ビル経営は、安定した賃料収入が期待できるほか、資産形成につながる土地活用方法のひとつです。一方で、空室の発生や修繕費の増加など、経営を続けるうえで考慮しておきたいリスクもあります。
こうしたリスクの多くは、事前の調査や適切な対策によって軽減できます。計画段階から備えておくことが、安定したビル経営につながるでしょう。
本記事では、ビル経営で想定される主なリスクと対策に加え、リスクを抑えやすい土地の特徴について解説します。
ビル経営を始める前に、収益を左右する主なリスクを理解しておくことが重要です。ここでは、特に注意しておきたいビル経営の5つのリスクを紹介します。
<ビル経営で想定されるリスク>
これらは特別な物件だけに起こる問題ではなく、条件次第でどのビルにも起こり得るリスクです。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
空室やテナント退去による収入減少も、ビル経営における代表的なリスクのひとつです。
ビルの賃料収入は、テナントが入居している間しか発生しません。契約満了や事業縮小によって退去が発生すると、退去した区画については、次の入居者が決まるまで収入が途絶えてしまいます。特に、一棟貸しや単一テナント型のビルでは、退去による収入への影響が大きくなります。また、募集開始から成約までに数ヶ月を要するケースも珍しくありません。
空室期間中も、ローンの返済や税金、管理費などの支出は継続します。そのため、収支のバランスが崩れやすくなる点に注意が必要です。
ビル経営では、初期費用や固定資産税の負担が大きくなりやすい点もリスクのひとつです。
初期費用には、建物本体の工事費や設計費のほか、土地や建築計画によっては解体費・地盤改良費・空調設備・消防設備などの費用も含まれ、建物を建てない土地活用と比べて高額になります。
また、建築後は、土地にかかる固定資産税にも注意が必要です。住宅用地には、住宅1戸につき200m²までの部分の課税標準を価格の6分の1とする特例がありますが、住宅部分を含まないビルの敷地は原則として適用されません。
建築費だけでなく、事業開始までにかかる総費用と税負担を事前に確認しておくことが重要です。
ビル経営を長く続けるうえでは、修繕費や維持管理費の増加も想定しておきたいリスクのひとつです。
外壁・防水・空調・エレベーター・消防設備など、定期的な点検や修繕、更新が欠かせない設備は数多くあります。これらの費用は、建物が完成した直後は少額でも、築年数の経過とともに負担が大きくなりやすい傾向があります。
また、大規模修繕のタイミングで想定外の出費が重なると、収支計画の崩れにつながるでしょう。修繕・維持管理費は、建築時点から中長期的な視点で見込んでおくことが大切です。
借入返済の負担や金利上昇も、ビル経営を行ううえで考慮しておきたいリスクです。
ビル経営は、住宅と比べて建築費が高額になりやすいため、借入額が大きくなる傾向があります。また、返済期間も長期にわたるケースが多く、変動金利で借り入れている場合は、契約内容や金利の改定条件によって、利息負担や毎月の返済額が増える可能性も考えられるでしょう。
さらに、空室の発生や賃料の下落といった収入の減少が重なると、資金計画に影響を与えることもあります。そのため、借入計画を立てる際は、金利の変動も想定したうえで余裕を持った返済計画を立てるようにしましょう。
テナント誘致や運営に関するノウハウ不足も、ビル経営に影響を与えるリスクのひとつです。
オフィスや店舗向けのビルは競合物件が多く、賃料・設備・立地条件などさまざまな点で比較されます。そのため、テナントのニーズを踏まえた募集活動や入居後も安心して利用できる管理体制を整えられないと、空室が長期化する可能性があります。
ビル経営を安定させるためには、事前に市場やテナントのニーズを把握するとともに、必要に応じて管理会社や不動産会社のサポートを活用しましょう。

ここまで紹介したリスクを正しく理解するためには、ビル経営の基本的な仕組みを押さえておくことが役立ちます。ビル経営の基本を理解するために、以下の2点を確認していきましょう。
ビル経営とは、所有する土地にオフィスや店舗・住宅などが入居するビルを建築し、テナントや入居者から賃料を得る事業のことです。ビルの種類や収支の内訳を理解しておくことで、経営開始後のギャップを防ぎやすくなるでしょう。
ビル経営にはさまざまな種類があり、入居するテナントによって求められる建物の仕様や立地条件が異なります。代表的な種類は以下のとおりです。
オフィスビルや店舗ビルは、立地や周辺需要によっては住宅用途より高い賃料水準を期待できる一方、景気や市場動向の影響を受けやすい傾向があります。
複合ビルは、用途を分散することで、特定の用途で空室が発生した際の影響を抑えやすい点が特徴です。ただし、用途ごとに異なる設備や管理体制が必要になる場合があります。
ビル経営の収支を把握するためには、どのような収入と支出が発生するのかを理解しておくことが大切です。
主な収入には、次のようなものがあります。
<主な収入>
一方、主な支出は以下のとおりです。
<主な支出>
ビル経営では、賃料収入だけで収益性を判断するのではなく、こうした支出を差し引いたあとの収支を確認することが重要です。最終的に手元に残る金額を把握することで、無理のない経営計画を立てやすくなります。
ここまで紹介したリスクは、建築前の判断や計画の立て方によって、より高まってしまうことがあります。ビル経営で起こりやすい失敗例として、以下のパターンを紹介します。
自分の計画と照らし合わせながら、同じ問題が潜んでいないか確認してみましょう。
所有する土地に賃貸ビルを建築し、相続時に賃貸している場合は、現金のまま相続する場合より相続税の負担を抑えられることがあります。
しかし、テナント需要や収益性を十分に確認せずに建築を進めると、入居者が決まらず、経営が悪化するおそれがあります。また、建築後は固定資産税や借入金の返済、修繕費、維持管理費なども継続的に発生します。
そのため、節税効果だけを目的とせず、テナント需要や収支を踏まえて、事業として成立するかを確認することが大切です。
相続した土地があるという理由のみでビルを建てたり、周辺の建物を参考に安易に用途を決めてしまうことも避けたい判断です。
賃料相場や競合物件、建築・運営にかかるコストなどを十分に調査せずに計画を進めると、想定どおりの収益を得られない可能性もあるでしょう。周辺に十分な需要がなければテナントの確保が難しくなり、空室が長期化することも考えられます。
その結果、借入金の返済負担だけが重くなり、せっかくの土地の収益性を十分に活かせないケースに陥ってしまいます。
建築後すぐにテナントが決まり、想定どおりの賃料収入が得られることを前提に資金計画を立てることは避けましょう。
実際には、入居開始までに時間がかかるケースもあり、その間もローンの返済や維持管理費などの支出は発生します。満室を前提に借入額や返済計画を組むと、数ヶ月の空室でも資金繰りに影響する可能性があります。
資金計画を立てる際は、一定期間の空室や収入の減少も想定し、余裕を持った返済計画を立てることが不可欠です。

こうした失敗を防ぐには、所有する土地の適性を見極めることが大切です。ここではビル経営に適している土地の3つの特徴について解説します。
それぞれの土地の特徴と、リスクを回避できる理由や注意点を解説します。
ビル経営には、駅や主要道路に近く、徒歩や車でアクセスしやすい土地が適しています。
アクセスのよさは、オフィスや店舗を利用する人にとって重要な条件のひとつです。そのため、テナントを確保しやすく、空室の発生を抑えやすくなります。
ただし、重視される条件は用途によって異なります。オフィスでは駅からの近さが重視される傾向にありますが、クリニックや物販店では来店者向けの駐車場や道路の乗り入れやすさが求められるケースもあります。用途に合ったアクセス性かを見極めるようにしましょう。
企業や店舗・医療施設・住宅などが周辺に集まり、想定する業種の需要が見込める土地も、ビル経営に向いています。
周辺の人口や事業所数に加え、想定する業種への需要が確認できる土地であれば、テナントを募集した際の反応も得やすくなり、空室・退去による収入減少のリスクを抑えられるでしょう。
一方で、人通りの多さだけで判断するのには注意が必要です。競合となる物件の数や、周辺エリアの空室状況もあわせて確認しておく必要があるでしょう。
周辺の賃料相場が一定以上あり、建築費や維持管理費、ローンの返済などを考慮しても収益を確保できる土地は、ビル経営に適しています。
十分な収益性が見込めれば、空室や金利上昇が生じた場合でも、収支悪化のリスクを抑えやすいためです。
ただし、立地がよい土地であっても、建築費が想定以上に高くなり、収支が合わないケースもあるため注意しましょう。土地の条件だけでなく、建築プランと合わせた収支シミュレーションが欠かせません。

前半で紹介したリスクは、建築前の段階から対策を講じることで抑えられます。ここでは、代表的な対策を紹介します。
いずれも建築前の準備段階で取り組める内容です。それぞれの対策について、詳しく解説します。
空室やテナント退去による収入減少を抑えるためには、事前に周辺の需要を調査することが大切です。需要に合わないビルを建てると、テナントを確保しにくくなり、収益に影響する可能性があります。
周辺の賃料相場や空室状況、競合物件の募集状況に加え、企業や店舗の分布、今後の開発計画などを確認しておきましょう。そのうえで、建てたいビルの用途ではなく、市場ニーズに合った用途を検討することが重要です。
借入返済や金利上昇による収支悪化に備えるためには、満室時だけを前提としない収支シミュレーションを行いましょう。
空室の発生や賃料の下落、金利の上昇、修繕費の発生など、さまざまな条件を想定して収支を試算しておくことで、リスクを把握しやすくなります。また、税金や管理費などの支出を差し引いたあとの収支も確認しておくと安心です。
あらかじめ複数のシナリオを想定しておくことで、状況の変化にも柔軟に対応しやすくなります。
修繕・維持管理費の増加リスクを抑えるためには、長期修繕計画をあらかじめ立てておくことが対策になります。
建物や設備ごとの点検・更新時期を把握し、必要な修繕費を計画的に積み立てておくことで、大規模修繕のタイミングでも資金不足に陥りにくくなります。
また、突発的な設備の故障に備えて、一定の予備資金を確保しておくことも大切です。修繕費を後回しにせず、建築段階から資金計画に組み込んでおきましょう。
テナント誘致や運営ノウハウ不足による経営悪化のリスクを抑えるためには、将来の用途変更も見据えた設計を検討するとよいでしょう。テナントの退去や市場ニーズの変化に応じて、柔軟に対応しやすくなるためです。
例えば、将来的に区画を分割できる構造や、給排水設備に余裕を持たせた設計を採用しておくことで、用途変更の選択肢を広げられます。
ただし、すべての用途に変更できるわけではありません。用途地域や建築基準法、消防法令などによって制限を受ける場合があります。対応可能な用途や法規・設計上の制約については、建築計画の段階で建築会社へ確認しておくことをおすすめします。
高額な初期費用や経営リスクを抑えるためには、ビル建築の実績が豊富で、提案力のある会社へ相談するとよいでしょう。
建築会社を価格だけで選ぶと、初期費用は抑えられても、完成後の収益性や維持管理コストに影響する可能性があります。施工実績や提案内容に加え、建築後の維持管理やアフターサポートまで比較し、自身の土地や経営計画に合った会社を選びましょう。
ここでは、ビル経営のリスクに関してよくある以下の3つの疑問に回答します。
それぞれ順に見ていきましょう。
一概にどちらが高いとはいえず、用途や立地条件によってリスクの内容が異なります。
ビル経営はオフィスや店舗が中心となるため、企業活動や消費動向の影響を受けます。一方、マンション経営は人口動態や地域の住宅需要、周辺の供給状況などに収益が左右されます。
立地や建物の設計に加え、需要調査や資金計画を適切に行い、管理体制を整えることで、どちらの用途でも継続した収益の確保が期待でしょう。
事前の調査や資金計画を後回しにしてしまう人は、ビル経営に向いていない傾向があります。
テナント需要の調査や収支シミュレーションを十分に行わないまま計画を進めると、空室や資金繰り悪化などのリスクが高まりやすくなります。継続的な情報収集や管理を負担に感じる場合は、管理会社への委託も含めて検討するとよいでしょう。
自己資金が少ない場合でも、事業計画や返済能力などが金融機関の審査で認められれば、融資を利用してビル経営を始められる可能性があります。
ただし、同じ総事業費を前提とすると、自己資金が少ないほど借入額が増え、月々の返済負担や金利上昇の影響を受けやすくなる点には注意が必要です。無理のない返済計画を立てるためにも、自己資金の割合や借入条件については事前に金融機関へ、建築費を含む事業計画は建築会社へ相談しましょう。

本記事では、ビル経営における5つのリスクと失敗例、リスクを抑えるための具体的な対策について解説しました。ビル経営には空室や金利上昇などのリスクが存在するものの、事前の需要調査や適切な設計・試算によってその影響を抑えることが可能です。
M-LINEでは、土地の形状や周辺環境を踏まえたうえで、事業用ビルの設計・施工プランをご提案しています。狭小地や変形地といった施工難易度の高い土地であっても、設計の工夫によって敷地の可能性を広げられるケースは少なくありません。「まずは自分の土地で何ができるか知りたい」とお悩みの方は、ぜひお気軽にM-LINEへご相談ください。
この記事を読んで、質問やご相談などがありましたらまずはM-LINEまでご連絡ください。他にはない、施工事例のご紹介やお客様に沿ったご提案をさせていただきます。
ビル経営に適した土地かどうかは、立地の良さだけで判断できるものではありません。想定する用途に合ったアクセスやテナント需要があるか、建築費に見合う賃料収入が期待できるかに加え、希望する建物を建築できる土地かを総合的に確認することが大切です。いずれか一つの条件だけで判断せず、建築プランと収支を合わせて検討しましょう。