高坂 昇 ou2株式会社 専務取締役 一級建築士
東京など建物が密集するエリアは防火地域、準防火地域が指定されています。特に都市部では指定エリアが広く、該当する場合、高い基準をクリアする耐火住宅を建てる必要があります。
そこで本稿では、防火地域と準防火地域とは何か、気になる建築費用や制限、保険料や建ぺい率の緩和措置、東京で使える補助金・助成金などについても徹底解説します。ぜひ参考にしてくださいね。
防火地域、準防火地域という言葉は耳にしたことがある方も多いでしょう。
さらに東京ではその周辺エリアも規制がされていますので、ここでは防火規制区域の概要をご紹介します。
「防火地域」は、都市部の駅前や繁華街、幹線道路沿いなど、「準防火地域」は、その周辺エリアです。いずれも都市計画法第9条20項で定められた防火規制区域となります。
防火規制は、万一、火災が発生した場合に、建物の密集エリアはその延焼を食い止めるために指定されるもの。
消防車両や避難のための通行を妨げないように幹線道路沿いも指定されています。
さらにその外周には、「法22条区域」という建築基準法(第22条1項)で定められた区域があります。東京都の場合は、東京都震災対策条例13条第2項で定められた、「新たな防火規制区域」があります。
特に東京で建物を建てる場合は、このように何らかの防火規制があることを前提に、その土地の区域指定を必ず確認して、土地活用のプランニングをする必要があります。
防火地域は、都市計画法に基づいて、火災の被害が影響しやすい地域が指定されており、厳しい建築制限があります。
例えば、駅前、繁華街などの建物の密集地。公共施設、商業施設、金融機関、住宅密集地などが指定されます。
また、火災発生時の緊急避難経路や消防車両の通行の妨げにならないように幹線道路沿いも防火地域として指定されます。
防火地域に建物を建築するには、以下をする必要があります。
準防火地域は、防火地域の周辺に指定されるエリアです。都市計画法に基づき自治体が区域を指定します。防火地域より建築制限がゆるやかに定められています。
準防火地域に建物を建てる場合は、以下3点が必要です。
では続いて、耐火建築物と、準耐火建築物の違いについてみてみましょう。
耐火建築物とは、建築基準法の定めによる建物の主要構造が耐火性能を満たした素材などで建てられた建物です。主に、屋根、柱、梁、壁、床などの部材が該当します。また、窓や扉などの開口部は、防火窓、防火ドアなどの設置が必要です。
そのため、鉄筋コンクリート造や耐火被膜が施された鉄骨住宅などが代表的な耐火建築物です。木造でも耐火構造の基準を満たしていれば建築できます。
例えば、主要構造部は、外壁の構造材や壁などは1時間の耐火構造であること、屋根は30分の耐火構造である必要があります。また、軒裏やバルコニーの壁も同様の耐火被覆をする必要があります。
準耐火建築物は、耐火建築物ほどの耐火構造は要求されませんが、耐火被膜をした木造住宅など一定基準に適合した建物です。窓や扉などの開口部は、耐火建築物と同等の水準にする必要があります。
開口部の防火性能を満たすには、防火ドア、防火窓、防火シャッターなどを設置する必要があります。
防火ドアは、例えばマンションやビルでみかける火災等の際に自動的に閉鎖するようなもの、あるいは一般住宅のドアと遜色ないデザインの防火ドアなどがあります。
防火窓は、火災の延焼、バックドラフトなどを食い止めるためのもので、金網がガラスに入ったものが多く、サッシも強度の高いものが主流でしたが、近年は耐火強化ガラスを使用して網なしのガラスも採用されるなどデザイン性も高くなっています。
災害に強い都市づくりが進められる中で、安全・安心の住まいづくりの選択肢が一層広がってきています。
東京の都心などに建物を建築する際は、耐火建築物もしくは準耐火建築物であることが求められます。その際に一般住宅と費用はどの程度の差が出るのか確認しておきましょう。
東京で耐火建物を建てる場合、多くの場合、準防火地域での建築が中心ですので準防火地域のケースをみてみましょう。
準防火地域で耐火建物を建てる場合、一般的な住宅より10~15%程度の費用がかかるのが相場と言われます。
例えば、屋根、外壁、軒裏などに不燃材を使い、準防火地域でも防火ドア、防火窓などを設置する必要がありますので、坪単価で90万円ほどが目安とも言われています。
一般的な住宅よりも耐火性能が高い建物になるため、より安全・安心の住まいづくりができると言えるでしょう。
防火地域に4階建て以上の住宅を建てるなら、耐火性能のある鉄筋コンクリート造や耐火性能のある重量鉄骨の住宅、3階建てまでなら耐火建築物にする必要があります。
準防火地域でも万一の災害に備えて耐火建築物であればより安心です。
防火地域、準防火地域で一定の耐火性能をクリアしている建物は火災保険も割安になります。
火災保険には、M構造、T構造、H構造という3つの区分があります。
M構造とは、マンション構造、T構造とは耐火構造、H構造は非耐火構造です。
このうちT構造(耐火構造)とは、具体的には、柱がコンクリート造、コンクリートブロック造、レンガ造、石造、鉄骨造、耐火建築物、準耐火建築物、省令耐火建物です。
防火地域・準防火地域だから保険料が割安になるのではなく、耐火性能があるため保険料が割安になるという意味合いです。
耐火建築物の建ぺい率は、建ぺい率が10%アップする緩和措置。
例えば、建ぺい率60%の地域は70%に。さらに、商業地などの建ぺい率80%の地域は100%となり制限がなくなります。
2018年の建築基準法改正で、準防火地域における耐火建築物と準耐火建築物も対象になりました。
東京23区は防火、準防火地域の指定エリアが広く、耐火性能の高い住宅を建てる必要があります。防火、準防火地域に耐火住宅を建てる際は、約10~15%費用が一般住宅よりかかります。
しかし防火性能が高い安全安心な住まい、建ぺい率も10%~最大20%緩和され、火災保険料も割安になり、自治体の助成金が活用できる場合もあります。都内で防火地域、準防火地域で土地活用をするなら建築実績の多い当社にぜひご相談ください。
オンライン相談も受け付けております。お気軽にご相談ください。
2024/11/29
2024/11/29
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