小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
令和3年度の住宅着工統計では、新築の住宅着工数865,909棟のうち、鉄骨造は125,228棟と、新築住宅のうち約14%が鉄骨造で建てられています。
今回は、鉄骨造の住宅にはどんな特徴があるのか、木造やRC造など他の構造の住宅を比較しながらメリット・デメリットを解説します。
鉄骨造住宅と他の構造との坪単価の違いについても解説しますので、鉄骨住宅を建てたいとお考えの方はぜひ参考にしてくださいね。
鉄骨造住宅とは、その名の通り、柱や梁に鉄骨を使用して作られた住宅のことです。鋼鉄を英訳した「Steel」の頭文字を取って「S造」とも呼ばれます。
鉄骨の原材料である鋼鉄は、鉄と炭素の合金です。鋼鉄は鉄の堅い性質に加えて、丈夫で曲げても折れにくい性質が加わるため、住宅はもちろん、鉄橋や高層ビル(鉄骨鉄筋コンクリート)などの構造物に使われています。
鉄骨造は、骨格材の厚みによって重量鉄骨造と軽量鉄骨造の2種類に分かれます。
骨格材の厚みは、強度やコスト(建築費用・固定資産税など)、法定耐用年数などに関係してきます。重量鉄骨はより強度が高くなるため3階建て以上の建物、軽量鉄骨は2階建てまでの建物に向いています。
<重量鉄骨と軽量鉄骨で違いが出る部分>
骨組みに鉄製や鋼製の部材を用いる鉄骨造(S造)の建物は、鉄や鋼の「ねばり」によって地震に耐える構造です。
鉄骨造の建物は、鉄骨が揺れのエネルギーをねばりによって吸収して変形を抑え、建物の倒壊を防ぎます。
鉄骨造のうち骨格材が幅6mm以上の「重量鉄骨造」は、ビルやマンションにも使われる構造で、より強度や耐久性に優れた構造になります。
鉄骨住宅は、
が多く用いられます。
どちらの構造も、柱と梁で構造体を作るため、間取りの自由度が高いのがメリットです。
特に、重量鉄骨のラーメン構造は、ブレース工法よりも柱が少なく済むので、大空間も作りやすくさらにデザインの自由度が高くなります。
鉄骨住宅なら、
などのデザインも、安全性を確保しながら実現できるのが大きなメリットです。
狭小地や変形地も多い東京都心では、限られた敷地面積の中で、建ぺい率や容積率、斜線制限などを考慮しながら効率的な間取りを作る設計が大切になります。
高強度かつ自由度の高い設計ができる鉄骨造は、敷地条件をフルに活かして3階建て以上の多階層住宅を建てる場合にも最適です。
鉄骨造は、RC造(鉄筋コンクリート造)よりも建築コストを抑えやすいというメリットがあります。参考として、2021年の国土交通省住宅着工統計から、一戸建てと共同住宅の構造別の工事費(予定額)を紹介します。
表:一戸建て・共同住宅の構造別工事費予定額
一戸あたり工事費予定額【万円】 | 1坪あたり工事費予定額【万円】 | |||
---|---|---|---|---|
一戸建て | 共同住宅 | 一戸建て | 共同住宅 | |
鉄骨造 | 3,581 | 1,242 | 95.8 | 82.6 |
木造 | 1,926 | 593 | 56.1 | 56.1 |
RC造 | 4,711 | 1,460 | 99.1 | 85.9 |
SRC造 | 3,114 | 1,827 | 72.7 | 95.8 |
(出典)2021年度国土交通省住宅着工統計より抜粋
2021年度の統計では、
という結果になりました。SRC造の一戸建ては建築戸数自体が少ないことも考慮すると、一般的には、木造<鉄骨造<RC造<SRC造の順に、建築コストが少なくなると言えます。
鉄骨住宅の各部材は、工場で生産されるため均一性があり、現場での施工によるバラつきが出にくいため、工期が短く品質が安定しやすいのもメリットです。
鉄骨は、木材やコンクリートよりも熱伝導率が高いため、鉄骨自体の断熱性は低いと言えます。鉄骨住宅の構造部分は、外気の熱や寒さが住宅の内側に伝わりやすい「ヒートブリッジ(熱橋)」や、結露が発生しやすくなります。そのため、しっかりとした断熱性能を確保するためには、外断熱や気密処理などで施工コストが上がりやすいのがデメリットです。
前述のとおり、鉄骨造住宅は、RC造よりも坪単価は低い傾向にありますが、木造と比較すると建築コストは高い傾向にあります。
鉄骨造の住宅は、鉄筋コンクリート(RC)造の住宅よりも防音性能は劣ります。
鉄筋コンクリート造は、木造や鉄骨造の建物よりも、気密性の高いコンクリートが音を遮断するため、音の伝わりを抑えられるため、防音性が高くなります。
「日本建築学会」※が発表したデータを参考に、構造別「音の聞こえ方」をまとめてみましょう。
※参考:一般社団法人日本建築学会「建築物の遮音性能基準と設計指針」技報堂出版
このデータから、
鉄筋コンクリート造の建物は、大きな音や振動を除く基本的な生活音はほとんど気にならない防音性能であるのに対し、
軽量鉄骨造…生活音は木造より多少軽減できる程度
重量鉄骨造…ドアの開閉音や足音、振動がともなう音は聞こえるため、RC造よりも防音性は低いと考えられます。
鉄骨造の住宅は、木造よりも高い強度を活かして、大開口や大空間のある間取りや、設計の自由度の高さを活かしたおしゃれなデザインを実現しやすいのがメリットです。また、木造では難しい3階建て、4階建て以上の住宅や、1階がビルトインガレージや広い空間のある店舗になっている多階層住宅など、特殊な間取りや用途の住宅にも、RC造よりもコストを抑えながら対応できるのも魅力です。
木造やRCにはない鉄骨造独自のメリットを活かせば、難しい条件の土地や狭小地でも、快適に安心して住める住宅や賃貸住宅を実現できます。
M-LINEは、都内で鉄骨造(重量鉄骨)・RC造の豊富な建築実績があります。また、不動産部門(D-LINE)とも連携し、ハウスメーカーと地域工務店のメリットを兼ね備えた家づくりを提供しています。
地域密着の家づくりの経験から、都内の各エリアの特徴や土地の特徴を踏まえた、最適な構造や設計をご提案。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など構造を選ばず、自分の希望に合わせた建物が実現できます。
さらに、土地活用をご希望の方に向けた収支シミュレーションや建築後のフォロー体制も万全で、東京で安心してアパート・マンション経営を始められます。
「重量鉄骨で大空間のある間取りの家を建てたい」「狭小地で3階建て以上の戸建てを建てたい」「重量鉄骨でアパート・マンションを建てて土地活用をしたい」などの場合も、それぞれのご希望に沿ったご提案が可能です。
都内で鉄骨造住宅・賃貸住宅・賃貸併用住宅・ソーシャルアパートメントなどの土地活用をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
2024/11/29
2024/11/29
2024/11/29