小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
長期的な安定収入を見込めるマンション経営ですが、経営を始めるにあたってマンションの建築費用など、初期投資は高い傾向にあります。土地活用でマンション経営を検討している人の中には、具体的にどのくらいの建築費が知りたい方も多いのではないでしょうか。
そこで今回、マンションの建築費用はどのくらいかかるのか、相場や坪単価の計算方法について紹介します。また、マンションの建築費を抑える方法や、建てる際の見極めポイントについても解説していきますので、参考にしてみください。
マンションの建築費用相場は、エリアや建物の構造によって異なります。東京のような都市部だと、人口密度が高く平均床面積が小さいところほど坪単価が高くなるため、建築費用も増加します。
また、建物の構造では主にW造・S造・RC造・SRC造と呼ばれる、建物をつくる材料によって種類が分類されます。構造別に使われている材料については、以下の通りです。
マンションでは基本的に鉄筋コンクリート造が多く見られ、東京都で5階建てのマンションを建てた場合、およそ2億円前後の建築費用が必要となるでしょう。
マンションの建築費には、いくつかの内訳に分けられています。内訳としては、主に以下の3つが挙げられます。
それぞれ構造別・階層別に費用相場が異なるため、具体的にどのような内容になっているのか以下で解説します。
本体工事費とは、マンションそのものを建てる費用のことで「坪単価×延床面積」という計算式で算出されます。延床面積とは、マンション各階の床面積を総合した数値です。国土交通省が発表している「住宅着工統計 令和4年計分 全国計」を元に、構造別の1坪あたりの費用相場について以下の表でまとめています。
構造 | 費用相場 |
---|---|
W造 | 約56.1万円 |
S造 | 約85.8万円 |
RC造 | 約89.1万円 |
SRC造 | 約92.4万円 |
階層ごとの費用相場については、以下の通りです。以下の表は、20㎡のワンルームが階層ごとに3戸あるマンションで計算しています。
S造 | RC造 | SRC造 | |
---|---|---|---|
1階 | 1,560万円 | 1,620万円 | 1,680万円 |
2階 | 3,120万円 | 3,240万円 | 3,360万円 |
3階 | 4,680万円 | 4,860万円 | 5,040万円 |
4階 | 6,240万円 | 6,480万円 | 6,720万円 |
5階 | 7,800万円 | 8,100万円 | 8,400万円 |
以上の表を見て分かるように、5階建てのマンションを建築しようとすると、少なくとも本体工事費が8,000万円〜9,000万円ほどかかります。
別途工事費とは、だいたい本体工事費の約15%〜20%前後かかるとされています。別途工事の主な内容としては、外構工事費と附帯工事費の2つです。外構工事費は屋外給排水・電気・ガス工事費・塀があり、附帯工事費には地盤改良工事費、空調設備等が含まれています。それぞれの、費用相場については以下の通りです。
項目 | 費用相場 |
---|---|
屋外給排水工事 | 建築費用の約10% |
ガス工事費 | 10万円〜15万円 |
地盤改良工事費 | 1坪あたり2万円〜7万円 |
空調設備工事費 | 1万円〜5万円 |
地盤改良工事費については、費用相場が2万円〜7万円としましたが工法によって費用が異なります。表層改良工法では1坪あたりの費用相場が1万円〜3万円、柱状改良工法は3万円〜5万円、鋼管杭工法は5万円〜7万円となります。
本体工事費だけでなく、上記のような別途工事費がかかることを理解しておきましょう。
建築工事費とは別に以下の諸費用がかかることもあります。各費用の一部を下記の表でまとめています。以下の諸費用以外にもかかる費用はあるため、あくまでも参考としてご覧ください。
項目 | 費用相場 |
---|---|
測量費 | 約30万円 |
地盤調査費 | 1ポイント約50万円 |
設計料 | 工事費の約1〜3% |
印紙税 | 工事費1億円以上5億円以下:約1〜3% 工事費5億円以上10億円以下:約5〜8% |
登録免許税 | 抵当権設定登記費用:債権金額×0.4% 新築建物登録免許税:固定資産税評価額×0.4% |
火災保険料 | 請負工事金額の約0.05%(年間) |
司法書士報酬 | 約6〜7万円 |
不動産取得税 | 基本的に固定資産税評価額×0.3% |
その他の諸費用は、本体工事費の5%前後かかるとされています。どのくらいの費用がかかるのか、用意する自己資金に影響するためそれぞれ理解しておく必要があります。
マンション建築費はエリアによって相場が異なるため、土地活用を考えているエリアの相場がどれくらいなのか、把握しておくことが大切です。特に、都市部などの人口密度が高いエリアでは坪単価も高く、建築費も増加する傾向にあります。
ここでは、国土交通省が発表している「住宅着工統計」を元に、一都三県のマンション建築費用の相場について解説していきます。それぞれ、構造別に費用相場を見ていきましょう。
東京都のマンション建築費の1坪あたりの相場について、最新の資料を元に以下にまとめています。
構造 | 費用相場 |
---|---|
W造 | 約66万円 |
S造 | 約102.3万円 |
RC造 | 約112.2万円 |
SRC造 | 約125.4万円 |
全国の平均相場から見ても、東京都は全体的に相場が高いことが分かります。鉄筋コンクリート造を基本とするマンションの建築費は、だいたい125万円ほどかかると考慮しておきましょう。
神奈川県のマンション建築費の相場は以下の通りです。
構造 | 費用相場 |
---|---|
W造 | 約59.4万円 |
S造 | 約95.7万円 |
RC造 | 約105.6万円 |
SRC造 | 約82.5万円 |
RC造が他の構造よりも高くなっている理由としては、神奈川県ではSRC造の需要が低くRC造の需要の方が高いことが分かります。そのため、神奈川県でマンションを建築する際には、この需要の違いを頭に入れておくと良いでしょう。
埼玉県のマンション建築費の相場は以下の通りです。
構造 | 費用相場 |
---|---|
W造 | 約62.7万円 |
S造 | 約85.8万円 |
RC造 | 約99万円 |
SRC造 | 約95.7万円 |
一都三県の中でも、埼玉県は全体的に費用相場が低い傾向にあることが分かります。規模の大きなマンションの建築を考えている場合には、埼玉エリアで検討をおすすめします。
千葉県のマンション建築費の相場は、以下の通りです。
構造 | 費用相場 |
---|---|
W造 | 約59.4万円 |
S造 | 約85.8万円 |
RC造 | 約95.7万円 |
SRC造 | 約122.1万円 |
千葉県では、SRC造の費用相場が高いことが分かります。マンションは基本的にRC造が多いため、東京都と比較すると千葉県の方が費用を抑えて建築することができます。
マンション建築費の相場が一通り分かったとこところで、ここからは、坪単価の計算方法について紹介します。坪単価とは、建物を建築する際に1坪(3.3㎡)あたり、いくらかになるのか計算したものになります。
坪単価の計算方法は「本体価格÷坪数(延床面積)」で求めることが可能です。例えば本体価格が3,500万円、坪数(延床面積)が50坪の場合は、3,500万円÷50坪=坪単価70万円となります。
このように、坪単価は一律で定められていないため、計算が面倒だという人はExcelやWebサイトなどを活用する方法でも求めることが可能です。
マンションの建築費は、工夫することでコストダウンさせることが可能です。建築費を抑える方法としては、以下の3つが挙げられます。
上記以外にもマンションの建築費を抑える方法はありますが、最低でも上記3つの方法を行うことがコストダウンへの重要なポイントとなります。しかし、必ずしも建築費用を抑えることが良いとは限らないことを頭に入れておくことが大切です。
マンションを建築する際には、相見積もりを行って比較検討することが建築費用の削減につながります。マンションの建築は、不動産会社を通して建築するのが一般的です。1社だけではなく複数社に相談することで建築費の適正値を把握でき、さらに見積もりを元に価格交渉することもできます。
つまり、1社だけだと建築費用が適正なのか判断することが難しいことから、最悪の場合は適正価格よりも高く設定される可能性があるため注意が必要です。そのため、複数社に相見積もりを行い比較し検討することが、建築費を抑えることにつながるのです。
税理士に相談をすることで、税金に対して金額を抑えられる可能性があります。例えば、マンションを建築することで所得税や相続税などの節税対策につながるため、税理士に節税方法について相談をすることができます。
マンション経営では税金の出費も多いため、コスト削減のためにも税理士に相談するのがおすすめです。
マンション建築の適正価格を把握しておくと、建築費用を抑えることにつながります。前述したように、適正価格を把握していないと何が正しい金額なのか分からないため、価格を提示されても業者の言われるがままに契約をしてしまう危険性があります。
例えば、必要資材を減らす業者がいたり、費用を高く見積もる業者も中にはいるでしょう。そのため、複数社に相見積もりをした際に適正価格を把握しておくことが大切です。
マンションの建築で失敗しないためにも、見極めるべきポイントがあります。見極めポイントについては、以下の4つが挙げられます。
見極めるべきポイントを考慮せずにマンションを建ててしまうと、収益を見込めないだけでなく余計なコストがかかってしまう可能性もあるため注意が必要です。
マンションを建てる際には、高稼働が見込めるのか見極めることが大切です。空室率の低いマンション経営ができれば、安定した家賃収入を得ることができます。
そのためには、建物の安全性や快適性、さらには入居者ニーズを調査する必要があります。入居者は、エリア・築年数・間取りを重要視している傾向にあるため、ターゲット層を明確にしてニーズに合わせたマンションの建築を検討するようにしましょう。
耐用年数が長いと資産価値が落ちにくいため、マンションを売却する際にも有利に働きます。そもそも建物の耐用年数とはマンションの寿命ではなく、減価償却資産の耐用年数などに関する省令で定められた法定耐用年数のことを指します。
そのため、耐用年数を超えたからといって住めなくなるわけではありません。税務上の法定耐用年数では、木造アパートなら22年、鉄骨造なら27年または34年(鉄骨の厚みによる)、鉄筋コンクリートのマンションなら47年となっています。
資産価値は、マンションを建ててから年数が経過するごとに落ちていきます。そのため、耐用年数が長いと資産価値が長期に渡って落ちにくいため、マンションの売却を検討するには有利となります。
マンション経営を行うことで、主に相続税や固定資産税などが節税につながります。特に相続税の場合では、小規模宅地等の特例を利用することで、最大80%もの課税評価額の減額を期待することができます。小規模宅地等の特例とは、被相続人から居住用もしくは貸付事業用の土地を相続する場合などの条件を満たすことで減額できる特例となっています。
相続税などの節税対策を考えている人にとって、マンション経営はおすすめの土地活用方法の一つです。どのような税金を節税できるか、コストを抑えたいなどコスト面での疑問がある方は、前述したように税理士への相談も検討してみてください。
マンションは、他の建物よりも建物性能に優れていることが特徴となります。例えば、耐火性・耐震性の面で入居者にアピールすることで、入居者の獲得に役立てることができます。
また、マンションは木造のアパート等に比べると遮音性が高いため、隣室同士や上下階での音によるトラブルへの対策を取ることも可能です。入居者にとって快適に暮らせるマンションは、需要が高くなるだけでなく賃料も高く設定できるため、建物性能の見極めは重要です。
ここでは、マンションの建築費用でよくある質問について紹介します。紹介する質問は、以下の通りです。
マンションは初期投資が大きいため、経営を成功させるためにも分からないことは解決しておくことが大切です。
マンション経営を始めるには初期費用がかかり、大きく分けると「頭金」と「物件購入にかかる諸費用」になります。頭金の目安としては、購入者の属性にもよりますが、物件価格の1%〜3%ほどになります。物件購入にかかるその他の諸費用は、購入価格の1%ほどです。
例えば、1億円のマンションを購入した場合、1,000万円〜3,000万円が頭金となり、諸費用として1,000万円ほど用意する必要があるのです。ローンでの購入が一般的ですが、ローンを組む際に金融機関から頭金としてある程度の自己資金を求められることもあり、また諸費用も自己資金で支払います。そのため、どのくらいの自己資金が必要となるのか、購入価格から予想して準備しておくことが大切です。
マンション一棟の相場は、エリアや立地条件によって相場が異なります。仮に、東京都でマンション一棟を購入した場合、マンションは鉄筋コンクリート造で建てることが多いため1坪あたり112万円ほどだと考えます。
そのため、東京都で5階建てほどのマンションを建築した際には2億円前後の相場となります。
マンションの建築費用は、エリアや構造によって費用が異なります。また、建築費用の内訳には本体工事費・別途工事費・その他諸費用の3つがあり、頭金も含めてどの程度の自己資金が必要なのか準備しておく必要があります。
マンションを建てる費用を抑えるポイントは、相見積もりで比較検討する、税理士に相談する、適正価格を把握することです。もし、東京都23区や千葉県・埼玉県・神奈川県(一部地域)でマンションの建築を検討している方は、一度MLINEへご相談ください。
M‐LINEでは、一棟マンションを基本としており、相場よりも安い建築費用をご提案しております。少しでもマンションの建築費用を抑えたいと考えている方は、以下からご相談ください。
2024/11/29
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