アパート建築費

アパート建築の費用相場はいくら?相場や建てる際の注意点を解説

アパート経営を始める前に、余裕を持った資金計画を立てるためにもアパートの建築費用について把握しておく必要があります。建築費用について理解しておくことで、不動産会社からの見積もりが適正であるのか判断することができます。

そこで今回、アパート建築の費用相場や計算方法について紹介します。また、アパートを建てる際の注意点などについても解説していきますので、ぜひ本記事を参考に検討してみてください。

アパートの建築費用の相場

相場

アパートの建築費用の相場は、エリアや建物の構造によって異なります。例えば、人口密度の高い都市部の場合、平均床面積が小さい場所ほど坪単価が高くなるため建築費用も高くなります。

建物の構造には、主にW造・S造・RC造・SRC造と呼ばれる、建物をつくる材料によって種類が分類されます。構造別に使われている材料については、以下の通りです。

  • W造(木造)
  • S造(鉄骨造)
  • RC造(鉄筋コンクリート造)
  • SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

W造(木造)は、1階〜2階のアパートに適しており費用を抑えることができます。しかし、メリットだけを見るのではなく耐用年数が短いというデメリットについても知っておくことが大切です。2階〜4階のアパートの建築には、S造(鉄骨造)やRC造(鉄筋コンクリート造)が適していると言われており、木造と比べて費用はかかりますが耐久性に優れています。

このように、構造によってメリット・デメリットがあるため、予算なども考慮した上で最適なアパートを検討するようにしましょう。

アパートの建築費用の内訳

アパートの建築費用の内訳は、大きく分けて3つに分けられます。内訳については、主に以下の通りです。

  • 本体工事費
  • 別途工事費
  • その他諸費用

本体工事費の相場は、アパート建築に関わる全体費用の7割〜8割であり、別途工事費やその他諸費用の相場は、それぞれ全体費用の1割〜2割を占めています。具体的にどのくらいの金額になるのか、以下で詳しく解説していきましょう。

本体工事費

本体工事費とは、アパート建築での本体部分を構成する際にかかる、工事費用や資材費用を指します。本体工事費の計算式は「本体工事費=坪単価×延床面積」で割り出すことが可能です。坪単価とは、建物を建てる際の1坪(3.3㎡)あたりの金額を計算したものであり、延床面積は建物全ての床面積を合算した面積のことを指します。

費用相場は構造によって異なるため、構造別で費用相場について以下の表でまとめましたのでご覧ください。費用相場の計算は、国土交通省の統計表にある全国平均に対して1坪(3.3㎡)が、いくらであるのかを割り出しています。

構造 費用相場
W造 約56.1万円
S造 約85.8万円
RC造 約89.1万円
SRC造 約92.4万円

出典:建築着工統計調査 / 住宅着工統計|国土交通省

また、階層ごとに費用相場も異なっているため、こちらも構造別、階層別に表でまとめています。ここでの延床面積は、20㎡のワンルームが階層ごとに3戸あるものと計算しています。

S造 RC造 SRC造
1階 1,560万円 1,620万円 1,680万円
2階 3,120万円 3,240万円 3,360万円
3階 4,680万円 4,860万円 5,040万円
4階 6,240万円 6,480万円 6,720万円
5階 7,800万円 8,100万円 8,400万円

出典:建築着工統計調査 / 住宅着工統計|国土交通省

アパートは大体2階〜4階建てが多く、その場合はS造(鉄骨造)やRC造(鉄筋コンクリート造)が適しているとされています。そのため、低層でのアパートを検討する方は、最低でも3,000万円以上が本体工事費としてかかると考えておきましょう。

別途工事費

本体工事費とは別に、工事の対価として別途工事費がかかります。主な別途工事費は、屋外給排水・電気・ガス工事費、塀などの外構工事費です。その他にも、地盤の改良が必要な場合には地盤改良工事費、空調設備に関する空調設備等の付帯工事費など、状況によって追加コストが発生する場合もあります。別途工事費の費用相場は、以下の通りです。

項目 費用相場
屋外給排水工事 建築費用の約10%
ガス工事費 10万円〜15万円
地盤改良工事費 1坪あたり2万円〜7万円
空調設備工事費 1万円〜5万円

別途工事費は、必要な工事であるため費用を抑えたいからといって省くことはおすすめしません。ある程度の予算を確保するためにも、別途工事費はアパート建築にかかる全体費用の1割〜2割と考えておきましょう。

その他諸費用

その他の諸費用として、地盤改良工事の際に発生する地盤調査費なども建築費用に含まれています。工事内容によって異なりますが、一般的にかかるその他諸費用は以下の通りです。

  • 測量費
  • 地盤調査費
  • 設計料
  • 印紙税
  • 火災・地震保険料
  • 登録免許税
  • 司法書士手数料
  • 不動産取得税

この諸費用はあくまで一部であり、他にも費用が発生する可能性があることを知っておいてください。各諸費用の相場については、表でまとめましたのでご覧ください。

工事費5億円以上10億円以下:約5〜8%新築建物登録免許税:固定資産税評価額×0.4%

項目 費用相場
測量費 約30万円
地盤調査費 1ポイント約50万円
設計料 工事費の約1〜3%
印紙税 工事費1億円以上5億円以下:約1〜3%
登録免許税 抵当権設定登記費用:債権金額×0.4%
火災保険料 請負工事金額の約0.05%(年間)
司法書士報酬 約6〜7万円
不動産取得税 基本的に固定資産税評価額×0.3%

諸費用を全て割り出すことが難しいため、どのくらいの金額になるのかはっきりとは言えませんが、諸費用は大体アパート建築にかかる全体費用の1割〜2割とイメージしておきましょう。

アパート建築の計算方法

計算方法

建築費用の相場が分かったところで、実際にアパート建築にかかる費用を計算していきましょう。アパート建築にかかる費用や計算方法については、以下の通りです。

アパート建築にかかる費用 計算方法
建築費用の概算 坪単価×延べ床面積
敷地面積の計算 敷地の水平投影面積により平面形状を求める
建築面積の計算 建物の水平投影面積により平面形状を求める
容積率 延床面積÷敷地面積×100
駐車場の必要数計算 駐車場代×必要数
耐震性能計算 許容応力度計算によって算出
建築費用の見積もり 多くの場合が無料

水平投影面積とは、建物や土地を上から見た時の面積を指し、凹凸や斜面であったとしても水平とみなして計測するものです。

容積率というのは、敷地面積に対する延床面積の割合のことを指します。容積率は、アパートなどの建物を建てる際に綺麗な街並みを保つために必要な指標になります。好き勝手な大きさの建物を建てて違法建築にならないよう、容積率を割り出すことは重要です。

許容応力度計算とは、資材が耐えられる限界値を割り出すものです。流れとしては、長期(自重)・短期(災害など)ごとに「①建築物にかかる力を求める」「②建築物の各資材に加わる力を求める」「①と②を比較し、①が上回っているか計算」をします。①が上回っていれば、耐震性が安全という意味です。

最終的に建築費用の見積もりを依頼し、計算して割り出してきたものを参考にしながら具体的な建築費用を求めていきます。計算が面倒だという方は、専門家に相談すると良いでしょう。

アパートを建てる際のポイント

アパートの建築で失敗しないためにも、大切なポイントがいくつかあります。注意するポイントとしては、以下の通りです。

これらのポイントを意識することで、適正な価格で建築できるだけでなく、建築費用を抑えることにもつながります。どのように注意すべきなのかは、以下で順に見ていきましょう。

相見積もりで比較検討する

相見積もりを行い、アパートにかかる建築費用を比較検討するようにしましょう。1社だけに見積もりを依頼するのではなく、複数者に相談をすることで適正値を見極められます。相見積もりで比較検討すべきポイントは、以下の通りです。

また、相見積もりをすることで交渉の材料となり、見積もりを元に価格交渉をすることもできます。不動産会社によって内容やサービスが異なるため、相見積もりで比較検討することによって建築費用の削減にもつながります。

税理士に相談する

アパートを建築する際、税理士に相談することでさまざまなアドバイスをもらうことができ、アパート経営を有効的に進めることができます。例えば、税金に対して詳しい税理士に相談することで、所得税や相続税などの税金対策についてアドバイスをもらうことができます。その他、相談できる内容としては以下の通りです。

アパート経営をするにあたって、法律に関することや経営戦略での不安や心配が少しでもある方は、事前に税理士に相談することをおすすめします。

適正価格を把握する

アパートの建築費用について、適正価格を把握しておくことも重要です。適正価格を把握していないと、不動産会社から提示された契約を言われるがまま進めてしまうという危険性があります。最悪のケースでは、通常の相場よりも高い費用で見積もる業者や、必要資材を減らすなどの悪質な業者も中にはいるでしょう。

また、適正価格を把握することでアパート経営が有利になるというメリットもあります。建築する前に適正価格を把握しておくことで適切な資金計画を立てることができ、見積もりに余分なコストがないかも判断することが可能です。

適切な資金計画や余分なコストを省くことで、収益の最大化にもつながります。複数社に見積もりを依頼した際には、適正価格を確認しておくようにしましょう。

節税対策につながる

アパートを建築すること節税対策につながります。アパートなどの不動産を建てることで、節税対策になる主な理由としては以下の通りです。

不動産を建てることで、減価償却費が活用でき、経費の抑制にもつながるため節税対策になります。減価償却費とは、経年劣化によって下がる資産価値を、経費として計上する会計処理のことです。経費計上することで家賃収入から差し引くことができるため、結果的に節税対策につながります。

また、アパート経営では資産形成や土地活用によって相続税や固定資産税の軽減につなげることも可能です。どのような仕組みで節税できるのか、詳しく知りたい場合には、前述したように税理士への相談も検討してみてください。

高稼働を見込める

アパートの建設を検討しているエリアで、高稼働を見込めることができるのか事前にリサーチすることも大切です。高稼働を見込めるエリアに建設することで空室リスクを低くし、長期的で安定した家賃収入を得ることができます。

アパート経営は、入居者からの家賃収入で収益を得るビジネスのため、都市部での需要の高さや住宅不足などを考慮した場所に建設することが大切です。また、アパートをインフラが整備された場所に建設することで、高い賃貸需要を期待できます。高稼働を見込める場所を見極めることで家賃収入が安定し、アパート経営の成功につながります。

アパート建築を始める前のチェック項目

チェック項目

アパート経営をスムーズに始めるためにも、どのくらいの工期がかかるのかなど、把握しておくことが大切です。ここでは、アパート建築を始める前の、チェックすべき項目について紹介します。

建築費を支払うタイミングや住宅ローンの有無による資金計画の立て方など、建築する前に確認すべきポイントがいくつかあります。各チェック項目について、以下で詳しく見ていきましょう。

工期

アパート建築にかかる工期は、一般的に最短で階数プラス1ヶ月と考えられていますが、構造別によって工期は異なります。例えば、木造1階建ての場合は最短2ヶ月の工期、木造2階建ては最短3ヶ月の工期がかかります。

余裕を持った工期に設定したり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で建築する場合には、階数プラス2〜3ヶ月かかると考えておきましょう。ただし、あくまで目安としての工期になるため、季節や天候、土地の状態によっては長い期間がかかってしまう可能性もあることを理解しておきましょう。

建築費を支払うタイミング

建築費を支払うタイミングは契約書によって異なります。主なタイミングとしては「契約時」と「着工時」に加えて、「竣工時」または「上棟時」に分けて支払うのが一般的です。

着工前の場合は完成前の支払い、柱や屋根の骨組みなどの工事進捗に応じた支払い、完工後のタイミングでの支払いなどさまざまです。その他にも、工務店との契約時に「建築請負契約」を結んで、何割かの支払いをするケースもあります。建築請負契約とは、アパートを建築する際に工務店に工事を請け負ってもらう契約です。

全額支払うことをおすすめしてくる工務店は、資金繰りの厳しい工務店の場合が多いため見極めることが大切です。

住宅ローンの有無

基本的に、アパートなどを建築する際には多額の初期費用がかかるため、金融機関などから住宅ローンを組みます。そのため、住宅ローンを組むのかによって資金計画の立て方が変わります。住宅ローンの有無を確認することで、アパート建築に必要な資金調達を事前に調べることができるため、効率化やリスク管理を行うことが可能です。

また、融資を受けるには審査に通過する必要があり、他社からの借入の有無や年収、勤続年数などを見て返済能力を判断されます。前もって融資条件を確認することで、準備や必要書類を揃えることができるため、スムーズに融資を受けることができます。

アパート建築費でよくある質問

ここでは、アパート建築費に関するよくある質問について紹介します。紹介する質問は、以下の2つです。

  • アパート建築費の自己資金?
  • アパート建築費の支払いの流れは?

アパートを建築する流れの中でも、着工前の検討段階が最も大切です。少しでも疑問に思うことがあれば解決しておくことが、アパート建築の成功へとつながります。建築費用は決して安くはないので、分からないことは調べておきましょう。

アパート建築費の自己資金?

アパート建築費で、必要となる自己資金の目安は総工費の20〜30%です。基本的に、アパート建築費用にかかる総工費の20〜30%を自己資金で用意することが望ましいとされています。

土地を購入する場合には、土地代金の30%が自己資金の目安になります。地域や立地条件によって異なりますが、一般的には総工費の約30%程度が目安です。

アパート建築費の支払いの流れは?

前述した通り、建築費を支払うタイミングは契約書によって異なっており「契約時」と「着工時」に加えて、「竣工時」または「上棟時」に分けて支払うのが一般的です。

アパート建築費をいつ・どのくらい支払うのかについては、当事者の間で決められます。支払いを滞りなく行うためにも、どのタイミングで支払うのか契約時に確認しておくようにしましょう。

アパート建築費を抑えたいなら

アパート建築の費用相場は、エリアや構造によって異なります。建築費用は大きく分けて本体工事費・別途工事費・その他諸費用の3つがあり、ある程度の自己資金を準備しておく必要があります。アパートを建築する際のポイントは、以下の通りです。

アパートの建築を検討している方は、一度MLINEへご相談ください。MLINEでは、経験豊富な専門家が相場よりも安い建築費用をご提案しております。少しでもアパート建築費を抑えたいと考えている方は、お気軽にお問い合わせください。

監修者情報

高坂 昇

高坂 昇ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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