小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
土地活用を始める際、税金や法律、マーケティングなど、さまざまな専門的知識が必要です。土地活用に資格は不要ですが、資格を取得することで土地活用に役立つ知識を身につけられます。
そこで本記事では、土地活用に役立つ資格を10つ紹介します。土地活用の専門的知識を身につけるために、資格取得は効率の良い方法です。これから土地活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
結論から言うと、所有している土地に建物を建てることに対して、専門的な資格は必要ありません。しかし、税金や法律、マーケティングなどの知識がないと、土地活用を成功させるのは難しいです。
専門家に依頼する方法もありますが、その分費用がかかります。時間的に余裕がある場合は、資格の試験勉強を通して知識を得るのも1つの手段です。土地活用は長期的な事業になるため、入居者や事業者とトラブルに発展する可能性が十分にあります。
トラブルに発展した際に、不利にならないように、土地活用に関する知識を身につけておくことが大切です。
土地活用に必要な知識として、主に以下の3つが挙げられます。
一口に税金といっても、その種類はさまざまです。国や地方自治体から通知書が送られてくるものもあれば、自分で申告して納税しなければならない税金もあります。節税対策をしないと数百万円も損する可能性があるため、税金に関する知識は特に重要と言えます。
土地活用をする場合、固定資産税や所得税など、さまざま税金の知識が必要になります。税理士に相談するのも1つの手段ですが、基礎的な知識は身につけておかないと損する可能性もあります。土地活用をする際に、発生する税金の種類は以下のとおりです。
固定資産税
固定資産税とは、所有している土地などの不動産に対して、毎月1月1日に課税される税金のことです。1月1日時点で不動産を所有している人が納税義務者となります。固定資産税は、土地や不動産の固定資産税評価額に1.4%の税率をかけた金額です。
なお、固定資産税評価額は、3年に1度評価替えが行われます。1度決まった固定資産税は、次の評価替えまで一定の金額です。アパート経営などの土地活用を始めると、土地に対して住宅用地の特例という制度が適用されます。
この制度は所有している土地に賃貸住宅が建っている場合、アパート1戸につき200㎡までの固定資産税評価額が6分の1になります。
所得税
所得税とは、個人の所得に対して課される税金のことです。1年間の収入から所得控除や経費などを差し引いた課税所得に応じた税率をかけた金額を納税します。
都市計画税
都市計画税とは、毎月1月1日時点で市街化区域内に土地や家屋を所有している人に対して課される税金のことです。自治体の都市計画事業や土地区画整理事業のために利用されています。都市計画税の税額は固定資産税と同様、固定資産税評価額に0.3%をかけた金額です。
住宅用地の特例も適用可能で、アパート1戸につき200㎡の固定資産税評価額が3分の1になります。
地域によっては都市計画税がかからない場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
相続税
相続税とは、故人の財産を相続などによって受け継いだ場合に課される税金のことです。課税対象になる財産は、不動産や貴金属、有価証券などプラスの財産と、負債などマイナスの財産があります。
相続税には基礎控除があり、相続する財産が基礎控除額の範囲内であれば相続税の支払いは不要です。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出できます。所有している土地にアパートなどの賃貸住宅を建てれば貸家建付地となり、土地の課税評価額を20%程度下げることが可能です。さらに、小規模宅地等の特例という制度では、土地の評価額が200㎡まで50%減額になります。
贈与税
贈与税とは、個人から財産をもらったときに課される税金のことです。年間110万円以下であれば非課税となり、110万円を超えている場合は財産の金額によって税率が異なります。また、賃貸経営などの土地活用を始めると、相続税精算課税という制度を利用し、より低い税率を適用することができます。
相続税の対策として、土地活用を始める方もいます。土地活用が相続税対策として有効な理由は、主に以下の4つです。
これらを上手く活用すれば現金で相続するよりも相続税を抑えることもできるため、相続に関する基礎知識も身につけておく必要があります。
賃貸経営で土地を活用する場合、経営に関する知識が必要になります。簿記や会計、マーケティングに関する知識があると、経営が安定しやすいです。
経営の知識がないと、会計上は黒字なのに手元に現金が残らないといった事態に陥る可能性もあります。黒字倒産を避けるためにも、しっかりとキャッシュフローを把握しておくことが大切です。
土地活用に役立つ資格として、以下の9つが挙げられます。
全ての知識を身につけるのは簡単ではないため、自分に必要だと思うジャンルから資格を取得してみると良いです。
ファイナンシャルプランナーは、不動産や税金、簿記などお金に関する知識を広く持っているプロです。特に土地活用で収支計画を立てる際に役立ちます。
ファイナンシャルプランナーの資格には、国家資格のファイナンシャルプランニング技能士と、民間資格のAFP・CFPがあります。ただし、不動産に特化した資格ではないため、不動産に関する資格が欲しい場合は「宅地建物取引士」などと併せて取得するのもおすすめです。
運営団体 | 特定非営利活動法人(NPO法人)日本ファイナンシャル・プランナーズ協会 |
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試験の方法 | マーク式・記述式・口頭試問方式(級によって異なる) |
試験期間 | 学科:120分 実技:90分または60分 面接:半日(級によって異なる) |
資格の種類 | ・ファイナンシャルプランニング技能士(FP技能士):1〜3級 |
宅地建物取引士は宅建士とも呼ばれ、不動産の知識を身につけた不動産取引のプロです。試験の難易度が高く、合格するにはかなり勉強しなければなりません。その代わりに合格した際は、不動産業ができるようになるレベルまで達します。
運営団体 | 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 |
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試験の方法 | マーク式 |
試験期間 | 120分 |
資格の種類 | 宅地建物取引士 |
日商簿記検定は、会計の基礎知識を身につけられる試験です。不動産に限らず、さまざまな場面で役立ちます。比較的素人でも取得しやすい資格です。基本的な商業簿記の付け方や企業の経理関連書類を適切に処理する必要があります。
運営団体 | 東京商工会議所 |
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試験の方法 | 記述式・インターネット回答式(級による) |
試験期間 | 1級:180分 2級:90分 3級:60分 初級:40分 |
資格の種類 | 日商簿記検定:初級・1〜3級 |
土地活用プランナーは、土地活用に特化した知識を持っているプロです。資格試験に合格するだけでなく、実務経験や関連資格の登録期間が必要になるため簡単には取得できません。
運営団体 | 公益社団法人 東京共同住宅協会 |
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試験の方法 | マーク式 |
試験期間 | 60分 |
資格の種類 | 土地活用プランナー |
住宅診断士(ホームインスペクター)は、住宅の劣化状況や改修すべき箇所などを判断できるプロです。土地活用をする建物の状況を判断することができます。1年に3回試験を実施しており、合格後にJSHIに入会することで資格を取得可能です。
運営団体 | 特定非営利活動法人 日本ホームインスペクターズ協会(JSHI) |
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試験の方法 | CBT方式 |
試験期間 | 90分 |
資格の種類 | JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士) |
マンション管理士は、管理組合の運営や建物管理などの専門的知識を持っているプロです。マンション管理に関する管理者や所有者の相談に対して、助言や指導、その他援助を行うことが可能です。マンション管理に特化した内容を勉強し、資格を取得します。
運営団体 | 公益財団法人 マンション管理センター |
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試験の方法 | マーク式 |
試験期間 | 120分 |
資格の種類 | マンション管理士 |
不動産実務検定は、健全な経営を実現したい方やこれから不動産投資によって安定した将来を実現したい方向けに、不動産経営の知識を身につけられる資格です。
ライフプランニングを始め、不動産投資や満室経営、税金対策、建築、ファイナンス、土地活用コンサルティングなど、不動産経営に必要な基礎知識を勉強します。
運営団体 | 日本不動産コミュニティJ-REC |
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試験の方法 | CBT方式 |
試験期間 | 60分 |
資格の種類 | 不動産実務検定:1.2級 |
管理業務主任者は、マンション管理業務者が管理組合等に対して、管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格です。
この資格を取得するためには、マンションの管理適正化法やその他の関係法令を勉強し、建物や設備、管理組合の財務知識を身につける必要があります。
運営団体 | 一般社団法人 マンション管理業協会 |
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試験の方法 | マーク式 |
試験期間 | 120分 |
資格の種類 | 管理業務主任者 |
宅建アソシエイトとは、宅地建物取引士へのステップアップを目指す資格です。売買仲介の現地案内において、適切に対応できる知識を十分に持っていることを証明できます。
「一般社団法人 全国住宅産業協会」「公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会」「一般社団法人 不動産協会」「一般社団法人 不動産流通経営協会」の4団体と連携し、体系的な教育研修プロセスを修了した人が宅建アソシエイトになります。
運営団体 | ・一般社団法人 全国住宅産業協会 ・公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 ・一般社団法人 不動産協会 ・一般社団法人 不動産流通経営協会 |
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試験の方法 | ・初任従業者教育から始まる体系的な教育研修プロセスを構築し、全てのプロセスを修了する ・不動産キャリアパーソン講座を受講し、修了する(4団体以外の場合) |
試験期間 | なし |
資格の種類 | 宅建アソシエイト |
土地活用で役立つ資格が取れないときは、以下の方法がおすすめです。
土地活用にはさまざまな知識が必要になるため、専門家に相談するのが最も有効な手段です。プロの手を借りることで損せず、スムーズに土地活用を始められます。
土地活用を始める際、不動産会社や金融機関、税理士などさまざまなジャンルの専門家に相談すると良いです。税金や住宅ローンなどについて、適切なアドバイスをもらうことができます。
不動産会社
土地に関する内容は、まず不動産会社へ相談することをおすすめします。自分が検討している土地活用ではなく、立地や周辺状況によっては他の方法が適している場合もあるためです。
不動産会社の中には、生前対策や相続トラブルについてコンサルティングをしているところもあります。ただし、一口に不動産と言っても、種類によって特徴が異なるため、土地の規模感に応じて使い分けることが大切です。
大手不動産会社 | 土地が大きく、マンションや商業施設等による土地活用を検討している場合におすすめです。 |
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総合ハウスメーカー | 戸建て賃貸や小・中規模のアパート・マンション等での土地活用を検討している場合におすすめです。 |
工務店 | 戸建て賃貸や小・中規模のアパート・マンション等での土地活用を検討している場合におすすめです。地域のニーズをよく把握しています。 |
金融機関
土地活用でアパートやマンションなどの賃貸経営を始める場合、アパートローンで融資を受けることになるため、金融機関に相談する必要があります。普段から利用している金融機関やアパートローンに積極的な金融機関がおすすめです。また、不動産会社から提携している金融機関は、有利な金利で借りられるケースも多いです。
ファイナンシャルプランナー
土地活用を始めるには、どれくらいの初期費用がかかり、どれくらいの利益を見込めるのか収支計画を立てる必要があります。そのため、ファイナンシャルプランナーに相談するのがおすすめです。特に企業に属さない独立系のファイナンシャルプランナーは、より中立的な立場からアドバイスを受けることができます。
税理士
活用しようとしている土地が相続したものであれば、相続税対策が必要になります。また、土地を所有しているだけでも毎年税金がかかるため、どのくらいなのか想定しておくことが大切です。
土地の規模が大きいほど、対策の重要度は高くなります。ファイナンスプランナーや金融機関に相談するよりも、さらに専門的なアドバイスを受けることが可能です。
土地活用の知識を身につけるためには、資格試験以外の方法もあります。具体的には、相続の相談会やセミナーへ参加したり、専門の本を読んだりなど、独学で勉強する方法も多いです。ただし、万が一トラブルになった場合、しっかり知識が身についておらず対処できない可能性もあるため注意が必要です。
本を読む
専門の本を読むことで、体系的に勉強できます。ただし、本によっては自社に有利な内容に偏っている可能性もあるため注意が必要です。一冊の本を鵜呑みにせず、複数の本を読んだ上で総合的に判断することが大切です。
相談会やセミナーに参加する
不動産の相談会やセミナーでは、専門家からの解説を受けることができます。独学よりも重要なポイントを効率的に押さえられるのがメリットです。
インターネットで調べる
インターネットでは有益な情報だけでなく、失敗談と成功談のリアルな声を確認することもできます。よくありがちな失敗を事前に把握しておくことで、あらかじめ対策できるケースも少なくありません。ただし、インターネット上の情報が全て正しいとは限らないので、正しい情報かどうか見極めることが重要です。
今回は、土地活用で役立つ資格について詳しく解説しました。資格がなくても土地活用は始められますが、税金や法律、マーケティングなど、さまざまな専門的知識が必要になります。トラブルに対応したり、節税対策で損しないためにも最低限の知識は身につけておきましょう。
効率的に知識を身につけたい場合は、資格の取得がおすすめです。資格取得が難しい場合は、専門家に相談したり、本を読んだり、セミナーに参加したりする方法があります。MLINEでは、土地活用に関する知識やノウハウを兼ね備えています。土地活用をご検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
2024/11/29
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