小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
家を建てるタイミングで二世帯住宅を検討している方もいるでしょう。
60坪の広さがあれば、プライバシーを保ちながら暮らせる完全分離型二世帯住宅を建てられます。ただし、費用が高額になるので、予算内に収まるよう賢く節約することが重要です。
そこで本記事では、60坪の完全分離型二世帯住宅の理想の間取りや費用を抑えるポイント、建てる際に意識しておきたいことなどを解説します。
60坪の完全分離型二世帯住宅を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
快適に暮らすうえで間取りについて考えることはとても重要です。
ここでは、60坪の完全分離型二世帯住宅の理想的な間取りを5つ紹介します。
ここで紹介する間取り例は、両世帯の希望を取り入れプライバシーにも配慮した具体的な成功例です。ぜひこれから二世帯住宅を建てる際は参考にしてみてください。
完全分離型の二世帯住宅は、両世帯のコミュニケーションが希薄になる可能性があります。そのため、ウッドデッキや庭、屋上などの共有スペースを設けた間取りが人気です。
両世帯が集まる広々としたウッドデッキを設けた完全分離型の二世帯住宅の成功例は、以下の通りです。
間取り | 2LDK+3LDK+WIC2つ+書斎+WIC2つ+ウッドデッキ |
家族構成 | 親世帯:夫婦 子世帯:夫婦+子ども2人 |
延べ床面積 | 約64坪(約211.57㎡) |
工夫されているポイント | ・両世帯が集まれるウッドデッキを設置 ・左右分離型で騒音対策 |
上記の例は、親世帯(両親)と子世帯(両親+子ども2人)の計6人が暮らす左右分離型の二世帯住宅です。親世帯は15畳のLDK、子世帯は26畳のLDKを設け、広々とした空間です。また、子世帯にはパントリーやWIC、納戸が設置され、収納力も優れています。
特徴は1階に両世帯をつなぐウッドデッキが設けられていること。両世帯のリビングからウッドデッキがよく見えるため、子供が遊んでいる姿をどこからでも見守ることができます。週末には両世帯でバーベキューや花火などを楽しめることもポイントです。
3階建てのエレベーターのある完全分離型の成功例は、以下の通りです。
間取り | LDK+4LDK+インナーガレージ+エレベーター+土間収納+バルコニー |
家族構成 | 親世帯:1人 子世帯:夫婦+子ども2人 |
延べ床面積 | 約60坪(約198.35㎡) |
工夫されているポイント | ・1階にインナーガレージを設置 ・エレベーターを設置 |
上記の例は、親世帯(1人)と子世帯(両親+子ども2人)の計5人が暮らす上下分離型の二世帯住宅です。1階に親世帯が住み、2〜3階に子世帯が住む間取りです。
特徴は1階にインナーガレージを設けていること。また、エレベーターで行き来できるので、3階建てでも楽に移動ができる作りです。1階のエレベーター前にはホールを設けることで、親世帯への騒音やプライバシーに配慮していることもポイントでしょう。
また、親世帯は1人暮らしで広いスペースが必要ないことから、個室は設けずにワンルーム仕様にしていることも特徴です。
収納を多くしすっきりと暮らしたい方におすすめなのが、屋根裏収納のある二世帯住宅です。屋根裏収納のある二世帯住宅の成功例は、以下の通りです。
間取り | 2LDK+4LDK+屋根裏収納2つ+WIC+バルコニー |
家族構成 | – |
延べ床面積 | 約60坪(約198.35㎡) |
工夫されているポイント | ・両世帯のリビングに内扉を設置 ・小屋裏収納を設置 |
上記の例は、左右分離型の二世帯住宅です。親世帯は18畳のLDK、子世帯は17畳のLDKを設けています。両世帯のリビングを隣に配置し内扉を設置することで、気軽に行き来きできる作りです。日常的に子育てを手伝ってもらう、介護が必要などの場合は内扉があると便利でしょう。
特徴は小屋裏収納を設けていること。小屋裏収納を設置し、1階と2階の収納スペースを最小限に抑えることで、リビングや個室を大きくできることがポイントです。
週末に両世帯で集まってバーベキューやプールを楽しみたいと考えている方もいるのではないでしょうか。そのような方におすすめなのが、屋上を設けた完全分離型二世帯住宅です。
間取りの成功例は、以下の通りです。
間取り | 1LDK+3LDK+小屋裏収納+屋上+団らんスポット(和室) |
家族構成 | 親世帯:1人 子世帯:夫婦+子ども3人 |
延べ床面積 | 約61坪(201.65㎡) |
工夫されているポイント | ・1階の中央に両世帯が集まれる団らんスポットを設置 ・屋上スペースを設置 |
上記の例は、親世帯(1人)と子世帯(両親+子ども3人)の計6人が暮らす上下分離型の二世帯住宅です。1階に親世帯が住み、2階に子世帯が住む間取りです。
完全分離型ではあるものの、1階の中央に両世帯が集まれる団らんスポットを設けたり、広々とした屋上を設置したりと共有スペースを多く設けていることが特徴。屋上は水が使えるため、プールやバーベキューなどを楽しめます。
また、小屋裏収納を設け収納スペースを確保していることもポイントです。
親世帯が安全に暮らせるよう、バリアフリーを検討している方もいるでしょう。バリアフリーを取り入れた完全分離型二世帯住宅の成功例は、以下の通りです。
間取り | 2LDK+4LDK+WIC2つ+バルコニー |
家族構成 | 親世帯:夫婦 子世帯:夫婦+子ども2人 |
延べ床面積 | 約60坪(198.35㎡) |
工夫されているポイント | ・バリアフリーを導入 |
上記の例は、親世帯(2人)と子世帯(両親+子ども2人)の計6人が暮らす上下分離型の3階建て二世帯住宅です。1階に親世帯が住み、2〜3階に子世帯が住む間取りです。
この間取りの特徴は、朝早い親世帯と夜遅い子世帯が快適に暮らせるよう、騒音対策を徹底していること。遮音効果のある建材を使用したり、水回りを3階に配置したりすることで、親世帯に生活音が響かないように配慮しています。
また、両親の住む1階はバリアフリーにし、長く安心して暮らせるようにしています。
ここでは、60坪の完全分離型の2世帯住宅を建てる際にかかる費用について詳しく解説します。
完全分離型の二世帯住宅は、玄関や水回りなどの設備が二世帯ぶん必要なため建築費用が高額になります。どのくらいの予算で建てられるのか気になっている方も多いでしょう。
建築にかかる総額は設備費や建物の形状によって大きく変わるので一概にはいえませんが、約3,000万〜5,400万円が目安とされています。
新築住宅を建てる際には、様々な税金の控除や補助金、給付金が利用できる可能性があります。建築費が高額になりやすい完全分離型2世帯住宅では、補助や控除をしっかりと調べて賢く活用することが重要です。
また、予算がある程度決まっている場合はハウスメーカーや工務店に予算を伝えることで、最適な二世帯住宅を提案してくれるでしょう。
60坪の完全分離型の二世帯住宅は、プライバシーを保ちながら快適に暮らせる反面、費用が高額なことがデメリット。費用を抑えるポイントをしっかりと把握し、無理のない資金計画を立てることが重要です。
60坪の完全分離型の二世帯住宅で費用を抑えるには、以下3つがポイントです。
必要のない建材や設備を省きシンプルな間取りにすることで、大幅にコストダウンすることも可能です。それぞれ詳しく解説します。
建材費用とは、木材や鉄骨、屋根材、外壁材などの建築材料にかかる費用のことです。
建材費用を抑えるポイントは複数あります。まず、建物の形状をシンプルにすることが挙げられます。たとえば、屋根のデザインには切り妻や、片流れ、寄せ棟など複数ありますが、建材費を抑えるにはシンプルな切り妻がおすすめです。また、1階と2階の床面積が同じ正方形や長方形の2階建ては、建材が少なくて済むため建材費を削減できます。
次に、建材のグレードを下げることも効果的な方法です。高価な建材は使わず、コストの低い建材を選択することで費用を効果的に抑えられます。たとえば、壁の仕上げ材料には板壁やクロス壁などがありますが、コストを抑える場合はクロス壁が有利です。壁は広い面積を占めるためクロス壁を選ぶことで大幅に費用を削減できるでしょう。
さらに、仕切りやドアの数を減らすことも建材費のコストダウンにつながります。水回りやパントリーのドアなどなくてもよい部品は、できるだけ削減しましょう。また、収納やカウンタースペースなどの造作を増やすとオプション料金が発生するので、本当に必要なものだけを選ぶことが重要です。
設備費用も建築費を抑える大きなポイントになります。
コツは、必要な設備や機能だけを選び余分なオプションを省くこと。浴室乾燥機や床暖房、食洗機などは人気のオプション設備ですが、高い追加料金を支払って取り付けたとしても実際に使う機会が少ない場合は無駄になってしまいます。
また、水回りの設備のグレードを下げることも有効な方法です。もし建築費が予算内に納まらない場合は、優先順位の低い設備や機能を省くことを検討しましょう。
建築費を抑えるうえで、間取りを工夫することも大切です。
対策方法としては、小さな個室をいくつも作るのではなく、広めの部屋を少なく配置し、必要に応じて家具などで仕切ること。理由は、個室が少ないほど壁やドアなどの建材費が少なくてすむためです。
最近は子供部屋を大きな一室にまとめ、二段ベッドや簡易的な仕切りで分ける方法も人気です。この間取りは建築費を抑えられるだけでなく、子供が巣立った後もフレキシブルに活用しやすいというメリットもあります。
また、延床面積と建築費は比例するので、不要なスペースを省き延床面積を小さくすることもポイントでしょう。加えて、本格的な和室は洋室よりも割高です。特にこだわりがなければ和室を作らないことも建築費の削減に効果的です。
費用を抑えるポイント以外にも、60坪の完全分離型の二世帯住宅を建てる際に意識しておきたい点はいくつかあります。
完全分離型の二世帯住宅で後悔しないために大切なポイントなので、ぜひ参考にしてください。
家を建てる際は、土地の建築条件を確認することが大切です。なぜなら、土地の建築条件によっては希望通りの二世帯住宅を建てられない可能性があるためです。
建築条件には大きくわけて、「建ぺい率」と「容積率」の2つがあります。「健ぺい率」とは、その土地の面積に対して建物の面積が占める割合を示したものです。もう一方の「容積率」とは、その土地に建築できる建物の延床面積を定めたものを指します。
たとえば、建ぺい率50%、容積率200%の60坪の土地の場合、建築可能なワンフロアの最大の床面積は30坪(60×0.5)です。そのため、2階建てであれば60坪(30×2)、3階建てであれば90坪(30×3)の家が建てられます。
建築条件を考えるにあたり、建物面積に含まれる内容をしっかりと理解しておくことが大切です。たとえば、柱と屋根のついたカーポートは建物面積に含まれますが、屋根のない駐車場は建物には含まれません。
他にも、外部階段やサンルーム、外壁より1m以上出たバルコニー部分などは建ぺい率に影響します。建築条件ぎりぎりで建築した場合は、後からこれからの設備を増築したいと考えても建てられない可能性があるため注意しましょう。
また、建築条件には建ぺい率と容積率以外にも、接道義務・高さ制限・セットバックなどの条件があります。検討している土地の条件を把握し、どのような家が建てられるのか専門家に相談することが大切です。
2つ目のポイントは、完全分離型以外の二世帯住宅の間取りパターンも検討することです。
完全分離型の二世帯住宅は広い土地が必要なうえ、建築コストが高額なことがデメリット。資金計画が難しい場合は無理に完全分離型にせず、一部共有型の二世帯住宅を検討することも一つの手です。
たとえば、玄関のみを共有にし、その他の設備をすべて別々にすることも可能です。プライバシーを保ちつつ、玄関に必要なドアや外階段の建材費を削減できることは大きなメリットでしょう。
3つ目のポイントは、光熱費や水道代の支払いについて事前に話し合っておくことです。
完全分離型の二世帯住宅であっても、光熱費や水道の設備を共有している場合は、二世帯分の費用がまとめて請求されます。そのため、光熱費を別々に支払うには、工事の段階で設備をわける必要があります。家が完成した後に分離すると手間や費用が余分にかかるため、事前に慎重に検討しましょう。
光熱費を分離するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・支払いが簡単 ・賃貸転用しやすい |
・設備費がかかる ・基本料金が節約できない |
分離することで支払いが簡単になったり、将来的に賃貸転用しやすかったりなどのメリットがあります。一方で、設備費や基本料金が二世帯ぶんかかる点はデメリットでしょう。
60坪の完全分離型二世帯住宅は、広々とした空間でプライバシーを保ちながら生活できることがメリットです。ただし、建築費が高くなるため、資金計画を綿密に行うことが欠かせません。
60坪の完全分離型二世帯住宅を建てる際には、本記事で紹介した間取り例や建築費用を抑えるポイントなどを参考に、両世帯が納得できる家づくりを行いましょう。
どのような間取りが適しているのか判断に悩む場合は、専門家に相談することがおすすめです。
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2024/11/29
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