重量鉄骨の家の外観

重量鉄骨の家のメリット・デメリット|坪単価や耐震性・寿命などを徹底解説

重量鉄骨造は、高い耐久性と、大空間もつくりやすい間取りの自由度の高さが魅力です。今回は、重量鉄骨の家のメリットと、軽量鉄骨などの他の構造と比較したデメリットや、建築時に注意すべきポイントについて解説します。

重量鉄骨造の坪単価や耐震性能・寿命、雨漏りへの対策などを紹介しますので、重量鉄骨の住宅やアパート・マンション・賃貸併用住宅などの建築を検討中の方は参考にしてください。

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重量鉄骨造とはどんな家?

重量鉄骨の家のリビング

重量鉄骨造とは、幅6mm以上の骨格材(部材を作るための鋼材)でできた構造材を使った鉄骨造の建物を指します。

骨格材が幅6mm未満の構造材で作る鉄骨造は「軽量鉄骨造」と呼びます。

骨格材の厚みは、強度やコスト(建築費用・固定資産税など)、法定耐用年数などに関係してきます。重量鉄骨はより強度が高くなるため3階建て以上の建物、軽量鉄骨は2階建てまでの建物に向いているなど。重量鉄骨・軽量鉄骨にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。

 

重量鉄骨の家のメリット

重量鉄骨造の住宅内装

次に、重量鉄骨造と軽量鉄骨造を比較した、重量鉄骨のメリットについて解説します。

 

強度が高い

重量鉄骨は軽量鉄骨よりもより強度が高く、中高層の建物に向いています。重量鉄骨の中でも骨格材の厚みの違いで強度が変わります。

 

重要鉄骨の家は地震にも強い

軽量鉄骨造に比べて骨格材が厚いので、柱などの部材も太くしっかりした骨組みになります。骨組みの強さが地震力に耐える力の強さにもつながり、耐震性も重量鉄骨の方が高くなり、繰り返しの揺れにも強くなります。軽量鉄骨よりも重量鉄骨の方が、より高さのある建物に用いられるのも、重量鉄骨の耐震性・耐久性の高さが大きな理由です。

 

防音性が高い

重量鉄骨の方が柱・梁が太いので壁・床・天井も厚くなるため防音性が高くなります。

 

広い空間が作れる・間取りの自由度

重量鉄骨の家は、ラーメン構造と呼ばれる、柱と梁を一体化し、筋交いを使わずに構造を作る工法が用いられます。軽量鉄骨よりも柱や梁が太く強いので、少ない本数で建築でき、間取りの自由度が高く広い空間を作りやすいメリットがあります。


重量鉄骨の家のデメリットやよくある疑問について

重量鉄骨造の賃貸住宅の一室

重量鉄骨の家は高い?

重量鉄骨造は、木造と比較すると坪単価が高く、建築コストが上がってしまうのがデメリットです。重量鉄骨造と、その他の構造との坪単価の比較データを紹介しますので参考にしてください。

重量鉄骨の家の坪単価

まず、重量鉄骨と軽量鉄骨を合わせた鉄骨造全体の坪単価を見てみましょう。国土交通省の「住宅着工統計(令和3年分)」によると、令和3年度に建てられた住宅の構造別㎡単価・坪単価(工事予定額)は次のようになっています。

2021年度住宅着工統計の構造別工事予定額(㎡単価・坪単価)

<全国>

  • 木造 170000円/㎡(561,000円/坪)

  • 鉄骨造(S造)270000円/㎡(892,000円/坪)

  • 鉄筋コンクリート造(RC造)260000円/㎡(859,000円/坪)

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)290000円/㎡(958,000円/坪 )

<東京都>

  • 木造 170000円/㎡(561,000円/坪)

  • 鉄骨造(S造)320000円/㎡(1,057,000円/坪)

  • 鉄筋コンクリート造(RC造)330000円/㎡(1,090,000円/坪)

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)360000円/㎡(1,190,000円/坪)

※坪単価に換算する際百の位以下は切捨てて計算

データを見ると、東京都で鉄骨住宅を建てる場合、坪単価は約105万と全国平均よりも高い坪単価となっていますが、RC造やSRC造と比較すると安く建てられる傾向があります。

また、東京都で令和3年度に建てられた鉄骨造住宅のうち、一戸建てと共同住宅(アパート・マンション)では、一戸建ての方が坪単価が高かったことが分かりました。

東京都の鉄骨造住宅の建て方別工事予定額(㎡単価・坪単価)

  • 一戸建て 330000円/㎡(1,090,000円/坪)

  • 共同住宅 310000円/㎡(1,024,000円/坪)

※坪単価に換算する際百の位以下は切捨てて計算
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和3年度計分)

 

重量鉄骨の家は軽量鉄骨よりも坪単価が高め

住宅着工統計では、重量鉄骨/軽量鉄骨ごとの㎡単価は公表されていません。そこで、重量鉄骨・軽量鉄骨(鉄骨系プレハブ)の家を扱う大手ハウスメーカーの参考坪単価を調べて平均を出してみました。

  • 重量鉄骨の家を扱う大手ハウスメーカーの参考坪単価の平均…70万円~160万円/坪

  • 軽量鉄骨(鉄骨系プレハブ)の家を扱う大手ハウスメーカーの参考坪単価の平均…65万円~132万円/坪

(参照)住宅情報ポータルsuumoより弊社独自に調査して作成

調査の結果、重量鉄骨を扱うハウスメーカーは限られており、平均坪単価も高めになっていることが分かりました。

 

本体価格以外の付帯工事費にも注意

重量鉄骨造の場合、軽量鉄骨と比べて材料費が高くなり、部材が大きく施工コストも上がるため、坪単価も高くなります。

この他にも、軽量鉄骨よりも建物の重量が増すためより強固な地盤が必要で、場合によっては地盤補強工事など大掛かりな工事が必要なケースがあります。地盤改良工事は、建物本体の建築費用とは別に、数百万円以上の費用がかかることもあるため、事前に地盤が重量鉄骨に適しているか、しっかり確認しておくのがポイントです。

 

重量鉄骨の家は雨漏り補修が難しい

重量鉄骨のような鉄骨造の家は、木造にはない雨漏りの原因となる部分があります。

また、木造と比べて鉄骨造は侵入した雨水が柱を流れて横に伝わっていくため、発生場所から離れた場所で雨漏りすることも多く、雨水の入口が見つけにくく対処の難易度も高いのがデメリットです。そのため、鉄骨造の家の雨漏りは事前に対策を考えておくことが重要です。

重量鉄骨の家で雨漏りが起きる原因と対策

  • ・よくある原因:ALCパネルの目地からの雨漏り

    鉄骨造の外壁に使われるALCパネルは、継ぎ目が多く、継ぎ目のコーキング材が劣化するとそこから雨水が侵入してしまいます。

    雨漏りを防ぐために耐水性・耐候性の高いコーキング剤を使用し、定期的な継ぎ目のコーキングの点検、5~10年ごとのコーキングの打ち換えを行いましょう。

  • ・よくある原因:ALCパネルのクラック(ひび割れ)からの雨漏り

    ALCパネルは、断熱性を高めて軽量化するために、内部に気泡が沢山ある構造になっています。そのため、水を吸い込みやすいというデメリットがあります。パネルが劣化すると雨水が侵入しやすくなり、そこからひび割れが発生、雨漏りにつながるというパターンです。

    ALCパネルの表面には、防水性が高く、かつ透湿性の高い塗料を使用して雨水をシャットアウトする対策が重要です。また、10年ごとを目安に外壁塗装を行って防水性を保ちましょう。

  • ・よくある原因:陸屋根からの雨漏り

    鉄骨造の建物には、平らな陸屋根や屋上付きの屋根が採用されることも多いです。陸屋根は勾配のある屋根よりも排水能力が低いため、しっかりとした防水と排水構造の構築が不可欠です。また、定期的な点検・メンテナンスも欠かせません。

    陸屋根で鉄骨住宅を建てる際は、屋上や陸屋根の建物の建築実績が豊富で、メンテナンス方法にも詳しいハウスメーカーや工務店を選びましょう。

 

耐火性を補う必要がある

鉄骨造は、RC造ほど高熱に強くないというデメリットがあります。鉄骨の材料である炭素鋼の加熱されたときの強さは、約100℃まではあまり変化がなく、200~300℃で最大になります。しかし、500℃になると軟化して、常温の1/2の強さ、600℃で常温の約1/3、100℃では強さは0と、一定以上の高温になると非常に脆くなってしまうというデメリットがあります。

そのため、鉄骨造の住宅やマンションはそのままでは火災に遭うと大きな被害を生じる可能性があります。そのため、「耐火被覆」と呼ばれる、柱や梁などの骨組み部分をロックウールなど耐火性のある材料で覆う処理が不可欠になります。

 

法定耐用年数が長いため節税効果が少ない

鉄骨住宅は、骨格材の厚みによって3種類(34年・27年・19年)の法定耐用年数があり、薄いほど法定耐用年数が短くなります。重量鉄骨は法定耐用年数が34年と、鉄骨造の中で最も長くなります。

一般的に、重量鉄骨造よりも償却期間が短い軽量鉄骨造の方が、アパートなどの不動産経営では当初の所得税額を抑えられ、当面の資金繰りに余裕が生まれやすいと言えるため、節税効果という点では、重量鉄骨は軽量鉄骨よりも振りかもしれません。

ただし、償却期間が終われば収入にそのまま税金がかかってくるので、経営期間が長くなればなるほど、償却期間が短いほうが必ずしも良いとは言えません。

また、経営年数が長くなっても毎年同じように収益を上げるためには、建物のメンテナンスや需要に合わせたアップデートなどの経営努力も欠かせません。

そのため、「節税効果が高いから」という理由だけで建物の構造を選択するのはあまりおすすめしません。一人ひとりの予算や経営の方針・スタイルなどを考慮して総合的に決めることが大切です。

 

重量鉄骨の家の寿命(耐用年数)は何年?

重量鉄骨の住宅

先程も少し触れましたが、鉄骨造住宅の法定耐用年数(法人の所得税の税額計算のための減価償却で用いられる数字)は、

このように定められています。幅6mm以上の骨格材を使うので、③の34年くらいが重量鉄骨の家の寿命?と考えるかもしれませんが、実際には

(出典)鑑定おおさかNo.46「建物の寿命と耐用年数」早稲田大学 小松幸夫

という調査結果もあり、適切にメンテナンスを行っていれば、50~60年、またはそれ以上に長寿命化することも可能と言えます。

まとめ|重量鉄骨の家は自由なデザインと耐久性が魅力

重量鉄骨の家は、ビルトインガレージや吹き抜けなど、縦にも横にも柱の少ない大空間を作るのに適した構造です。自由な間取りが実現でき、耐久性・耐震性にも優れ、3階建て以上の住宅を建てるのにも適しているので、狭小地や変形地の多い都内での家づくりにも適しています。

ただし、木造よりも坪単価が上がりやすい点、雨漏り対策や耐火性の確保などについては、各ハウスメーカーや工務店に事前にしっかり確認しなければならない点には注意しましょう。

 

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執筆者情報

小林 眞一郎

小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士

ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士

監修者情報

高坂 昇

高坂 昇 ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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