小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
3階建ての賃貸併用住宅は、狭い土地を有効に使えたり2階建てよりも戸数を増やせたりといったメリットがあります。広いスペースを活かすことで、最初は賃貸併用住宅とし、将来的に二世帯住宅に転用するなど、ライフステージに応じた住み方ができることも魅力の一つです。
しかし、「住宅ローンが使えないのでは?」「階層が増えるデメリットは?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、3階建ての賃貸併用住宅のメリット・デメリットを徹底解説します。3階建ての賃貸併用住宅のおすすめの間取りや、実際に建てる際の注意点もまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
まず、3階建ての賃貸併用住宅のメリットを5つ紹介します。
3階建ての賃貸併用物件は、マイホームとしての快適性と賃貸物件としての経済性の両方のメリットを受けやすいことが魅力です。それぞれ詳しく解説します。
1つ目のメリットは、狭い土地を有効活用できることです。
狭小地でも、階層を増やすことで延床面積を広げ、自宅と賃貸スペースを増やすことができます。
例えば、床面積40坪の2階建ての賃貸併用住宅を建てる場合、1階部分には20坪のスペースが必要です。しかし、同じ床面積の3階建てなら、1階に必要なスペースは13坪で済むため、土地が狭くても床面積をしっかり確保できます。
特に都内や駅周辺など、利便性が高い地域を検討している方に大きなメリットでしょう。
狭小地に立つ賃貸併用住宅では、居室数を多く確保すると、各部屋が狭くなりますが、便利な立地であれば利便性を重視している単身者の入居を期待できることが理由です。
3階建ての賃貸併用住宅は、オーナーのプライバシーを守りやすいこともメリットです。
ワンフロアすべてを自宅にすることで、隣室に入居者がいないためプライバシーを守りやすいことが理由です。まるで平家のような感覚で住むことができるでしょう。
最上階に自宅を配置すれば、窓を開けていても入居者の視線を気にせず、快適な生活を送ることができます。
1階に自宅を設置した場合でも、入居者に自分達の生活音が伝わりにくく、入居者のいる階を階段で移動しなくてすむため、顔を合わせる機会をできるだけ減らすことが可能です。
3階建ての賃貸併用物件は入居者と適切な距離を保ちながら、快適に暮らしたい方におすすめです。
3階建ての賃貸併用住宅は、2階建てよりも戸数を増やせることが利点です。
容積率によって異なりますが、ワンフロアが増えれば、2階建てよりも2倍ほどまで戸数を増やすことができます。
賃貸戸数が増えると、安定的に家賃収入を確保できる可能性が高まります。その結果、家賃収入でローンの返済をまかなったり、場合によっては収入を得られたりする可能性もあるでしょう。
3階建ての賃貸併用住宅は、広いスペースが確保できるため、ライフステージの変化に合わせて部屋の使い方を柔軟に変更できるのが魅力です。
最初は1階を自宅として利用し、将来的に1・2階を使って二世帯住宅にすることもできます。反対に、子供が巣立ってからは自宅部分を減らし、賃貸の戸数を増やして収益性を高める方法もあります。
ライフスタイルの変化に伴って、賃貸スペースと自宅のスペースを柔軟に変えられることは大きなメリットでしょう。
風通しや日当たりの良い部屋で快適に暮らしたいと考えている場合も、3階建ての賃貸併用住宅はおすすめです。
2階建ての住宅が密集した地域では、3階建ての賃貸併用住宅にすることで、部屋に風や光を取り入れやすくなります。
都内や人気のエリアは、日当たりや風通しの良い土地は高額ですが、下階を賃貸にすることで、経済的な負担を軽減しつつ条件の良いマイホームを手にいれることができます。
続いて、3階建ての賃貸併用住宅のデメリットを3つ紹介します。
メリットが多い3階建ての賃貸併用住宅ですが、デメリットもいくつか存在します。デメリットを事前に把握したうえで検討することが大切です。
1つ目のデメリットは、階段の昇り降りが大変なことです。
特に自宅が3階にある場合、体力的な負担がかかることを十分に理解する必要があります。小さなお子様がいると、ベビーカーや買い物したものを毎日持ち運ぶことは想像以上に大変な可能性があります。また、急いでいるときや疲れているときは、階段がストレスになることもあるでしょう。
対策としては、エレベーターの設置が考えられます。ただし、エレベーターを導入するには費用がかかるうえ、固定資産税も高くなる可能性があります。
年齢や体力に応じて自宅の場所を検討することが大切です。
2つ目のデメリットは、階数で温度差が生じやすいことです。
特に、1階と3階の温度差は非常に大きくなることがあります。
暖かい空気は上昇するため、夏は3階が暑くなり、冬は1階が寒く感じられます。さらに、3階建ての最上階は日当たりが良いことがメリットである反面、非常に高温になる可能性があります。
日当たりや風通しは土地の特性に大きく影響するため、設計段階から対策することが重要です。
例えば、屋根と床下に断熱材を使用したり、窓の大きさや配置を考慮したりしましょう。また、複数ガラスの窓を採用することも効果的です。
全室空調システムを導入することで、全体の空気の流れを良くすることもできます。
3階建ての賃貸併用住宅は階数で温度差が出ることを考慮し、各階で快適に暮らせるように対策することが大切です。
3つ目のデメリットは、3階への家具の搬入が大変なことです。ベッドやタンスなどの大きな家具の搬入が難しいうえ、追加の費用がかかることもあります。
狭小地に建てた場合は、階段が狭く急なことも少なくないため、階段からの搬入ができない可能性も考えられます。そうなると、クレーン車での作業が必要ですが、住宅が密集しているエリアでは、作業車両が入れないことも少なくありません。
間取りを決める段階から、大きな家具を搬入するための導線を考慮し、窓の大きさやベランダの場所を決めることが重要です。
続いて、3階建て賃貸併用住宅の参考間取りを3つ紹介します。
3階建ての賃貸併用住宅は、間取りによって収益性や住み心地の良さが大きく変わります。ぜひ参考にしてください。
最初の実例は、当社が施工した都内に最適な賃貸併用住宅タイプのモデルハウスで、敷地面積88.9坪、建ぺい26.3坪、延床面積64.7坪の建物です。
この間取りの特徴は、豊かな空間設計がたっぷりと盛り込まれていることです。
ロフトと高い天井、大きな窓を組み合わせることで、明るく広々とした空間を演出しています。ロフト下には収納棚を設け、少ないスペースでもすっきりと暮らせる工夫を取り入れています。
また、オーナーの住居を1階に配置することで、階段の移動負担や入居者への騒音への気遣いを軽減できることも魅力です。
詳細について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
続いての事例は、敷地面積30坪未満の狭小地を活用した賃貸物件です。
1階にはテナントスペースを設けていますが、住居部分として設計することも可能です。
外壁には質感があり、汚れの目立たないタイルをセレクトすることで、メンテナンスの負担を削減しています。さらに、エントランスホールや階段手前の壁面には、石バリア、間接照明を構成し、高級感のある仕上がりにすることで、入居者を惹きつける工夫がされています。
賃貸スペースは全体的に落ち着いたグレーをチョイス。玄関には木目調のドアだけでなく、取っ手にもこだわりを入れることで、他の物件との差別化を図っています。
狭い土地でも、空間を上手に使うことで、おしゃれな賃貸併用物件を建てることができます。
詳細について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
最後の間取りは、オーナーの住居を日当たりの良い3階に配置し、1・2階を賃貸として活用した事例です。
自宅部分にはハイフォールのバルコニーや中庭を備え、広々とした開放的な空間を演出。大きな窓を設け、3階ならではの見晴らしの良いリビングスペースを実現しています。
賃貸部分では、使い勝手の良いワンルームを6戸設置。収納家具で部屋を区切れるようにすることで、単身者だけでなく、2人暮らしのニーズにも対応できるようにしています。
住人の全員が快適で便利に暮らせるような間取りです。
3階建ての賃貸併用住宅を建てる際の注意点は以下の3つです。
注意点を十分に考慮して、3階建ての賃貸併用住宅を建てることが失敗しないコツです。それぞれ解説します。
ローンの扱いを考えることは大切なポイントです。
3階建ての賃貸併用住宅を建てる場合、住宅ローンかアパートローンを組むことが一般的です。住宅ローンは金利が安く、住宅ローン控除が受けられるなどのメリットがあります。
ただ、自宅の面積が建物全体の50%以下の場合は、住宅ローンが使えないため、気を付ける必要があります。
例えば、1フロアを自宅にし、残りの2フロアを賃貸にしたいと考えている場合は、住宅ローンは適用外になるでしょう。3階建てでも住宅ローンを利用したい場合は、縦割りの間取りにしたり、2フロアを自宅や二世帯住宅にしたりするなどの方法で、自宅の総床面積を50%以上に設計する必要があります。
住宅ローンが使えなければ、事業用のアパートローンを組むことになるでしょう。
アパートローンは金利が高く、支払い期間は20年ほどと短いことが特徴です。さらに、アパート経営の経験の有無や、アパートの立地や収益性を評価基準としており、そもそも融資を受けられないということも少なくありません。
ただし、自宅部分を最小限に抑え、賃貸戸数を増やすことで、家賃収入を増やすことができる点はメリットです。ローンの返済と家賃収入が同価格になるようにプランニングをすれば、実質0円でマイホームと賃貸物件の両方が手に入ります。
収益性と支払いの両方をしっかりとシミュレーションし、バランスを考えた上でローンの扱いを慎重に考えることが大切です。
もしご自身での判断が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーや不動産などの専門家に相談しながら返済のシミュレーションを行いましょう。
建築基準法や用途地域を確認することも欠かせません。
日本全国の土地には、都市計画に基づいて用途地域が指定されています。用途地域ごとに決められている建ぺい率や容積率の範囲内で家を建てる必要があります。
条例などで3階建ての物件の建設が禁止されていることもあるため、事前の確認が欠かせません。
必ず確認しなければならないポイントは下記の通りです。
建ぺい率が高ければ1階部分を広くでき、容積率が高ければ建物全体の延床面積を広くできることがポイントです。
さらに、交通の安全性を確保するための「道路斜線制限」や、通風や日照確保を目的とした「北側斜線制限」、公共の空間に十分な陽光を確するための「日影規制」などの制限も複数あり、それぞれ建物の形や大きさに大きく関わります。
ご自身が建てたい土地には、どのような制限があるのかを事前に調べることが欠かせません。
入居者の快適性も十分に考慮することが大切です。
賃貸併用住宅を建てるのであれば、オーナーとしての視点を持つ必要があります。入居者が安定して居続けてくれれば、家賃収入を確保できますが、空室が出れば収入が得られないだけではなく、ローン返済が困難になる可能性も出てきます。
賃貸併用住宅では、オーナーとの物理的な距離が近いため、常にオーナーに見張られているようなイメージを持つ入居者も少なくありません。植栽で目隠しをしたり、自宅と賃貸のエントランスを完全に分離させ、顔を合わせにくくしたりするなどの配慮が必要でしょう。
また、トラブルの原因として最も多い騒音対策も重要です。床材に防音素材を使用したり水回りの配置を工夫したりすることで事前に対策ができます。
どのような入居者であれば快適に暮らせるのかを考えた上で間取りを作ることも大切です。例えば、小さな子供がいるオーナーの場合、単身者は子供の声や騒音をストレスに感じる可能性があります。一方、ファミリー層であればそういった状況を受け入れられやすいうえ、オーナーが近くにいることで安心を感じる可能性もあります。
3階建ての賃貸併用住宅を建てる際は、入居者の快適性も十分に考慮して間取りを考えることが大切です。
この記事では、3階建て賃貸併用住宅のメリットやデメリットについて詳しく解説しました。
3階建ての賃貸併用住宅は、マイホームとしての快適性と賃貸物件としての経済性の両方のメリットを受けやすいことが魅力です。また、ライフステージの変化に応じて柔軟に住み方を変えられることも大きな利点でしょう。
ただし、階段の昇り降りが大変だったり、階数によって温度差が出たりなど、3階建てならではのデメリットも発生するため、慎重に設計を考えることが重要です。
また、新築で賃貸併用住宅を建てる場合は、建築会社の選定も非常に重要です。
M-LINEでは、賃貸併用住宅の建設においても豊富な経験があり、賃貸併用住宅の間取りに関するご相談も積極的に受け付けています。
3階建ての賃貸併用物件にご興味のある方は、まずはお気軽にご相談ください。
2024/12/27
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