小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
この記事では、アパート経営で確定申告を行う際のポイントについて紹介します。
「アパート経営者が確定申告をしなければならない理由は?」
「アパート経営者が確定申告の際に必要な書類を教えて欲しい。」
など、アパート経営をしている方はこのような疑問があるのではないでしょうか。
しっかりアパート経営の際の確定申告に関する知識をつけていれば、節税にも繋がります。
ここから確定申告を行うべき理由をはじめ、効率化のポイントや、節税に役立つ控除項目まで丁寧に記載しているので、ぜひ参考にしてください。
賃貸経営者にとって確定申告は必要です。確定申告を行うべき理由は主に以下の3つになります。
順に説明していきます。
賃貸経営者にとって確定申告が必要なのは、法的に義務付けられているからです。
不動産所得は税法上の「所得区分」に該当し、家賃収入や礼金、更新料、駐車場収入などが含まれます。この収入から管理費や修繕費、固定資産税などの必要経費を差し引いた金額が所得として計算されます。年間の不動産所得が20万円を超えた場合には、確定申告が必須です。
また、給与所得以外の収入は、会社が源泉徴収を行わないため、個人で申告する必要があります。これには、税法第120条に基づく所得税の適切な算出・納付が含まれます。
不動産経営者はこの法律に従い、所得額を明確にし、申告する義務があるのです。
適切な申告を怠るとペナルティが課される可能性があるため、法令順守が求められます。
確定申告をすると、青色申告の特典があります。
青色申告を行うと、青色申告特別控除による節税効果があります。不動産所得が事業的規模と認められれば、最大65万円の控除が受けられるのです。
また、青色申告では不動産経営で赤字が出た場合、その損失を最大10年間繰り越して、未来の利益から差し引くことができます。
初期投資が大きいアパート経営では、この仕組みが重要です。予期しない修繕費などの出費が発生した場合でも、長期間にわたり税負担を軽減できます。
さらに、配偶者や家族の給与や貸倒引当金などが経費として計上可能です。例えば、回収不能となった家賃、広告費、アパート管理にかかる車両費なども対象です。
そのため、課税所得を抑え、支払う税金を減らすことができます。
賃貸経営者が確定申告を行うべき理由の3つ目は、今後の事業拡大で必要になるからです。
確定申告は単なる税務申告ではなく、事業の収支を記録するための重要な作業です。これにより、金融機関からの信頼を得やすくなり、将来的なローン申請や資金調達がスムーズになります。
また、事業を拡大する際には、収益構造や経費の内訳が不透明ではマイナスになります。
確定申告を行うことで、事業の現状を把握しやすくなり、適切な投資判断が可能になり、記録が整っていることで税務調査にも対応しやすく、結果として事業運営の信頼性が高まることでしょう。
ここでは、アパート賃貸経営で必要な確定申告の基本事項について解説していきます。
重要な項目なので、必ず目を通すようにしてください。
アパート賃貸経営で必要な確定申告の書類は以下の通りです。
どれも提出時に必要な書類なので、保管しておくことをおすすめします。
1月1日から12月31日までの期間に得た家賃収入で発生した税金は、翌年の2月16日から3月15日までが確定申告の期限です。
確定申告書の提出方法は以下の3つがあります。
管轄税務署の窓口に直接提出する方法では、必要書類を税務署担当者が確認してくれるので安心です。しかし、税務署に直接行く必要があり、混雑時には長時間待たされてしまいます。
郵送で提出する場合、税務署に出向く手間を省ける点が利点ですが、担当者の確認が受けられないため、書類に不備があると再提出または提出期限に間に合わないというリスクがあります。
e-Taxを利用したインターネット申告は、自宅から手続きができ、青色申告の特別控除が最大65万円と高い控除が受けられるのが大きな魅力です。
ただし、税務署での書類確認が受けられない点は郵送と同じです。e-Tax利用にはマイナンバーカードや税務署発行のID・パスワードが必要になります。
多忙なアパート賃貸経営において確定申告を効率的に行うことは非常に重要です。
効率的に行うには例えば以下の3つのポイントがあります。
順に説明していくので、必ず目を通すようにしてください。
アパート賃貸経営において、効率的な確定申告を行うためには、会計ソフトの活用が重要なポイントです。
「弥生 申告」や「freee 会計ソフト」、家計簿機能付きの「マネーフォワード クラウド確定申告」といった会計ソフトは、初心者でも使いやすい設計となっています。
これらの会計ソフトを使用することで、日々の収入・支出を記録するだけで帳簿を自動作成することができるため、確定申告書類の準備もスムーズに進められます。
クラウド型サービスであるため、インターネット上でデータを安全に管理し、パソコンやスマートフォンからいつでもアクセス可能なことも嬉しいポイント。
「弥生 申告」は青色申告者向けの強力なサポート機能を持ち、65万円の控除にも対応可能です。
「freee 会計ソフト」はシンプルで直感的な操作性が特徴で、税理士との連携も容易です。
「マネーフォワード クラウド確定申告」では、家計簿機能を活用しつつ、賃貸経営の資金管理が一本化できます。
アパート賃貸経営で確定申告を効率化するポイントの2つ目は、必要経費の把握と計上を行うことです。
不動産所得は、収入から必要経費を差し引いて計算されるため、経費の漏れがあると所得税や住民税の負担が増加する可能性があります。
必要経費には、固定資産税や火災保険料、修繕費、管理費、ローンの利息部分などが含まれます。これらを正確に把握し計上することで、スムーズな確定申告に繋がります。
アパート賃貸経営で確定申告を効率化するポイントの3つ目は、青色申告を活用することです。
青色申告では、最大65万円の特別控除が適用され、課税所得が大幅に抑えられるため節税効果が高いです。
また、赤字の繰り越しが可能で最大10年間繰り越せるため、収益が安定しない年でも税負担を軽減できます。
さらに青色申告では、配偶者給与や貸倒引当金など経費として認められる項目が増えるため、税金の削減に役立ちます。
アパート賃貸経営の確定申告で節税に役立つ控除項目は以下の7つです。
アパートの建築構造は法定耐用年数に影響し、減価償却できる期間が変わります。減価償却費は建築費用を耐用年数に分割して経費計上する仕組みで、所得税や住民税を軽減。鉄筋コンクリート造など耐久性の高い構造は耐用年数が長く、節税効果が長くなります。
一方、木造は短期間で経費計上可能なため、早期の節税が可能です。
複数物件を所有している場合、自分の管理会社を設立し、その会社に管理を委託するといいでしょう。
アパートの維持には修繕費が重要ですが、支出が資本的支出とみなされる場合、減価償却の対象となり経費化ができません。事業税である修繕費として計上するには、金額を小分けにするなど工夫が必要です。適切な分類により、即時の節税効果を得られるだけでなく、長期的な財務計画にも役立ちます。
通信費、交通費、水道光熱費、接待交際費などは経費できます。例えば、事務所スペースとして自宅を利用している場合、その分の光熱費や消耗品費も経費に含められます。
ただし、家事消費と混同されやすいため、領収書などをきちんと保管し、税務署に正確な申告を行うことは必要です。
アパート経営では、相続税や贈与税への対応も節税のポイントです。アパートローンは遺産総額から差し引かれるため、相続税評価額を下げることができます。
また、生前贈与を活用し、現金よりも評価額が低い不動産を贈与することで、節税効果を高められます。特例贈与財産に該当すれば、確定申告で節税に役立ちます。
最後に、アパート賃貸経営者の確定申告に関するよくある質問をまとめました。
順に回答しているので、不明点がある方は、ぜひ読んでください。
アパート経営の確定申告を税理士に依頼する場合、費用の目安は以下のようになります。
まず、税理士への相談だけを利用する場合、1回の相談料金は5,000円〜50,000円程度が相場です。基本的な申告作業を自分で行い、必要な部分だけ税理士のアドバイスを受ける形が多いです。
次に、確定申告全体を1回ごとに依頼する場合、1回あたりの費用相場は100,000円〜300,000円程度です。この場合は、申告書の作成や関連書類の整理をすべて税理士が代行します。
さらに、年間を通じて税理士に業務を依頼する顧問契約を選択する場合、年間の契約費用は200,000円〜500,000円程度が目安です。この契約では、月々の経理サポートに加え、確定申告や税務対策も一貫して対応してもらえます。
費用は、所有するアパートの規模や部屋数、経費の処理がどれほど複雑か、あるいは他の所得が絡むかによっても変動します。規模が大きいほど、業務が増えるため、費用が高くなる傾向があります。
副業禁止の会社でアパート経営を行う場合、発覚するとリスクが生じる可能性が高いので注意してください。
副業禁止の職場副業が発覚すると、給与の減額やその他のペナルティを受ける場合があります。重大な違反と判断されれば、懲戒処分に発展する可能性もあります。解雇に至るケースは少ないものの、業務に支障をきたすなど会社の規則に反すると判断されれば、厳しい措置が取られることもあるため、十分な注意が必要です。
特に公務員の場合、副業規制に違反すると、減給や停職、さらには懲戒処分を受ける可能性があります。実際に、副業が原因で処分されることもあり得ます。こうした事態は稀ではありますが、就業規則を守らない場合、なんらかの処分が避けられない可能性があることを理解しておくことが大切です。
これらのリスクを回避するためには、確定申告書の「住民税の徴収方法」を普通徴収にすることが重要です。こレは、確定申告書の第二表で行います。第一表と第二表にはそれぞれ以下の内容が記載されます。
確定申告時には、この2つをセットで提出しますが、第二表の「住民税・事業税に関する事項」の欄で「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」を選択する必要があります。「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れることで、副業収入の住民税が給与天引きではなく、自分で納付する方法を選べます。
この設定をすることで、アパート賃貸経営の副業が会社にバレるリスクを下げることができます。
アパート賃貸経営で共働きの配偶者と収入を分ける場合、それぞれの収入をどのように分けるかで、確定申告の方法が異なります。
連帯債務者としての収入分配する方法では、賃貸収入や必要経費を持分比率に応じて計算し、各自の不動産所得として確定申告を行います。例えば、持分割合が夫50%・妻50%の場合、家賃収入や修繕費などの経費もそれぞれ半分ずつ按分します。所有者が共働きである場合、この方法を用いることで、所得税の累進課税率を軽減できる可能性が高いです。
青色申告を行っている場合、賃貸経営に協力している配偶者へ「青色事業専従者給与」として給与を支払う方法があります。この給与は必要経費として認められるため、節税効果があります。配偶者が経営に従事していること、6ヶ月以上、その業務に従事していること、税務署に青色事業専従者給与に関する届出書を提出することが条件です。
収入や経費の按分が不自然である場合、税務署から指摘を受ける可能性があります。収入分配や専従者給与の設定は実態に即した形で行うことが重要です。収支記録を正確に残し、収入や経費がどちらの名義に属するのかを明確にしておく必要があります。共働き夫婦で賃貸経営を行う場合は、これらの方法を活用しながら、確定申告を行いましょう。
本記事では、確定申告を行う際のポイントや節税方法などについて解説してきました。
サラリーマンがアパート経営において確定申告をスムーズに行うためには、会計ソフトや、青色申告を活用するなどして、効率的に行う必要があります。
また、税理士に依頼するのもおすすめです。
アパート賃貸経営者で確定申告をしたい方は、M-LINEにぜひご相談ください。
M-LINEでは、これまで数多くのアパート経営者のサポートを行っており、確定申告に関しても最適なアドバイスを提供いたします。
豊富な経験と実績を持つ専門スタッフがお客様のご要望を伺った上で、最適な提案をさせていただきますので、ぜひM-LINEにお問い合わせくだい。
2024/12/27
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