小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
近年、注目を集めている土地活用に賃貸併用住宅があります。賃貸併用住宅とは、自宅と賃貸住宅がある建物です。住居として利用しながら、空いている部屋を貸し出すことで家賃収入を得ることができます。
本記事では、賃貸併用住宅をローコストで建てる方法について詳しく解説しています。建築費用の相場や会社選びのポイントなども解説しているので、賃貸併用住宅を検討している方はぜひ参考にしてください。
賃貸併用住宅の建築費用は、構造によって異なります。ただし、自宅だけ、賃貸住宅だけを建てるよりも建築費用は割高になるケースが多いです。
この章では、賃貸併用住宅の価格相場と特徴を解説します。
賃貸併用住宅をローコストで建てる場合の相場は、2,000万円台と言えます。耐震や断熱の最低基準をクリアし、外観も悪くない建物をギリギリの予算で建てると、2,000万円程度になるためです。
ただし、実際には建てるエリアや大きさ、賃貸部分の割合などによって大きく変動します。また、構造によっても坪単価は異なるので、その点にも注意が必要です。
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 80〜110万円/坪 |
軽量鉄骨造 | 90〜120万円/坪 |
重量鉄骨造 | 100〜130万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 100〜130万円/坪 |
なお、「1坪=1平米×0.3025」で計算します。敷地が50坪ある場合、賃貸併用住宅の延床面積も50坪程度になるのが一般的です。
木造の「坪80万円」で延床面積が50坪の賃貸併用住宅を建てた場合、建築費は4,000万円程度になります。
賃貸併用住宅は、一般的な戸建やアパートを建てるよりも建築費が割高になりがちです。
主な理由として、賃貸部分の設備が多いことが挙げられます。賃貸併用住宅では、自宅だけでなく、賃貸の部分にもバスやトイレ、キッチンなどの住宅設備が各戸に1つずつ必要です。
また、自宅部分の仕様にお金をかける傾向があることも理由の1つです。マイホームとなるため、内装や外装、設備などにこだわる方が多くいます。
賃貸併用住宅をローコストで建築する方法として、以下の7つが挙げられます。
賃貸併用住宅は、一般的な自宅や賃貸物件を建築するよりも費用がかかってしまいます。さらに、賃貸部分が少ないので、家賃収入も少ないです。そのため、賃貸併用住宅を経営する際は、可能な限りローコストで建築するのも良いでしょう。
賃貸併用住宅をローコストで建築する場合は、賃貸戸数を減らすことが選択肢の1つとして挙げられます。賃貸戸数が増えると壁の総面積や必要な設備が増えるため、建築費が多くかかります。戸数が増えると複雑な形状になる可能性もあり、建築コストの増加につながります。
また、間取りの取り方にも注意が必要です。賃貸併用住宅には、横割りと縦割りの2パターンがあります。横割りとは、階ごとに分ける方法です。例えば、1階を賃貸住宅、2階を自宅にした場合、日当たりや眺望が良くなります。
しかし、入居者は2階以上の部屋を好む傾向があるため、1階を賃貸住宅にすると入居者が決まらないケースも多いです。また、貸主側は足音などの生活音に配慮する必要があります。反対に1階を自宅、2階を賃貸住宅にした場合、入居者が決まりやすくなります。
縦割りとは、自宅と賃貸を左右で分けたり、異なる形で設計したりする方法です。左右で分かれているため、足音などの騒音を気にする必要がなくなります。ただし、横の部屋で生活することになるので、防音性の高い壁にするなどの工夫が不可欠です。
賃貸併用住宅をローコストで建築するためには、住宅ローンを活用しましょう。アパートローンは金利が高いため、借入する際に多くの頭金が必要になります。賃貸併用住宅では、自宅部分の面積が50%以上の場合、住宅ローンの利用が可能です。
アパートローンの金利は2〜3%が一般的ですが、住宅ローンであれば1%程度で借りることができます。さらに、返済期間が長く、月々の返済額が小さくなることも大きなメリットです。アパートローンと住宅ローンを比較した場合、以下のように月々の返済額は大きく変わります。
アパートローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
金利 | 2.50% | 1% |
借入額 | 8,000万円 | 8,000万円 |
月々の返済額(25年ローン) | 358,893円 | 301,497円 |
月々の返済額(35年ローン) | 285,996円 | 225,828円 |
金利が1%低くなるだけでも、月続きの返済額は5万以上安くなります。また、25年ローンと35年ローンでは、返済負担は月10万円近く差が出てきます。
限られた土地で賃貸部分と住宅部分を確保するのは難しいため、高さのある建物にすると良いでしょう。1〜2階を賃貸住宅、3〜4階を自宅にすることで、自宅部分が50%以上となり住宅ローンも活用できます。ただし、土地によって建ぺい率や高さの制限がある場所も存在するため、土地選びも重要です。
3階以上の建物や7メートル以上の建物を建てられない規制などもあります。この場合だと、土地がある程度必要になるため、土地代や建築費用は高くなります。
賃貸部分の管理を不動産会社や管理会社に任せると、管理委託費が発生します。管理委託費は、賃料の5%程度が相場です。自分で賃貸管理を行えば、その分の費用を節約することができます。
賃貸併用住宅であれば、自分も同じ場所に住んでいるため管理もしやすいです。自宅の庭を掃除するついでに賃貸部分の玄関周りを清掃したり、クレーム対応も迅速に対応したりできます。入居者とコミュニケーションを取る機会が増えれば、信頼関係が構築され、長期入居につながる可能性もあります。
新築の戸建以外の賃貸住宅では、1戸あたりの面積が40平米以上240平米以下の場合、課税標準から1,200万円を控除できる軽減措置があります。40平米の間取りとしては、2DKもしくは1LDKです。
1Kなどの場合、賃料単価を高くできますが、その分部屋数が多くなるため設備費用がかかります。一方で、3LDKのように広い部屋はファミリー層が対象となりますが、入居者が限られてしまいます。
そのため、世帯でも単身でも入居しやすい間取り、かつ40平米以上の2DKや1LDKがおすすめです。
設備にかかる費用は、賃貸併用住宅を建てる初期費用の中でも大きな割合を占めています。そのため、ローコストで賃貸併用住宅を建てたい場合は、トイレや浴室などの設備をシンプルなグレードにすると良いです。
設備のグレードが異なるだけでも、1部屋につき100万円単位で費用が変わります。また、賃貸部分は入居者が退去した後にクリーニングや張り替えなどが必要です。グレードの高い床材やクロスを使用すると退去費を高く設定する必要があるため、入居者が決まらない可能性もあります。
アパートやマンション経営よりも部屋数が少ないため、家賃収入が少ない傾向にある賃貸併用住宅では、お金をかける箇所と抑える箇所のメリハリが非常に重要です。賃貸部分と自宅部分は別物として、コスト配分をしましょう。
建物の材料費は、総工事費の10%程度と言われており、建物の材料費を抑えることは建築費を抑えることにつながります。
建材は規格内のものを使うのがおすすめです。規格外の建材を使うと、建材メーカーで特別な加工が必要となり、結果的に材料費が高くなってしまいます。ただし規格内だからと言って、機能性が低下するわけではありません。
規格内に収めることで、高い機能性を実現できる場合もあるケースも多いです。また、規格製品の中でもグレードの低いものを選べば、さらなるコストカットにつながります。
賃貸併用住宅をローコストで建てる場合のリスクとして、以下の3つが挙げられます。
ローコストで建築することを重視しすぎると、空室や賃料下落などの問題につながる場合があります。これらのリスクを最小限に抑えるためには、しっかり対策を行うことが重要です。
グレードを下げすぎたり、安さを重視して立地を重視していなかったりする場合、入居者が決まらない空室リスクを招く恐れがあります。仮に入居者が見つかったとしても、機能性や立地が悪いのが原因となり、長く住み続けてもらえない可能性もあります。
空室や短期退去が続くと、安定した収益は得られません。機能性の高い物件にする場合は、追加でリフォームが発生する可能性が高いです。
空室リスクに対する対策方法
空室リスクを減らすためには、そのエリアに賃貸需要があるのか事前に調査することが重要です。事前調査は、不動産会社に依頼することもできます。ただし「そのエリアに詳しいか」「賃貸併用住宅を建てた実績があるか」などを確認したうえで、信頼できる会社を選ぶ必要があります。
また、グレードを下げすぎないことも有効な対策の1つです。設備や壁紙などのグレードを下げるとローコストで建築できますが、入居者の満足度が下がってしまいます。安さだけを重視せず、機能性もしっかり確保することが大切です。
空室や短期退去が続く場合、入居者を集めるために家賃を下げなければなりません。家賃を下げると、当初予定していた利回りよりも悪くなってしまうため、ローンの返済リスクが大きくなります。
賃料低下リスクに対する対策方法
賃料低下リスクを減らすためには、人気のあるアパートやマンションなどを内覧し、どのような設備が入居者にとって必要なのかを知ることが大切です。
例えば、ユニットバスは設備費用を安く抑えられるものの、別々の方がニーズは高いです。長期的に収益を安定させるためには、設備に投資することも必要になります。
ローコストで建築するために建材や設備などのグレードを落とすと、通常の注文住宅に比べて劣化が早い傾向にあります。建築費を安く抑えた分、維持費にコストがかかってしまう可能性が高いです。
老朽化リスクに対する対策方法
老朽化リスクを減らすためには、リフォームや大規模修繕にどのくらい費用が必要になるのかを事前に調べておくことが大切です。また、ローコストで建てる場合とその都度修繕する場合、どのくらい費用が異なるのか確認しましょう。
ローコストではなく普通に賃貸併用住宅を建てた方が、長期的に見るとコストがかからないケースもあります。しっかりと試算し、どちらの方がお得なのか確認しておくと良いでしょう。
ローコストで賃貸併用住宅を建てる場合、会社選びが非常に重要となります。悪質な会社に依頼してしまうと、ただ安さだけにこだわって住宅作りをする可能性があるからです。
そのため、依頼する会社を選ぶ際は、以下に挙げる4つのポイントを抑えることが大切です。
ローコスト住宅や賃貸併用住宅を建てた実績があると、安心して依頼することができます。また、ノウハウがある会社では、賃貸併営に関するアドバイスも受けられるため、今後の経営に活かすことも可能です。
ローコストで賃貸併用住宅を建築する際、欠陥住宅になってしまうことが一番のリスクです。
依頼する会社がどのようなローコスト住宅を建てているのか、実績で確認する必要があります。また、ローコスト住宅は建材の規格化や自社完結化など、さまざまな努力によって実現しています。
そのため、「なぜローコストでできるのか」など、深い部分まで探りながら会社を選ぶことが大切です。
不動産会社の中には、賃貸併用住宅の建築を得意としているところもあります。ただ家を建てるのではなく、入居者や経営の視点に立って住宅づくりの提案をしてもらえる可能性が高いです。
また、さまざまなケースに対応した実績があるため、コストカットしても問題ない部分も知っています。ローコスト化のノウハウを活かし、賃貸併用住宅を建ててもらえます。
MLINEでは、賃貸併用住宅の実績が豊富にあります。以下から、賃貸併用住宅の建設実績をご覧ください。
賃貸経営は住宅づくりだけでなく、ローンや税金なども重要です。前述した通り、アパートローンと住宅ローンの返済額は大きく異なります。また、固定資産税が毎年かかるため、税金対策の検討も欠かせません。
税理士やFPなどが在籍する不動産会社であれば、住宅づくりとお金の相談をまとめてすることができます。特に税金関係は専門的な知識が必要なため、専門家がいた方が安心です。
1社のみのプランでは偏った判断になる可能性が高いため、会社選びをする際は複数の会社に相談することが望ましいです。相場を知らないまま依頼すると、長期的に損する可能性もあります。
特に賃貸併用住宅は戸建よりも規模が大きく、建築費も割高です。そのため、相場を把握したうえで、ローコストで建築できる会社かどうか、比較検討する必要があります。
それぞれの会社の強みや弱みを比較して、自分に合った会社を選ぶことが可能です。また、複数の会社から提案を受けることで、他社の費用やプランを提示しながら、優位に交渉を進めることもできます。
今回は、ローコストで賃貸併用住宅を建てる方法や費用相場などについて詳しく解説しました。賃貸併用住宅は、自宅として利用しながら家賃収入を得ることができます。しかし、建築費が割高であることがデメリットです。
そのため、賃貸戸数を減らしたり、住宅ローンを活用したり、ローコストで建築できるよう工夫することが大切です。住宅ローンは自宅部分の面積が50%以上あれば活用できます。長期的に見ると、アパートローンより返済額を大幅に減らせるため、検討してみると良いです。
また、ローコスト住宅の施工実績やノウハウが豊富な会社に依頼することも、ローコストで賃貸併用住宅を建てるのに効果的な方法です。MLINEでは、ローコストの賃貸併用住宅を実現しています。賃貸併用住宅を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
2024/12/27
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