小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
土地の固定資産税とは、所有する土地に対して課せられる税金のことです。住宅地だけでなく、田んぼや畑、山林、牧場なども土地に該当します。「土地の固定資産税が高い」とよく耳にしますが、実際の金額まで知らないという方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、土地の固定資産税にかかる金額や節約方法などについて詳しく解説します。土地を譲り受けた方やこれから土地を所有する方は、ぜひ参考にしてください。
土地にかかる固定資産税とは、土地に対して課される税金のことです。固定資産税は、毎年1月1日の時点に土地や家屋を所有している場合に課税され、4月上旬に納税通知書が送付されます。地域によっては、都市計画税がかかる場合もあります。
資産が手元にある、もしくは使用している人が課税対象になるわけではありません。固定資産税課税台帳などで所有者となっている人が対象です。そのため、賃貸の入居者に固定資産税は課税されず、支払い義務は不動産のオーナーとなります。
土地の固定資産税は、下記の式で計算することができます。また、固定資産税は、以下の順番に沿って計算します。
それぞれ詳しく解説します。
土地の固定資産税の税率は1.4%です。ただし、自治体によって1.5%や1.6%の場合もあるため、土地を所有する前に確認することをおすすめします。
課税標準額に標準税率をかけた金額が固定資産税です。下記では、固定資産税の計算方法について詳しく解説していきます。
宅地であるかどうかの判別
宅地とは、住宅の敷地になっている土地(住宅用地)のことです。住宅用地であれば、固定資産税の特例措置が適用されます。200㎡以下の住宅用地の場合は「小規模住宅用地」として課税標準額が6分の1、小規模住宅用地以外の住宅用地は「一般住宅用地」として課税標準額が3分の1になります。
なお、200㎡以上の住宅用地の場合、200㎡までは小規模住宅用地、超過分は一般住宅用地です。
固定資産税評価額の算出
固定資産税評価額とは、固定資産税など税額を計算する際に用いる基準価格です。総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、東京都や各市町村の長が一つ一つの固定資産を評価しています。固定資産税評価額は、土地や家屋の時価によって変動するため、3年に1度、評価額の見直しが行われます。なお、評価額の算出方法は、以下の5つです。
【時価から計算】
固定資産税評価額は、時価や公示価格を基準に計算することができます。
固定資産税評価額=公示価格×70%
公示価格が2,000万円の土地の場合、1,400万円が固定資産税評価額の目安になるということです。
【固定資産税路線価から計算】
固定資産税評価額は、固定資産税路線価から計算することができます。路線価方式とは、道路に価格を設定し、その道路に接する土地の価格を算出する方法です。道路には固定資産税路線価と呼ばれる1㎡あたりの土地単価が設定されています。
評点という土地の型血などに応じた補正と掛け合わせることで、適切に評価を計算することができます。例えば、路線価が10万円で土地が200㎡の場合、固定資産税評価額は2,000万円です。なお、固定資産税路線価は全国地価マップで確認できます。
【課税明細書の価格を確認】
課税明細書は、各市町村から届く固定資産税の納税通知書に添付されています。その「価格」の欄に記載されているのが、固定資産税評価額です。
【固定資産課税台帳を閲覧・固定資産税評価証明書を確認】
固定資産税評価証明書とは、固定資産課税台帳に登録されている固定資産の所有者や所在、地目、地積、価格、課税標準額などが記載されている書類です。これを取得すると、固定資産税評価額を確認することができます。
負担水準の判定
負担水準とは、土地の前年度課税標準額が今年度の評価額に対して、どのくらいの水準まで達しているかを示す指標です。土地の固定資産税課税標準額を決定するときに用いられます。なお、負担水準は、以下の式で計算することができます。
負担水準=前年度の課税標準額÷(当該年度の評価額×住宅用地等の特例率)×100
上記の計算式で求められた数値が100%以上であれば税額は引き下げ、または据え置きになり、100%未満なら税額は上昇します。税額が上昇する場合、当該額が特例適用後の評価額の100%を上回るなら100%相当額、20%を下回るなら20%相当額になります。
課税標準額を計算
課税標準額とは、当該年度の固定資産税評価額のことです。ただし、宅地のように特例措置や税負担の調整措置などが適用されている場合は、当該年度の固定資産税評価額よりも低くなります。
固定資産税の税額を計算
土地にかかる固定資産税は、以下の式で求めることができます。
固定資産税の税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
また、都市計画税がかかる場合は、「課税標準額×0.3%」で計算します。
固定資産税は1月31日までに、償却資産の所在する区にある都税事務所に申告する必要があります。なお、各期別の納付期限は以下の通りです。
納税通知書は毎年4月上旬に送付され、納付書が同封されています。全期用納付書では、1年分を一括納付することが可能です。
土地の固定資産税を節約する方法として、以下の3つが挙げられます。
固定資産税は毎年かかるため、個人・法人関わらずできるだけ金額を抑えたいはずです。下記では、それぞれの節約方法について詳しく解説します。
宅地には軽減措置があるため、固定資産税を安く抑えることができます。
住宅用地の特例では、広さによって減額の割合は異なり、200㎡以下の部分は固定資産税評価額×⅙、200㎡超の部分は固定資産税評価額×⅓です。なお、新築住宅でも軽減措置が適用されます。
免税や減税を利用することによって固定資産税は抑えられます。ただし、いずれも申告制となっているため、申告しなければ免税や減税は受けられません。
自身の土地がどのような制度に適用できるのか、しっかりと確認する必要があります。
公共施設や公園、または私道などの場合
学校や福祉施設、公園などの公共施設は、本来の用途で使用されている場合のみ固定資産税が免除されます。
また、私道など私有地でも公益性の高い土地があれば、課税対象外となります。なお、私道とは、国や自治体ではなく、私人が所有する土地を道路としているものです。国や自治体が定めている条件を満たしていれば、私道として認められます。ただし、私道は申告制となっているため注意が必要です。
所有する土地などの資産価値が一定未満の場合
各市町村が決定する課税標準額の合計額が以下の基準を下回る場合、固定資産税は免除されます。
同じ市町村内に複数の土地や家屋を所有している場合は、その合計額で判断されます。
火災や震災などの被害にあった場合
所有する土地や家屋が火災や震災などの被害にあった場合も、固定資産税が免除されます。全額免除になるのは、全壊や全焼など原型を留めず修復不可能の時です。被災日以降、納期前の固定資産税が対象になります。
新築一戸建ての場合
2022年3月31日までに建てられた新築一戸建ては、3年間の固定資産税が2分の1に減税されます。ただし、この減税が適用されるのは、以下のような条件を満たしている必要があります。
減税を受けるためには、検査済証や建築確認申請書などの必要書類を自治体の税務課へ提出しなければなりません。また、長期優良住宅と認定されると、5年間に延長されます。
省エネ改修工事を行った場合
省エネ改修工事を行った場合は、120㎡まで翌年の固定資産税が3分の1に減税されます。そもそも、省エネ改修工事とは、室内における暑さや寒さなどの快適性を向上させたり、暖冷房や給湯などの設備機器の消費エネルギーを少なくしたりするために実施するリフォームのことです。
例えば、窓や壁、床などの断熱工事が省エネ改修工事に該当します。なお、この減税を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
上記の条件以外にも、工事内容やリフォームにかかった費用によって適用できるか判断されます。そのため、自治体の税務課やリフォームを依頼する会社に相談しておくと安心です。
耐震改修工事を行った場合
耐震改修工事を行った場合、1〜2年間の固定資産税が2分の1に減税されます。耐震改修工事とは、住宅の基礎を鉄筋やコンクリートで補強したり、壁を増やしたりする工事です。減税を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
耐震改修工事が終わってから3ヶ月以内に、耐震改修証明書や増改築工事証明書などを自治体へ申請しなければなりません。
バリアフリー改修工事を行った場合
バリアフリー改修工事を行った場合、100㎡分まで翌年の固定資産税が3分の1に減税されます。減税を受けるためには、以下のような工事が必要です。
さらに、工事費用が50万円を超えていることや賃貸住宅ではないこと、新築された日から10年以上経っていることなど、工事内容以外にも条件があります。
また、自治体によっては、バリアフリー工事に補助金を設けていることもあるため、事前の確認が必要です。ただし、補助金を除いた工事費用が50万円を超えなければ免税を受けることはできません。
固定資産税対策におすすめな土地活用方法として、以下の3つが挙げられます。
土地活用にも色々な方法があるため、立地などを考慮したうえで選択することが大切です。
駐車場経営には、月極駐車場とコインパーキングがあります。月極駐車場であれば、不動産会社に管理してもらうのが一般的です。コンクリートで舗装してタイヤ止めを付け、白線を引いて利用者と賃貸借契約を結ぶだけなので、気軽に始めることができます。
一方で、コインパーキングの場合は、機械の導入など設備の問題などがあるため、コインパーキングの専門業者に依頼することをおすすめします。
トランクルームを経営する場合は、不動産会社やトランクルームの専門業者に相談すると良いです。トランクルームの専門業者のサイトで、オーナーを募集していることも多いです。また、業者によって依頼する費用が異なるため、見積もりを比較してから選ぶことをおすすめします。
マンション・アパートを経営する場合は、ハウスメーカーや工務店、設計会社、ゼネコンなどに相談すると良いです。比較的小さなマンション・アパートであれば、ハウスメーカーや工務店、設計事務所がおすすめです。ただし、工務店や設計事務所は1から設計を作っていくため、専門的な知識がないと判断が難しい点がデメリットとして挙げられます。
一方で、ハウスメーカーは既に商品が規格化されており、デザイン面で融通は利きづらいですが、価格や設計後のイメージがしやすくなっています。規模の大きいマンション・アパートを考えている場合は、同規模の施工実績がある工務店や設計会社、ゼネコンがおすすめです。
ゼネコンは主に巨大施設や公共工事などの建設を請け負っていますが、中にはマンションをメインに土地活用の相談を受けているところもあります。
土地の固定資産税に関するQ&Aとして、以下の4つが挙げられます。
固定資産税についてしっかり理解しておくことで、損するリスクを最小限に抑えられます。
登記物件の場合は、滅失登記をする必要があります。登記されていない家屋を取り壊した場合や滅失登記が遅れる場合は、地方自治体の固定資産税係へ家屋滅失について届けなければなりません。
土地は3年ごとに評価替えを行います。ただし、古い家屋の固定資産税は、必ずしもその度に下がるとは限りません。建築費の上昇が激しい場合、家屋の見かけは古くなってもその価値(価格)が減少せず、かえって上昇することもあります。なお、家屋の評価替えは下記のとおりです。
上記のうち、どちらか低い方の評価額となります。
固定資産課税台帳に登録された価格に不満がある場合は、「不服審査」を各市町村に設置されている固定資産評価審査委員会へ申し出ることができます。審査によって価格が不当であると判断された場合、見直しもあり得ます。
なお、不服の申出は台帳登録の公示(通常は4月1日)から納税通知書の交付を受けた日から3ヶ月後までです。
住宅の家屋を解体した場合、1月1日時点に住宅が存在していれば、その年の固定資産税は1年分発生します。また、土地の固定資産税は住宅用地の減税を受けるため、その年に住宅が解体されても土地の固定資産税は低いままです。
今回は、土地における固定資産税について詳しく解説しました。固定資産税とは、所有している土地や家屋に対して課される税金のことです。所有者は毎年払う必要があるため、免税や減税が適用される条件を把握しておくことをおすすめします。
また、土地のみを所有している場合は、マンション・アパート、駐車場・コインパーキング、トランクルームとして活用するのも1つの手段です。土地活用をご検討の方は、ぜひご相談ください。
2024/11/29
2024/11/29
2024/11/29