賃貸併用住宅の建築費

賃貸併用住宅の建築費の相場と計算方法について徹底解説

賃貸併用住宅とは、住宅部分と賃貸部分がある建物です。賃貸部分の部屋を貸し出すことで、自宅に住みながら家賃収入を得られるため、土地活用として経営する方も多くいます。

しかし、賃貸併用賃貸の建築費は、通常の戸建やアパートを建てるよりも割高です。そこで本記事では、賃貸併用住宅の建築費の相場と計算方法について詳しく解説します。

建築費を抑える方法も紹介しているので、賃貸併用住宅を建てようか検討している方はぜひ参考にしてください。

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賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅とは、自宅と貸し出す部屋がある建物です。例えば、1階は自宅、2階は賃貸など、戸建と同じグレードを保ちながら家賃収入を得ることができます。また、総面積の50%以上が自宅の場合、住宅ローンを組むことも可能です。

通常、賃貸経営ではアパートローンを利用しますが、金利が高く、返済期間は短いです。それに対して、住宅ローンは金利が低く、返済期間は長いのが魅力と言えます。

そのほか、賃貸併用住宅は節税効果があることもメリットの1つです。固定資産税の軽減措置を受けられるだけなく、相続税の評価額を減らすこともできます。さらに、小規模宅地等の特例が適用される場合もあります。

このように、自宅の建て替えや実家を相続する際にメリットが多くあるため、注目されている賃貸経営です。

賃貸併用住宅の建築費を計算する方法

建築費の計算方法

賃貸併用住宅の建築を検討する際は、事前に相場を把握しておくことが大切です。賃貸併用住宅の建築費は、構造によって異なりますが、一般的に木造が安く、鉄筋コンクリート造が高いです。

この章では、賃貸併用住宅建築費の計算方法や、建築費相場について解説していきます。あくまでも目安ですが、依頼する会社を選ぶときの判断材料となります。

賃貸併用住宅建築費の計算方法

賃貸併用住宅の建築費は、「坪単価×延床面積」で求めることができます。延床面積とは、建物の各階の床面積を足した面積のことです。例えば、1階が60坪、2階が50坪の場合、延床面積は110坪になります。

なお、坪単価の相場は、木造や鉄骨造など建物の構造によって大きく異なります。構造による賃貸併用住宅の建築費の相場は、以下の通りです。

木造 軽量鉄骨造 重量鉄骨造 鉄筋コンクリート造
77〜110万円 80〜120万円 90〜130万円 100〜140万円

相場は上記となりますが、設備や素材によっても変動する点に注意が必要です。

賃貸併用住宅の建築費相場

併用賃貸住宅を延床面積70坪で建てた場合、建築費の相場は以下の通りです。

木造 軽量鉄骨造 重量鉄骨造 鉄筋コンクリート造
5,390〜7,700万円 5,600〜8,400万円 6,300〜9,100万円 7,000〜9,800万円

上記のように、同じ延床面積でも構造によって建築費の相場は大きく異なります。そのため、予算やニーズに合わせて適切な構造を選択することが大切です。


賃貸併用住宅の建築費内訳

賃貸併用住宅の費用内訳

賃貸併用住宅の建築費は、以下の3つに分類できます。

本体工事費は建物を建てるのにかかる費用で、付帯工事費は外構工事や地盤強化工事にかかる費用です。諸費用は主に手続き関連に発生する費用で、火災保険やローン手数料などが該当します。

以下では、それぞれの建築費について詳しく解説します。

本体工事費

本体工事費は建物を建てるのにかかる費用で、主に以下の費用が含まれています。

費用 詳細
仮設工事費 建物本体を建てるために必要な足場や仮囲い、敷き鉄板、仮設トイレなどを設置するのにかかる費用
基礎工事費 建物の土台である基礎を作るのにかかる費用
躯体工事費 建物の主要構造部を作る骨組みを建てるのにかかる費用
建具工事費 窓や引き戸、ドア、ふすまなど、建物の開閉ができる仕切りを作るのにかかる費用
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外装工事費 屋根や外壁の塗装などにかかる費用
内装工事費 壁や天井の塗装、床面の仕上げなどにかかる費用
家具工事 オーダーメイドで家具を製作し、設置するのにかかる費用
電気設備工事費 建物の内部に電気を引き込むのにかかる費用
給排水衛生設備工事費 水道メーターから水回り設備に配管を延ばし、接続するのにかかる費用
冷暖房衛生設備工事費 エアコンを設置するのにかかる費用

本体工事費は建物を建てる以外に、内装や外装、設備などの設置にかかる費用も含まれます。規模が大きく、戸数が多くなるほど本体工事費は高額になります。

付帯工事費

付帯工事費は地盤改良や外構など、建物本体以外にかかる費用です。主に以下の費用が含まれています。

費用 詳細
地盤改良工事費 地盤を固く補強するためにかかる費用
外構工事費 門や塀、駐車場など、建物本体以外にかかる費用
ボーリング調査費 地盤の固い支持層が地下何メートルに存在するか把握するための調査
杭工事費 建物の荷重を地盤が支持できるよう杭を打ち込むのにかかる費用
解体工事費(建物が建っている場合) 建物を解体するのにかかる費用

付帯工事費は、地盤の強さによって大きく異なります。地盤改良が必要な場合は、ボーリング調査費や杭工事費が発生するため相場よりも高くなりがちです。また、元から建物が建っていると、その建物を解体するための解体費用が必要になります。

諸費用

諸費用は、本体工事費や付帯工事費以外に必要な費用です。主に以下の費用が含まれています。

費用 詳細
設計料 建物を設計する際にかかる費用
印紙代 契約書や領収書など課税文書を作成する際にかかる税金
火災保険 火災などで生じた建物や家財の損害を補償するための保険
登記関連費用 登記登録を行う際にかかる費用
水道分担金 利用申し込みの際に、水道局に納付するお金
ローン手数料 住宅ローンやアパートローンを利用する際に支払う事務費用
不動産取得税 土地や家屋を購入した時などに課される税金
入居者募集費用 入居者を募集する際にかかる費用

諸費用の中には、住宅ローンや不動産投資ローンの範囲外になることが多いです。そのため、諸費用は現金で用意する必要があります。

賃貸併用住宅の建築費用は高い

賃貸併用住宅が高い理由

賃貸併用住宅の建築費は、戸建やアパートよりも高くなると言われています。この章では、戸建住宅や、賃貸物件よりも建築費用が高くなる理由について解説します。

戸建住宅よりも建築費用が高くなる理由

戸建住宅よりも建築費が高くなる主な理由として、住宅設備の数が多くなる点が挙げられます。戸建住宅の場合、浴室やトイレ、キッチンなどの住宅設備は1つなのが一般的です。

しかし、賃貸併用住宅には、戸数分だけ住宅設備が必要になります。つまり、戸数が増えれば住宅設備の設置数も増え、建築費もその分高くなるということです。

賃貸物件よりも建築費用が高くなる理由

住宅部分は壁材や住宅設備などにこだわる傾向があります。賃貸部分であればグレードを下げて建築費を抑えられますが、住宅部分は自身が住む場所となるためグレードを上げることも多いです。

賃貸併用住宅は住宅部分の建築費がかかるので、こだわる人も多く賃貸物件よりも建築費が高くなりがちです。


賃貸併用住宅の建築費を抑える方法

賃貸併用住宅の建築費を抑える方法

賃貸併用住宅の建築費を抑える方法として、以下の3つが挙げられます。

賃貸併用住宅は、建築費が高くなりがちです。そのため、建築費を抑えるためにはコツを抑える必要があります。

シンプルな間取りにする

複雑な間取りにするほど壁や外壁が必要で、その分建築費が高くなります。建物は四角形に近ければ近いほど、全体の建築費を抑えられます。また、間取りがシンプルだと建具やドアが少なくなるため、建築費の削減に効果的です。

同じ面積でも1LDKと2LDKでは、1LDKの方が建築費は安くなります。部屋数が多くなるほど、設備が増え建築費が高くなる点を念頭に置いておくことが大切です。また、賃貸併用住宅には、住宅部分と賃貸部分を分ける方法として、縦割りと横割りがあります。

縦割りとは、建物を左右で分ける方法です。足音などの騒音は気にならなくなりますが、横割りよりも使用する建材が多くなるため建築費が高くなりがちです。建築費を抑えたい場合は、横割りの方が間取りもシンプルになるので、建材が少なく住むだけでなく、住宅ローンの「住宅部分を50%」という条件をクリアしやすくなります。

1戸あたりの面積を40平米以上にする

1戸あたりの面積を40平米以上240平米以下にすると、1,200万円の控除額が適用されるため、不動産取得税が安くなります。また、40平米の間取りは2DKや1LDKとなり、小さな子供がいる家庭の需要が高いです。

平米数が広すぎると家賃が高くなり、入居者がなかなか決まらない可能性があります。反対に1Rや1Kなど単身向けの賃貸は必要となる住宅設備が増え、結果的に建築費が高くなるため注意が必要です。

需要と建築費のバランスを考慮すると、1戸あたり40平米程度の間取りがローリスクと言えます。

住宅部分を50%以上にする

住宅部分の延床面積を50%以上にすると、住宅ローンを利用できます。賃貸物件の場合、融資を受ける際はアパートローンを利用するのが一般的です。しかし、アパートローンは金利が高い上、返済期間も短いです。

そのため、住宅部分を50%以上にして住宅ローンを利用すると、金利を含めた返済総額を抑えられます。なお、住宅ローンとアパートローンの金利や返済期間の比較は以下の通りです。

住宅ローン アパートローン
金利 1%程度 2〜3%程度
返済期間 最大35年 19〜35年程度(法廷耐用年数によって異なる)

仮に8,000万円を借入した場合、月々の返済額は以下の様になります。住宅ローンとアパートローンでは、月々の返済額が5万円以上変わるため、住宅ローンの利用がおすすめです。

住宅ローン アパートローン
金利 1% 2.50%
借入額 8,000万円 8,000万円
月々の返済額(25年ローン) 301,497円 358,893円
月々の返済額(35年ローン) 225,828円 285,996円

賃貸併用住宅を建築する手順

賃貸併用住宅の建築手順

賃貸併用住宅を建築する際は、以下のステップに沿って進めていきます。

あらかじめ手順を把握しておくことで、竣工までスムーズに進められます。

土地調査

土地調査では、その土地で賃貸併用住宅を建てられるかどうかを確認します。また、賃貸経営できるか、エリアや交通の便などの調査もしっかり行います。

この段階で、建ぺい率や容積率などをもとに、建てられる建物の規模を大まかに決定するのが一般的です。

見積もり依頼

土地調査が終わったら、複数のハウスメーカーへ見積もり依頼を出します。1社だけでなく、見積もりは必ず複数社から取るのが重要です。大きさやデザイン、内装、価格などを比較しながら、絞り込んでいきます。

プランを検討している間に、住宅ローンなど申請関連の準備も行います。金融機関に建築プラント収入に関した書類を持っていき、相談しましょう。大手ハウスメーカーの場合、ローン申請と契約が一緒にできる商品もあります。

なお、住宅部分は住みやすさ、賃貸部分は収益性を考えてプランニングするのがポイントです。

契約と着工

最終的に絞り込んだハウスメーカーと契約し、本格的に設計が始まります。この頃には、住宅ローンの申請結果が分かるため、審査が通ったら工事着工となります。

賃貸併用住宅はゼロから設計するため規模などにもよりますが、完成までには6〜10ヶ月程度を想定しておくと良いでしょう。

入居者募集

ハウスメーカーに依頼する場合、同系列の不動産会社で工事着工と同時に入居者の募集を始められます。一般的な不動産会社は、竣工後1ヶ月程度が目安です。建物の完成日と入居可能日を不動産会社に伝えておくと、タイミング良く経営を始められます。

竣工

竣工とは、建物が完成し、インフラ関係の工事が完了している状態のことです。しかし、この状態ではまだ入居はできません。竣工をしたら、以下の点を検査する必要があります。

内装や設備をチェックし、問題がなければ入居開始となります。不具合が見つかった場合は、仕様書通りになるまで再工事が続きます。検査済証が交付されない限り、建物は利用できないため注意が必要です。

賃貸併用住宅を建築する際の注意点

賃貸併用住宅の注意点

賃貸併用住宅を建築する際の注意点として、以下の4つが挙げられます。

なお、ここでは自宅が総面積の50%以上の建物を前提に解説します。

賃貸部分は住宅ローン控除が適用されない

住宅ローン控除が適用されるのは、住宅部分のみです。賃貸の方には適用されないため、注意が必要です。住宅ローン控除とは、所得税を節約できる制度を指します。年末の借入金残高が大きいほど、節税できる金額も増えます。

例えば、年末の借入金残高が4,000万円ある場合、住宅部分の面積が50%以上あれば住宅ローン控除の対象となる借入金残高は2,000万円です。住宅ローン控除は自宅のみに適用されるため、同じ面積の住宅を建てた場合と比較すると控除額は少なくなります。

設計上に制約がある

賃貸併用住宅は、設計上に制約があります。住宅ローンを利用するために住居部分を50%以上にすることから、縦割りまたは横割りで住居部分と賃貸部分を分けるのが一般的です。いずれのケースでも、アパート部分を大きくしようとすると、住宅部分まで大きくなります。

反対に、住宅部分を狭くすると賃貸部分まで狭くなる点に注意が必要です。賃貸併用住宅は、自宅の住み心地とアパートの収益性が連動しています。どちらかを優先すると、もう片方が犠牲になることを念頭に置いておくことが大切です。

入居者との距離が近い

賃貸併用住宅の場合、入居者と同じ敷地内で暮らすことになるため、トラブルに発展する可能性も高いです。生活音がうるさい、夜中に騒がれる、無断でペットを飼われるなど、トラブルの原因は多岐にわたります。

また、入居者からクレームがあるときは直接訴えられる可能性があります。入居者とのトラブルを防ぐためには、しっかり入居者申請を行うだけでなく、賃貸借契約書で禁止事項を明確に記載することが大切です。必要に応じて契約を解除できる対策を備えておくことをおすすめします。

ただし、入居者との距離が近いことは、デメリットだけではありません。入居者とコミュニケーションを取る機会があると、信頼関係が構築できるため、長期的に入居してもらえる可能性も高いです。

売却や相続をしづらい

賃貸併用住宅は、売却や相続をしづらい点に注意が必要です。売買市場では特殊な部類の物件となります。

そのため、賃貸併用住宅を探している人は少ないので、買主を見つけるのは難しいです。また、子供が既に自宅を持っている場合は、自宅部分は不要となるため、相続しづらい傾向にあります。

賃貸併用住宅を建てたいなら

今回は、賃貸併用住宅の建築費や相場について詳しく解説しました。賃貸併用住宅は自宅として利用しながら、家賃収入を得られるのがメリットです。しかし、戸建やアパートを建てるよりも建築費は高くなります。

ただし、賃貸併用住宅は自宅の面積が50%以上であれば、住宅ローンを利用できます。金利が低く、返済期間が長いため、月々の返済負担を抑えられるのが魅力です。賃貸併用住宅を建てる際は、実績とノウハウが豊富な会社を選ぶことが重要です。賃貸併用住宅を検討している方は、ぜひご相談ください。

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執筆者情報

小林 眞一郎

小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士

ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士

監修者情報

高坂 昇

高坂 昇 ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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