の空室や家賃の変動、住宅部分の維持費など、収益に影響を与える因子が多いです。
そのため、投資で利益を出すのが難しいのです。
本記事では、賃貸併用住宅の見積もりや費用を抑える方法について解説してきました。
不動産取得税の軽減や住宅ローンを利用することが重要です。
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