小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
「しっかり儲けたい」「老後資金に備えたい」「税金対策をしたい」などさまざまな理由で賃貸アパート経営を始めたいと考えている方も多いはず。しかし、「アパート経営の始め方が分からない…」という方も多いでしょう。
知識不足で賃貸経営をしてしまうと、ハウスメーカーや建築会社の話が理解できなかったり、安定した収入を得られないという自体に陥ってしまうことも…。そのため、賃貸アパート経営を始める際は、賃貸経営の知識を身に着けたり、綿密な収支計画を立てたりすることが成功率を高めるポイントです。
本記事では賃貸アパート経営の始め方や特徴、基本的な流れについて徹底解説します。賃貸経営に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸アパート経営の特徴は、以下の3つです。
賃貸アパート経営が成功すれば、長期的な収入が得られることができるのが特徴です。賃貸アパート経営を始めたい方は、ぜひ特徴を抑えておきましょう。
賃貸アパート経営は、長期的に家賃収入が得られるのが特徴。なぜなら、アパートの入居者がいれば、安定的に家賃収入が見込めるからです。
また、株式投資やFXなどと比べて急激に価値が暴落したり、空室が発生したとしても収益が急にゼロになったりというリスクが少ないでしょう。
令和4年度の国税庁の申告所得税標本調査結果を見ても、賃貸経営の平均の合計所得額は約537万円と安定的な収入を得られていることが分かります。そのため、賃貸経営の収入によって退職後の生活資金の足しにしたり、老後資金に備えたりといった、資産形成をすることが可能です。
賃貸アパート経営では、相続税・固定資産税などの節税効果があるのも特徴。相続税は、現金をそのまま相続するより、土地や建物などの不動産で相続した方が相続税評価額が低くなるためです。
相続税評価額が低くなる理由は、アパートは貸付建付地となるため、建物や土地の相続税軽減措置が受けられます。相続税評価額は、借地権割合や賃貸割合によって軽減措置が受けられるため、下記の表を参考にしてみてください。
対象 | 計算方法 |
---|---|
建物の相続税評価額 | 固定資産税評価額×( 1-借家権割合(0.3)×賃貸割合) |
土地の相続税評価額 | 相続税評価額×(1-借地権割合(※)×借家権割合(0.3)×賃貸割合) |
(※) 30~90%で各地域によって異なる、路線価図に記載
また、アパート経営の不動産所得は、高額な減価償却費を毎年経費に計上できるため、節税効果が高いのもメリット。不動産収入以外に給与所得がある場合は、損益通算ができます。
空室などの理由でアパート経営が赤字になった場合でも、給与所得と損益通算し、所得税の還付や翌年の住民税を低減することが可能です。
賃貸経営の節税効果については、以下の記事で詳しく解説しています。
アパート経営は、成功率が高いといわれています。成功率が高いといわれる理由としては、アパート経営の利回りは全国で平均8%程度で、他の土地活用と比べると利回りが高くなっているからです。
他社のWebサイトのアパート経営のアンケート調査では、約7割の人が満足しているという調査結果を多く見かけます。しかし、アパート経営の成功度はオーナーが成功したと判断によっても違うため、一概に7割成功するとは言い切れないでしょう。
ただし、アパート経営をする土地や、需要度などによっても賃貸経営の成功率は変わってきます。アパート経営を成功させるためには、綿密な立地調査や収支計画を立てる必要があるでしょう。
賃貸アパート経営を始め方は、以下の通りです。
賃貸アパート経営では、知識を身に着けたり、目的や目標を決定したりするなど事前準備が大切です。賃貸アパート経営についてよく分からない方は、流れに沿って事前準備を行ってみてください。
賃貸アパート経営を始める際は、賃貸経営の知識を身に着けることが大切です。理由としては、建築基準法や宅建業法などの法律、運用するための会計や税金など不動産に関してのさまざまな知識を持っておくことで、賃貸アパート経営の判断に役立てることができるからです。
例えば、アパートを購入する際、契約や手続きのときに登記や法律について理解できなければ、ハウスメーカーや建築業者の話を理解するのが難しいでしょう。また、不動産に関する情報収集力や判断力があれば、いい物件をすぐに購入することができます。
さらに、副業として賃貸アパート経営を考えているなら、損益通算の仕組みや確定申告のやり方なども理解しておく必要があるでしょう。アパートへの投資は、高額な借入金を行うため、失敗しないためにもさまざまな知識を身に着けることが大切です。
賃貸経営の知識がある程度ついたら、アパート経営の目的と目標を設定しましょう。目的と目標を適切に設定することで、自己資金はどのくらい必要か、どのような物件を建てるのかなどの判断材料になります。
例えば、老後の資金形成が目的を目的とした場合、どのくらいの家賃収入があれば実現できるのかを判断することができるでしょう。目的と目標を具体的にすることで、定期的に目標の数値と合っているのか、経営判断にも役立ちます。
賃貸経営の目的は、「節税対策」や「不動産所得を得たいから」などさまざまな目的があるため、明確にして自己投資がいくら必要で、いくら借入をするのかなどを判断しましょう。
賃貸経営を始める際は、ターゲットを明確に設定することが大切です。なぜなら、アパートの立地の賃貸需要を把握してターゲットの需要に合った物件を建てることで、空室や家賃下落のリスクを抑え、収入を安定させられるからです。
例えば、小学校が近い立地なら、2LDKや3LDKといったファミリー世帯の間取りのアパート経営がおすすめ。収納を多くしたり、お風呂やキッチンの設備をよくしたりするなど、ターゲット層のニーズに合った間取りや設備を準備することで、空室のリスクを軽減できるでしょう。
賃貸経営を始める際は、綿密な収支計画を立てることも大切です。理由としては、より具体的な収支計画を立てることで、アパート経営のより現実的な数値を把握できます。
具体的には、ターゲット層のニーズに合ったアパートの建築費用(初期費用)・税金・管理料・仲介料など、あらゆる費用の目安を算出しましょう。また、アパート経営には一定の空室・家賃下落のリスクがあり、10年~20年後にはリフォーム代などの修繕費などが必要になります。
さまざまな費用やリスクも想定し、収支計画を立てることで、どのくらいの期間で初期費用を回収して黒字化できるかの判断にも役立ちます。ただし、収支計画を個人で行うのは難しい部分も多いため、不動産業者や建築会社などのプロに現実的なシミュレーションをしてもらうのがおすすめです。
相続税対策などでアパート経営を行う際は、相続する可能性のある家族と話し合いをしておくのも重要なポイントです。理由としては、アパート経営は約30年以上と長期に渡るため、オーナーに万が一のことがあった際に家族が管理をしなければならないためです。
相続税の負担が軽減するからといっても「不動産の管理はしたくない」「リスクを背負いたくない」というご家族もいるでしょう。相続する可能性がある方には、どのような経営方針なのか、収支計画はどうなっているのかなど、始める前にきちんと説明をしておきましょう。
賃貸アパート経営の始め方は、以下の通りです。
アパート経営では、建築会社の選び方、建築会社とのやり取りなどの流れも把握しておくのがおすすめ。建築期間や入居者募集のイメージなどをつけておき、実際に賃貸アパート経営を行う際の参考にしてみてください。
建築会社を選ぶ際は、複数の会社を比較するのがポイントです。理由としては、ハウスメーカーや建築会社によって、アパートの工法・構造・建築費用が違うからです。
また、所有する土地のエリアに詳しいかどうか、実績があるかどうかも建築会社の重要な選定ポイント。土地に適した設計や収支計画が立てられれば、失敗するリスクも低くなるでしょう。
1つ1つの建築会社に問い合わせるのが難しい場合は、一括請求プランなどを活用し、効率的に建築会社を比較してみましょう。
建築会社とのやり取りでは、なるべく現実的なプランや数値を提案してもらうのがポイントです。賃貸アパート経営の目的、目標を具体的に伝え、いくら収益をあげたいのかを明確に伝えましょう。
例えば「年間〇〇万円の収益をあげたい」と明確にすることで、そのためにその立地でどのような構造・間取りのアパートを建て、家賃をいくらにするのかといった具体的なプランを立てられます。また、初期費用の安さで判断せず、長い目で収支計画を立てるのも成功するコツです。
理由としては、建築費などの初期費用を安くするとグレードが低い物件となり、家賃設定が安くなったり、リフォームや修繕費が嵩んだりする物件となる可能性があるからです。初期費用だけでなく、数年先の支出や収入も見越して、入居率が維持できる物件を建てましょう。
一般的な2階建ての木造・軽量鉄骨造のアパートの建築期間は、3ヶ月~6ヶ月程度が目安です。鉄骨造・RC造の場合は、アパートの回数+2ヶ月~3ヶ月程度を目安としましょう。
規格化されたハウスメーカーや建築会社を選ぶと、さらに短い建築期間となる可能性もあります。竣工後は、入居者募集・管理業務などさまざまな業務を行う必要があるため、下調べしたり、建築会社から提案を受けたりして準備しておきましょう。
賃貸アパートの完成の目途がついたら、入居者募集内容を決めましょう。建築会社とのやり取りで計画した賃料に加え、敷金や礼金、管理費や保証金などの額を決める必要があります。
次に、入居者の募集要項を決めましょう。入居者の募集要項とは、大家さんが入居者募集の注意事項や契約に関して記載した書類です。例えば、以下のようなことを募集要項に記載します。
賃貸アパート経営の入居後は、日常的なメンテナンスを行う必要があります。理由としては、アパート経営では、ゴミ置き場のチェック、エントランスや駐車場など共用部分の清掃、消化器や火災報知器の点検など、さまざまなメンテナンスが必要になるからです。
これらのメンテナンスは、オーナー自身で行う場合と管理業者に委託する方法があります。オーナーが自主管理する場合は、管理費用を抑えることができますが、毎回アパートに出向いて管理業務を行う手間がかかります。
一方で管理業者に委託する場合は、清掃や点検などの管理業務をすべて行ってくれます。さらに、管理業者はトラブルやクレーム対応も豊富な経験があるため、適切に対応してくれるでしょう。
管理業者もさまざまな会社があるため、費用やサービスなどを比較して検討するようにしましょう。
賃貸アパート経営を始める前には、資金計画の確認と再検討を行いましょう。なぜなら、計画の段階でより現実的な計画を立てたとしても、実際に準備を進めていくうちにズレが生じる可能性があるためです。
資金計画にズレが生じた場合は、その分の資金を確保したり、費用の見直しを行ったりする必要があります。長期的な運用を成功させるためには、賃貸アパート経営を始めた後も、キャッシュフローは常に正確に把握しておくことが大切です。
パートナーとなるハウスメーカーや建築会社と資金計画の確認と再検討を行い、賃貸アパートの成功率を高めましょう。
入居者募集から入居後の賃貸アパート経営の始め方は、以下の通りです。
賃貸アパート経営は、建てたら終わりではなく、実際に入居者を募集したり入居後の管理やメンテナンスを行う必要があります。ここでは、実際の流れや内容について紹介するので、チェックしてみてください。
賃貸アパートが完成したら、入居者の決定と賃貸契約の締結を行います。入居者の募集は、地域の需要を把握した不動産仲介会社に依頼しましょう。
入居希望者の申込を受けたら、いよいよ入居者の決定です。入居者の申込書には、一般的に入居希望者・連帯保証人の氏名・住所・勤務先・年収・電話番号などを記載してもらいます。
この申込書の情報を基に、入居者の審査が行われ、審査が無事完了したら賃貸借契約の締結です。貸主と借主双方が賃貸借契約書の内容を確認し、署名・捺印を行う流れとなります。
これらの契約に関わる業務は、基本的に不動産仲介業者が行ってくれますが、双方のトラブルとならないためにも契約の際にはしっかりと確認を行いましょう。
賃貸アパート経営の入居者が決まれば、入居者・賃貸管理が必要になります。例えば、賃料の管理や苦情への対応、契約違反などの対応が挙げられます。
また、契約更新の意思確認や、更新の契約の準備、退去の立ち合いや手続きなども行わなければなりません。賃料滞納や苦情の対応は入居者とのトラブルになるケースも多いため、費用に余裕があれば、管理会社に任せることをおすすめします。
賃貸アパート経営の入居後は、日常的なメンテナンスを行う必要があります。理由としては、アパート経営では、ゴミ置き場のチェック、エントランスや駐車場など共用部分の清掃、消化器や火災報知器の点検など、さまざまなメンテナンスが必要になるからです。
これらのメンテナンスは、オーナー自身で行う場合と管理業者に委託する方法があります。オーナーが自主管理する場合は、管理費用を抑えることができますが、毎回アパートに出向いて管理業務を行う手間がかかります。
一方で管理業者に委託する場合は、清掃や点検などの管理業務をすべて行ってくれるのが特徴です。管理業者はトラブルやクレーム対応も豊富な経験があるため、適切に対応してくれるでしょう。
管理業者もさまざまな会社があるため、費用やサービスなどを比較して検討するようにしましょう。
賃貸アパート経営は、長期的に家賃収入が得られたり、節税効果があったりとメリットも多いです。本記事で紹介した始め方を参考に、事前準備や勉強を行えば成功率も高まることが期待できます。
賃貸アパート経営は、大きく分けて事前準備、建築会社の選定や建築・竣工まで、入居後の管理の3つに分けられます。それぞれの内容や流れを理解し、賃貸アパート経営を適切に行えるように準備しましょう。
M-LINEでは多数の賃貸アパート経営の提案実績があるため、賃貸アパート経営の始め方についてのご相談も承っています。
「賃貸アパート経営に興味がある」「資金面に不安がある」「収支計画の相談に乗ってほしい」など、どのようなお悩みも一度ご相談ください。
2025/03/31
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