賃貸経営を成功させるためには、物件の魅力だけでなく「そのエリアにどれだけ入居希望者がいるか」を見極めることが欠かせません。この需要の高さを示すものが「賃貸需要」です。
不動産投資を始める際には、自分が所有している土地や購入を検討している土地の需要を調べることで、空室リスクを減らし、安定した収益につなげることができます。
本記事では、賃貸需要の基本的な考え方や調べ方のポイントについてわかりやすく解説します。需要が高いエリアや物件の特徴についても触れているので、不動産投資を始めたい方も、すでに経営中の方も、ぜひ参考にしてください。
まずは、賃貸需要とはなにか理解を深めましょう。ここでは、以下2つの観点から、賃貸需要について解説します。
不動産経営を始めるうえで大切なポイントのため、ぜひ読み進めてください。
賃貸需要とは、不動産経営を予定しているエリアでどの程度の入居需要が見込まれるかを判断する指標です。需要が高ければ入居者を確保しやすく、安定した家賃収入が期待できます。一方で、需要が低い場合は入居者が集まらず、経営が難しくなる恐れがあります。
賃貸需要を十分に見極めずに物件を購入すると、想定以上の空室が発生し、ローン返済に追われて経営が苦しくなるリスクも否めません。土地や物件は購入後に立地を変えられないため、不動産投資で成功するには事前に需要をしっかり調査しておくことが欠かせません。
不動産経営を始める際は、賃貸需要の重要性を理解し、慎重に調査を行うことが大切です。
賃貸需要を把握することは、不動産経営の成否を左右する重要な要素です。その理由は、次の通りです。
賃貸需要を正しく把握すれば、物件選びから経営戦略まで一貫して的確な判断ができるでしょう。
なお、以下の記事では「賃貸経営とはなにか」について詳しく解説しています。マンション経営とアパート経営の違いや、賃貸経営のメリット・デメリットについても紹介しているので、併せて参考にしてみてください。
ここでは、賃貸需要の調べ方について紹介します。賃貸需要を調べる主な方法は、以下の5つです。
調べ方を理解することで、より自信を持って投資の可否やタイミングを決められるようになるでしょう。
まずは、賃貸需要に詳しい不動産会社に問い合わせをしましょう。特に地域に密着している不動産会社に問い合わせをすることで、正確な賃貸需要を教えてもらえる可能性があります。また、不動産会社に直接問い合わせることで、一般では公開されていない情報を入手できることもあります。
不動産会社によって提供している情報が異なる場合があるため、複数の会社に問い合わせることで、より正確な賃貸需要を把握しやすくなるでしょう。
不動産会社で賃貸需要について問い合わせをしたら、不動産ポータルサイトを利用して実際の賃貸物件の概要を調べましょう。「SUUMO」や「ホームズ」などの不動産ポータルサイトでは、土地があるエリアや実際に不動産を取得したいエリアの物件（家賃・築年数・設備）などを調べることが可能です。
家賃相場が高めのエリアでは、賃貸需要も高い傾向にあります。そのため、平均賃料相場を事前に把握しておくことで、平均よりも高いエリアを探すなどの物件選びの目安にしやすくなるためおすすめです。不動産ポータルサイトは誰でも簡単に検索できるので、積極的にデータを収集し分析してみましょう。
賃貸需要を調べるステップの中で、人口推移を調べることも大切です。理由として、人口が増えているエリアでは駅の利用者数も増加傾向にあり、交通の便が良いことから賃貸需要が高い傾向にあるからです。また、人口が増加傾向にあるエリアを選ぶことで、安定的な収入を期待することもできます。
人口推移については、総務省統計局のサイト「人口推計」から検索可能です。調べ方として、現在の人口だけを調べるのではなく、過去〜現在までの推移を見ることをおすすめします。これは、過去〜現在までの人口推移を見ることで、そのエリアの人口が減少傾向にあるのか増加傾向にあるのかを把握することができるためです。
次に、不動産経営で重要なポイントとなる空室率を調べましょう。特定のエリアの空室率を調べる方法としては、「渋谷 空室率」などのエリア＋空室率で検索すると簡単に把握することができます。
年間の空室率が知りたい場合は、「空室による未収入賃料÷年間総貸出賃料」という計算式で算出可能です。投資物件の収支計画を検討する場合には、この総賃料に対する空室率を参考にすることが大切です。
また、周辺に競合物件となる賃貸物件が多いと空室率が低い傾向にあります。賃貸物件がないということは、そのエリアでは賃貸需要がないと考えられるため、知りたい物件の空室率を調べると同時に周辺の賃貸物件についても空室率を把握しておくと効果的です。
空室率が高ければ、空いている家が多く賃貸需要が低いことを読み取ることができます。空室率を調べることは賃貸需要の見極めにおいて、重要なポイントとなります。
検討しているエリアが、再開発事業が行われる予定があるのか事前に確認しましょう。再開発が計画されているエリアは、街が発展する可能性があるため賃貸需要がこれから高まっていくことが見込まれるエリアになります。
街が発展するということは、人口が増加して地価が上がることも想定されます。例えば、再開発で街が整備され、大規模な複合施設なども建設されると転入人口の増加が期待されます。転入人口が増えることで物件のニーズも高まり、不動産価格や家賃の上昇を期待できます。
しかし、必ずしも実現されるわけではないため、あくまで再開発事業の「計画」であることを前提に確認するようにしてください。
賃貸需要を調べる際には、以下6つの指標を確認することが重要です。
それぞれの項目について、順に解説していきます。
賃貸需要を調べる際に最も注目すべき指標のひとつが、エリアの人口と世帯数です。
人口が多く世帯数が増加している地域では、賃貸物件への需要が高まる傾向にあります。特に人口増加率が高いエリアは、将来的に安定した入居者確保が期待できるため、投資価値が高いといえるでしょう。逆に人口減少地域では需要が低下し、空室リスクが高まる恐れがあります。
世帯数は賃貸需要のもうひとつの重要な指標です。世帯構成によって必要とされる住居タイプは異なり、単身世帯が多ければワンルームや1Kの需要が高く、子供のいる家庭が多い場合は3LDK以上の広い物件が求められます。
さらに、世帯数の増加は市場の活性化を示している可能性があります。加えて、多様なニーズを生み出す外国人世帯の増加は賃貸市場の拡大につながることがあるため、注目したい項目です。
地域の開発計画も、賃貸需要を調べる際に重要な指標です。地域の開発計画とは、特定の地域における経済、社会、環境の発展を促進するための戦略的な枠組みです。地域の開発計画があることで、地域の魅力が向上し、賃貸需要にも直接的な影響を与えることがあります。
地域の開発計画には、以下のような内容が挙げられます。
こうした開発計画を把握しておくことは、将来の賃貸需要を見極めるうえで大きな武器となります。
賃貸需要を調べる際、駅の利用者数や交通アクセスは欠かせない指標です。利用者数が多い駅は通勤や通学に便利なため、駅近の賃貸物件への需要が高まる傾向があります。
さらに、利用者数が多い駅周辺には商業施設や飲食店が集まり、生活利便性が向上することで入居希望者が増えることが期待されます。駅の利用者数が増加している地域は経済的にも活発で、将来的な発展が見込まれるため、投資価値が高まる可能性も大きいです。
交通アクセスのよさも賃貸需要に大きく影響します。複数の鉄道路線が利用できる駅は、利便性がよいことから需要が増加しやすいです。加えて、バス路線や主要道路へのアクセスが充実している地域は住みやすさが増し、賃貸市場での競争力が高まります。
将来的な交通インフラの整備計画や新駅の開設なども考慮すれば、賃貸需要の変動をより正確に予測できるでしょう。
賃貸需要を調べる際は、地域の雇用機会も重要な指標です。企業が集積している地域は働く人々の賃貸ニーズが確保できるため、長期的に安定した入居需要が見込めます。特に、企業の数や規模が拡大しているエリアは将来的な需要増加も期待できるため、投資価値が高いといえるでしょう。
同様に、大学や専門学校などの教育機関があるエリアも学生による賃貸需要が一定しているため、需要の安定性が高い傾向にあります。
地域の企業誘致や学校の新設計画を事前に調査することで、将来的な需要増加を見据えたエリア選定が可能となるでしょう。
賃貸需要を見極めるうえで、周辺環境と生活インフラは非常に重要な指標です。これらは入居者の生活の質や利便性に直接関わり、物件の魅力を大きく左右します。
例えばスーパーやコンビニ、飲食店などの商業施設が近くにあることは、単身者や若年層にとって大きな魅力となります。手軽に生活必需品を揃えられる環境は、賃貸物件の需要を高める要因です。
また、病院やクリニックへのアクセスがよいことは、ファミリー層や高齢者にとって安心感を与え、入居希望者を増やします。さらに、学校や保育園が近いエリアは子育て世帯に人気があり、ファミリー層の賃貸需要を押し上げるポイントです。
生活インフラの充実も見逃せません。駅やバス停までの距離や交通機関の整備状況は、日々の移動のしやすさに直結する重要なポイントです。さらに、地域の再開発や新たな商業施設の計画が進むエリアは将来的な発展が期待され、不動産投資の観点からも魅力的です。
賃貸需要を調べる際には、ハザードマップと安全性の確認も欠かせません。自然災害のリスクを把握することで、入居者の安全を守り、安心して住める環境を提供することができます。特に、災害の多い地域では慎重な判断が求められます。
ハザードマップを活用することで、地震保険や火災保険などの適切な保険選びにも役立てられます。リスクの高いエリアでは保険の必要性が高まるため、事前に把握しておくことが大切です。地域の防災対策やインフラ整備の進展状況を確認すれば、将来的な地域の発展や賃貸需要の変化を予測する材料にもなります。
これから不動産経営を始める方は、ハザードマップと安全性を必ず確認し、入居者の安心を最優先に考えた物件選びを心がけることが重要です。
ここからは、賃貸需要の高い物件の特徴とその対策を4つ紹介します。
賃貸需要の高さは立地だけでなく、物件そのものにも大きく左右されます。ぜひ参考にしてください。
賃貸需要が高い物件は、設備環境が充実していることが特徴です。インターネット無料、オートロック、宅配ボックスといった設備は、日常の利便性や安全性を高め、多少家賃が高くても入居希望者が集まりやすくなります。特にインターネット無料は、スマートフォンやパソコンが生活必需品となっている現代において、多くの層に訴求できる強力なポイントです。
ターゲット層の生活スタイルに合わせた設備の有無も重要です。例えば、追い焚き機能はファミリー層からの評価が高く、宅配ボックスは不在が多い単身者に喜ばれます。
対策としては、投資判断の段階で地域の入居者層を把握し、それに合った設備を備えることです。適切な設備を備えることで物件の魅力が高まり、長期的な入居確保につなげられるでしょう。
賃貸需要が高い物件は、入居者のライフスタイルや家族構成に合った間取りを備えていることが特徴です。ファミリー層が多い地域では、2LDKや3LDKといった広めの間取りが好まれます。一方、単身者や若年層が中心のエリアでは、ワンルームや1LDKといったコンパクトな間取りの方が需要を得やすく、回転率も安定しやすいです。
対策としては、投資前に地域の人口構成や入居者層を調査し、そのニーズに合う間取りを選定することが有効です。適切な間取りを提供できれば、競合との差別化が進み、安定的な経営と高い稼働率の維持が期待できます。
賃貸需要が高い物件は、日常的な管理やメンテナンスがしっかり行われているケースが多いです。壁紙や床材が清潔で傷みが少なく、水回り設備が正常に機能している物件は第一印象から好感を持たれやすく、内見時の成約率も高まります。
築年数が経っていても、定期的なメンテナンスやリフォームを行っていれば競争力を維持でき、家賃の下落を防ぐ効果も期待できます。共用部が清潔に保たれ、エレベーターや照明、防犯設備が常に良好な状態であれば、入居者は安心して暮らせると感じます。結果として退去率も下がり、長期的な収益の安定につながります。
反対に、管理が行き届いていない物件は、いくら立地や設備がよくても入居者満足度が低下しやすく、空室リスクが高まります。
対策としては、定期清掃や巡回点検を実施し、不具合や破損箇所を早急に修繕する体制を整えることが重要です。さらに、防犯カメラの点検や植栽の手入れなども、物件の印象を大きく左右します。継続的な管理体制を維持することで、安定した入居確保が可能となるでしょう。
賃貸需要が高い物件には、ペット可や趣味対応型といった差別化要素が備わっていることも特徴です。ペット可の物件は選択肢が限られているため需要が集中しやすく、長期入居につながる傾向があります。趣味対応型では、防音室付き物件やバイクガレージ付きなど、特定のニーズを満たすことで賃貸需要を獲得できる可能性が高まります。
差別化のポイントは、地域やターゲット層の特性を把握し、それに合った条件を設定することです。
例えばファミリー層が多いエリアでは、ペット可と広めの間取りを組み合わせる方法が有効です。都市部の単身者向けには、楽器演奏可や宅配ボックスの導入といった戦略が効果的でしょう。条件を魅力的にすることで、入居希望者の選択肢に入りやすくなり、安定した賃貸経営を実現しやすくなります。
なお、以下の記事では、アパート経営を検討した際に読むべきおすすめの本を紹介しています。これから賃貸経営を検討している方は、併せて参考にしてみてください。
最後に、以下4つの物件タイプ別に見る賃貸需要の特徴を紹介します。
物件タイプによってターゲットとなる層や賃貸需要の高い立地などは異なります。それぞれの特徴を理解し戦略的に運営することが、安定した入居と収益の確保につながるでしょう。
戸建て賃貸は、ファミリー層を中心に安定した需要が期待できる投資対象です。ターゲット層は30〜40代の子育て世代が中心ですが、二世帯住宅や郊外でゆとりある生活を望むシニア層にも需要があります。近年はリモートワークの普及により、広さや静かな住環境を求めるニーズも増加しています。
周辺にアパートやマンションが多いエリアでは戸建て賃貸の供給が少なく、差別化しやすいことも強みです。広い間取りや隣人トラブルの少なさから長期定住につながりやすく、将来的にも安定した入居が期待できます。
戸建て賃貸を計画する際は、シンプルで使いやすい間取りを選ぶことが重要です。家族構成の変化にも柔軟に対応できる間取りは幅広い層に受け入れられます。さらに、ファミリー層の暮らしやすさを意識した改修、駐車場の確保、最新設備の導入などの工夫により、入居期間を延ばし、長期的な収益を維持できます。
以下の記事では戸建て賃貸経営について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
アパート経営は、立地とターゲットを戦略的に設定することで、安定した賃貸需要を見込める投資手法です。駅から近く、商業施設や学校、医療機関がそろった物件は、入居希望者が集まりやすい傾向があります。交通アクセスや生活利便性の高さは、賃貸需要を左右する大きな要因といえるでしょう。
ターゲット層を明確にすることも重要です。単身者や学生、若年層を対象とする場合はワンルームタイプが適しており、ファミリー層を想定する場合は収納スペースの充実や家族構成に合わせた間取りが好まれます。こうしたニーズに沿った設備や設計を取り入れることで、賃貸需要を確保しやすくなります。
さらに、アパート経営の成功には競合との差別化が欠かせません。地域の賃貸市場を調査し、競合状況に応じた戦略を立てることが、入居者を引きつける鍵となります。
注意点としては、建物の維持管理や修繕費用を見越した収支計画を立てることです。計画的に運営しなければ、収益性を損なう可能性があります。
アパート経営の具体的なメリットやデメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてみてください。
マンション経営では、駅や商業施設、学校、医療機関などが近いエリアほど賃貸需要が高まります。特に人口増加が続く地域や再開発が進むエリアでは、需要がさらに高まりやすいといえます。反対に、人口減少が進む地域では需要の低下に注意が必要です。
ターゲットは単身者からファミリー層まで幅広く想定できます。単身者向けには1ルームや1LDK、ファミリー層向けには2LDK以上の広い間取りが人気です。また、マンションはアパートより家賃相場が高めなため、比較的経済的に余裕のある入居者が多い傾向があります。
マンション経営を成功させるには、競合物件との差別化が欠かせません。家賃設定や設備の工夫、物件の魅力を明確に打ち出すことで、入居者を引きつけやすくなるでしょう。
賃貸併用住宅は、自宅と賃貸部分を組み合わせることで安定した収益を得られる物件タイプです。駅から徒歩圏内や商業施設、学校、医療機関などが整ったエリアでは、入居希望者が集まりやすい傾向があります。
ターゲット層はマンションタイプと似ていますが、「戸建てに住みたい」という希望を持つ入居者が多いことが特徴です。単身者向けにはワンルームや1LDK、共働き夫婦やファミリーには2LDK以上の間取りが求められます。地域のターゲットに応じた間取りや設備を整えることで、安定した入居率を確保しやすくなるでしょう。
賃貸併用住宅の大きな特徴として、自宅部分が50％以上であれば住宅ローンを利用できることが挙げられます。
家賃収入でローン返済を補うことで経済的負担を軽減できることは大きな魅力です。ただし、入居者がいない場合は収入が得られず、返済負担が大きくなるリスクもあります。そのため、管理面や運営計画をしっかりと考え、専門の管理会社の活用や将来的な出口戦略も視野に入れることが、安定した収益を維持するためのポイントとなります。
不動産投資は、賃貸需要を見極めて行うことが非常に重要なポイントになります。賃貸需要を把握することで、土地活用の選定がやりやすい・建設計画が立てやすい・リスクヘッジができる・今後の予測ができるなど多くのメリットが発生します。
また、賃貸需要を見極めて土地活用を始めたい方は、ぜひMLINEへご相談ください。MLINEでは、土地のエリアによって、最適なマンション経営の方法をご要望に合わせた提案が可能です。土地活用として、マンション経営をお考えの方は一度お問合せください。
高坂 昇 ou2株式会社 専務取締役 一級建築士
小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
長張隆史 ou2株式会社 代表取締役 一級建築士 （登録番号 第328587号）
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