小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
税金対策として効果的と言われる不動産投資ですが、具体的にどのような仕組みで節税できるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。節税の仕組みを理解することで、適切な税金を納めることにつながります。
そこで今回、不動産投資による節税の仕組みについて詳しく解説していきます。その他、節税目的で不動産投資を行う際の注意点、不動産投資がおすすめな人やしない方がいい人についても紹介していくので、参考にしてください。
不動産投資による節税できる仕組みは税金の種類によって異なり、大きく分けて「所得税・住民税」と「相続税」による節税の2つが挙げられます。
まず、「所得税・住民税」による節税の仕組みは、経費計上や損益通算で所得を減らすことで所得税と住民税を減らせます。損益通算とは、同一年分の黒字と赤字を相殺することを指します。
一方、「相続税」による節税の仕組みとしては、資産(お金)を不動産に変えることで相続税の評価額を減らすことが可能です。相続税の評価額により、相続税や贈与税が算出されます。
ただし、そもそも税金対策とは、税制上の優位性を活用して適切な税金を払うための対策であり、税金の支払い逃れをするためのものではありません。過度な税金対策は「脱税行為」と見なされることがあることを理解した上で、不動産投資を検討しましょう。
不動産投資による節税の仕組みについて理解したところで、以降の章では不動産投資でできる税金対策について解説していきます。
不動産投資で節税できる税金対策には、以下の4つが挙げられます。
不動産投資で税金対策を取ることで、上記に挙げた各税金の納付額を軽減できるというメリットがあります。
所得税と住民税は、前年の1月から12月までに得た所得に対して課税される税金です。そのため、所得が多いほど所得税や住民税の支払い金額が高くなります。
所得税の計算方法は、収入すべてに課税されるのではなく(総所得金額−所得控除)×税率が所得税です。住民税は(所得割+均等割)となっており、所得に対してかけられた「所得割」と、一定の所得がある人全てに均等して負担する「均等割」で計算されます。また、住民税は住んでいる地域によって金額が異なり、1月2日に引越しをしたとしても1月1日時点の住所が適用されます。
相続税とは、土地やお金などの財産を相続した場合に支払う税金です。財産の価値が高いほど税率も上がっていきますが、相続税の対策として土地活用をする人も多い傾向にあります。
財産を相続すると必ず相続税が発生するのではなく、亡くなられた方の葬式費用や借金を差し引いた金額が一定の額(基礎控除額)を超えた際、超えた部分に対して相続税がかかります。相続税の計算方法は非常にややこしく、まずは各相続人の課税価格から計算します。相続される土地の評価額を国税庁が定める方法をもとに計算し、そこから葬式費用や借金を差し引きましょう。
算出した課税価格から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求めます。基礎控除については「3,000万+600万×法定相続人の人数」です。この課税遺産総額を法定相続分通りに分配するため「課税遺産総額×法定相続人の法定相続分=各相続人の取得金額」を算出し、最後に取得金額に税率をかけて相続税額を求めます。
贈与税とは、個人から贈与により財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税のことを指します。個人が亡くなる前に行う「生前贈与」では、この贈与税が発生します。
よく相続税と混同されてしまいますが、個人が亡くなった後にもらう財産は「相続税」にあたり、亡くなる前と後で課税される税金の種類が異なるため注意が必要です。
贈与税の計算方法は、「(1月〜12月に受け取った財産の合計評価額−110万)×税率−控除額」です。ただし、贈与者との関係ごとに税率などの計算方法が少し異なるため、国税庁のホームページを参考にしてください。
法人税とは,法人の企業活動により得られる所得に対して発生する税のことです。課税対象は主に普通法人と協同組合で、地方公共団体などの利益を得ることを目的としていない公共法人は法人税の対象外になります。
不動産投資を法人で行う場合のみ、法人税の節税が可能です。
法人税は利益ではなく所得に対して課せられもので、「所得金額×法人税率」で算出されます。そのため、所得税のかかる内部留保の金額によって法人税が変わるため注意が必要です。
内部留保は社内留保とも言い、企業から出た最終的な利益から配当や税金を引き、内部(社内)に蓄えられた部分を指します。ほとんどの中小企業は該当しませんが、一定の法人(親族経営の会社など)の場合は、内部で貯めているお金が多いほど税率が上がることもあるため注意しましょう。
各税金の概要が分かったところで、ここからは不動産投資で節税対策ができる理由について詳しく紹介していきます。
前提として、節税の効果が大きいのは高い税金を支払ってる人と述べましたが、仕組みを理解せず不動産投資を始めてしまうと思うように節税効果が得られない場合もあります。不動産投資による節税を効果的に得るためにも、節税対策ができる理由について以下で詳しく解説します。
不動産投資は給与所得や事業所得と同じ、各所得の合計額に課税する「総合課税」の対象です。そのため、不動産所得・維持、減価償却にかかる費用を経費計上することで所得を減らすことができます。
また、不動産投資で赤字になったとしても赤字所得を本業の所得から差し引いて損益通算することができるため、結果的に節税につながります。ただし、損益通算は赤字運用の時期のみとなるため注意が必要です。
もっとも節税効果を期待できるのは、不動産の取得費を減価償却する方法です。減価償却とは、時間経過などで価値が減少していく資産の取得にかかった費用を、全額その年に計上せず耐用年数に応じて一定期間で配分する会計処理のことを指します。そのため、会計処理などの手間は増えますが、節税対策としては減価償却する方法が効果的です。
相続税・贈与税が節税できるのは、保有している資産(お金)を不動産に変えることで相続税の評価額を下げられるからです。どちらも評価額によって課税する金額が決まるため、評価額が下がることで節税につながります。
また、贈与税では不動産の購入資金を生前贈与することで、最大1,000万円まで非課税で贈与することが可能です。この制度は、住宅取得等資金贈与の特例といい、令和4年4月1日〜令和5年12月31日までの期間限定の制度となります。
法人税を節税できる理由は、法人名義で物件を取得することで、不動産維持、減価償却などの費用を経費で計上できるため所得を抑えられるからです。そのため、所得の多い方は法人化するとメリットが大きくなり高い節税効果を得られる可能性があります。
また、法人で不動産を持つことは、不動産を担保にお金を借りられるなどのメリットも期待できます。法人税の節税につながるだけでなく、融資を受けやすくなるというメリットもあるため、事業拡大を検討している法人にはおすすめです。
不動産投資は税金対策にメリットばかりのように見えますが、もちろん注意するポイントもあります。節税目的で不動産投資を行う際の注意点としては、以下の2つが挙げられます。
注意点を押さえていないと、期待していた節税効果が得られないだけでなく、思わぬコストが発生する場合もあるためしっかりと理解して行うことが大切です。
税務調査とは、法人や個人の申告に対して、申告内容が正しいか確認するために行われる調査のことです。税務調査が入る基準は明確ではありませんが、利益が極端に少ない場合や、申告内容に不審点がある場合は税務調査の対象となる可能性が高いです。
過去に不動産投資の脱税事例として以下のようなものがあります。
いずれも、不正が疑われる過去数年間分の本来支払うべき税金と、その税金に対して過少申告加算税(増差額×10〜15%)が上乗せされた数百万円の支払いが課されています。
以上のように、過度な税金対策は「脱税行為」となる場合があります。不動産投資で税金対策を検討している場合は専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
不動産投資では節税できる税金がいくつかあると紹介してきましたが、固定資産税のように毎年発生する税金もあります。発生する税金として代表的な固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している土地などの固定資産に対して支払う税金です。
固定資産税の計算は、固定資産税評価額(国土交通省が定める土地の公的価格や家屋の時価のおよそ70%)に1.4%をかけた金額になります。例えば、3,000万円の物件の場合「3,000万×0.7=2,100万」が固定資産税評価額の目安となります。この評価額に1.4%をかけた「2,100万×1.4%=29.4万」が固定資産税です。
税金対策といっても、固定資産税が発生することを理解して不動産投資を行う必要があります。
経営を始めてしばらく経つと、経費として計上できる金額が少なくなる可能性があり、結果的に支払う税金が多くなる可能性があります。例えば、不動産所得に関わる利息(修繕費や借入金)を払い終えてしまうと、節税対策として計上していた経費や税金がなくなるため今までよりも増税してしまうことがあります。
また、減価償却できなくなったタイミングも増税する可能性があるため注意が必要です。減価償却は、法定耐用年数が切れてしまうと会計処理できなくなってしまうため、節税対策を行えなくなるのです。
現時点で節税対策が行えていたとしても、増税になる可能性があるということを理解しておくことが大切です。
不動産投資による節税対策を理解したところで、この章では節税目的での不動産投資がおすすめな人の特徴を2点紹介します。
上記でも解説してきたように、節税効果を大きく得ることができるのは所得や多くの資産を保有している人です。例えば、課税所得が900万円(年収1,200万円)を超えている人は、不動産投資を行なった際のキャピタルゲイン(売却益)にかかる譲渡所得税の部分で大きな節税効果を期待できます。譲渡所得税とは、不動産投資で売却できた際の売却益に対して課せられる所得税と住民税のことを指します。
また、多くの資産(現金・土地)を保有して相続税対策が必要な人も、資産を不動産に変えることで、相続税の評価額を下げられるため相続税や贈与税の部分で節税対策が可能です。
一方、不動産投資で節税対策をしない方がいい人もいます。ただ、不動産投資をしてはいけないというわけではなく、税金対策を目的とする場合には不向きという意味です。
不動産投資で節税対策をしない方がいい人は、以下の2点です。
まず、課税所得が900万円以下の人は、900万円以上の人よりも譲渡所得税の税率の差がほぼ変わらないため、不動産投資と実際に節税できる金額が見合わないというリスクが発生します。
例えば、課税所得が900万円以下の人が3,000万円ほどの物件を購入したとしても、実際に節税できる金額は年間10万円程度です。
また、資産(現金・土地)が少ない人も相続税の評価額を思うように下げることができないため、不動産投資を節税目的とするなら向いていないでしょう。不動産投資は節税できると、やみくもに行なってリスクを負ってしまわぬよう、節税目的で検討している方は注意が必要です。
不動産投資を行う上でよくある質問は、以下の2点です。
初めて不動産投資を行う方や、これから解説する質問について少しでも疑問を持っている方はしっかりと解決しておくことが大切です。
不動産投資で税金対策する大きな理由としては、少しでも税金を抑えるためという非常にシンプルな答えになります。
日本の税金制度は累進課税制度のため、所得や財産の価値が高いほど支払う税金が多くなります。そのため、所得が多い人や多くの資産を保有している人も税金をたくさん支払ってしまうことで、手元に残る資産が思っていたよりも無いというケースは少なくありません。
このようなケースにならないためにも、少しでも税金を抑える対策として不動産投資を活用しているのです。また、不動産投資で税金対策をしている人は、節税効果が高い課税所得が900万円を超える人や多くの資産(現金・土地)を保有している人がほとんどです。
年収1,000万円の場合、「超過累進税率」が採用され支払う税金が非常に高額になるため税金対策は必須といえます。超過累進税率とは、課税対象金額の増加に応じて増加部分に順次、課せられていく高い税率のことを指します。
そのため、税金対策として不動産投資以外にもおすすめの方法があります。
NISAは少額投資非課税制度のことを指し、投資での資産運用を検討している人におすすめです。また、投資で得た利益には課税されないため節税になります。
iDeCoは個人型確定拠出年金のことを指し、支払った掛金を運用して資産形成する私的年金制度です。運用益は非課税で、運用した掛金の利益は源泉分離課税を引かれることなく再投資可能です。
ふるさと納税は応援したい地方自治体を選び、寄付をすることで控除を受けられる制度になります。寄付金2,000円以上の部分は所得税と住民税から控除でき、地域の名産品などの返礼品を受け取れる魅力的な制度です。
各種控除については、確定申告を行うことで医療費や住宅ローン、保険料などで所得控除を受けられることがあります。一定の金額を超えた場合に適用される制度のため、各種控除の中で金額が大きいものがあれば節税対策として利用すると良いでしょう。
最後に、年収1,000万円の方は、その資産を所有・管理するために個人会社を設立して税金対策するという方法もあります。これは資産管理会社とも呼ばれ、普通の会社とは違って対外的な営業活動は行わず、保有する資産の運用や管理を目的とした会社です。個人で資産を保有し続けるよりも、会社を設立したほうが節税効果を期待できるためおすすめです。
不動産投資に向いている人は、年収900万円以上の人や多くの資産(お金・土地)を保有している人が、節税対策を期待できます。さらに多く稼いでいる人にはマンション経営への投資がおすすめです。特に、一棟マンションへの投資は節税対策の効果も大きく、投資効果を自分でコントロールすることもできます。
ただし、行き過ぎた税金対策は「脱税」を疑われることもあるため、仕組みや注意点を理解しておくことが大切です。
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2024/11/29
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