小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
賃貸併用住宅は、住居スペースと賃貸エリアの両方が一つの建物にあります。
一見、とても利便性が高いように見えますが、居住スペースと賃貸エリアの分け方や収益を重視して居住性を犠牲にしてしまうリスク、せっかく工事したのに空き部屋になる危険など、さまざまな注意点があるのが賃貸併用住宅の特徴です。
こちらの記事では、賃貸併用住宅でよりよく利益回収するための利回りを重点的に解説し、算出法から利回りを高める方法、抑えるべきポイントも含めて解説いたします。ぜひ、この記事を参考に賃貸併用住宅の利回りをはじめ注意点を理解した上で検討して見てください。
一戸建て住宅に賃貸用住宅もつけたのが賃貸併用住宅になります。
賃貸併用住宅を運用する上で重要な点は、確かな利回りを見積もっておくこと。利回りというのは、投資した金額に対してどれだけのリターンがあるかを算出したものです。
簡単な例を挙げると、2,000万円の投資をして年間収益額として200万円のリターンがある場合、利回りは10%で、投資額を回収するのにかかる期間は10年になります。
単純な計算で上記の期間がかかるか理解できますが、人気のある立地であればあるほど初期投資額は高くなる可能性があり、人気がない土地は初期投資額を押さえられる傾向があるため利回りも変動します。
これによって、本来は高い人気のある立地なのに利回りが低く、人気のない土地の利回りが高くなるという現象が起きるのです。
したがって、利回りが高い物件は安い投資額から大きな利益を挙げる可能性があるハイリスクハイリターン、利回りが低い物件はお金がかかる人気の立地だが継続して居住者が出るローリスクローリターンというのがわかります。
賃貸併用住宅における利回りを具体的にどう算出するかについては以下で解説いたします。
不動産投資をするにあたり、利回りを測るのは収益の見立て面でもリスク管理において必須です。
賃貸併用住宅における利回りには表面利回りと実質利回りの2つがあります。
表面利回りとは年間の収入を投資額で割った数値のことで「年間収入÷物件取得価格=表面利回り(%)」という計算式で求められます。
この計算方法は賃貸物件にかかる費用の正確なところを考慮せず、固定資産税や修繕費用なども計算に入れていないことから計算方法としては確実性に欠けています。
代わりに利回りの表面的な数字が高くなるので、見栄えが良くなりがちです。
不動産屋などが「この立地ならこの利回りの事業がおすすめですよ」などと持ちかけるのに使いがちなのが、この表面利回りなのを覚えておきましょう。
次に実質利回りについてですが、修繕費や管理費なども計算式に入れることから、より賃貸運営の実態に即した利回りを算出できます。
実質利回りの計算式は「{(年間収入-諸経費)÷(物件価格+諸々の初経費)}×100=実質利回り(%)」。
年間収入から修繕費、管理費、委託費などのランニングコストを差し引き、物件取得価格にもそれを事業として運営させるまでにかかった備品代や工賃なども加味します。
自分がこれからやろうとしている賃貸物件の事業が成功しそうなのか、リスクとリターンの兼ね合いはどうなのかを正確に測りたい場合は、実質利回りの計算式を活用しましょう。
利回りの計算式を紹介しましたので、次は「どれくらいの利回りなら成功するか?」という相場についても確認しましょう。
賃貸併用住宅の場合、利回りの相場は約5%。中には3~4%が相場という土地もあります。
アパートやマンションの場合、利回りの相場は約5%~6%という傾向があることから、賃貸併用住宅は利回りが他の物件よりも低めです。
これは賃貸併用住宅は通常のアパートやマンションの賃貸物件と違い、賃貸併用住宅は住宅部分が利回りを低くしてしまうのが原因。
これから賃貸併用住宅による事業を始めようと考えている方は、利回りが低くなりがちな物件である賃貸併用住宅でどのようにして成功するかを考えないといけません。
賃貸併用住宅は賃貸エリアのみでなく、住宅エリアであることからも利回りが低くなってしまう傾向にあります。
ただ、コツを掴めば利回りを上げることも可能ですので、ここからはそのコツをいくつか紹介いたします。
利回りは物件運営における成功の鍵を握ると言っても過言ではありません。一つ一つの詳細を解説いたしますので、是非とも参考にしましょう。
通常のアパートやマンションを建てるの際は、基本的に不動産担保ローンやアパートローン、不動産投資ローンなどを借り入れ利用することになります。
不動産担保ローンの金利は、住宅ローンの金利に比べると高めに設定されていて、最低金利でも年約1.950%、最高金利なら年約9.900%になるものもあり、総じて高金利傾向です。
また、住宅ローンと比べるとアパートローンは20年から30年を返済期間に設定されることが多く、最長35年で借り入れすることができる住宅ローンに比べると返済期間が短めになります。
しかし、賃貸併用住宅はアパートやマンションにはないメリットがあります。
それは、住宅面積の50%以上が自宅エリアであれば住宅ローンを利用できるということです。住宅ローンは低い金利で返済期間を長く取ることができ、その上で賃貸併用住宅なら家賃収入を返済にあてることが可能になります。
ローンの返済を滞納すると物件を手放さないといけなくなりますが、低金利な住宅ローンならそのリスクを押さえられて安心できることでしょう。
加えて、さらに条件を満たすと住宅ローン控除を10年間に渡って受けることも可能になります。そちらについては次項で解説いたしますので、今は「賃貸併用住宅は住宅ローン控除も受けられる」ということだけ抑えておきます。
賃貸併用住宅の難しさに「家族が住む場所」と「居住者が住む場所」の2つの要素を居住エリアに従って満たさないといけないところにあります。
賃貸物件として運用するとしても、そこは自分や家族が住むマイホームでもあるのが賃貸併用住宅。家族の要望も反映させた敷地活用をする必要があります。
そして、賃貸エリアはその土地のニーズ、相場に合わせたものにしないといけません。
どちらの要素もしっかり力を入れ、限られた敷地を万全に活用しないとどちらの面でも後悔の残るものとなってしまいます。
限られた敷地を万全に使い切るには、能力があって信頼できるアウスメーカーに敷地活用のサポートをしてもらいましょう。
居住者と共有スペースの区切りを明確にしたり、防音する場所はどこにするかなどは、ノウハウがなければ決めることが非常に難しいものです。場合によっては賃貸物件の経営のために家族の要望を諦めてもらわないといけないこともあるでしょう。
その場合は、プロのサポートをもとに判断できれば、家族にも受け入れてもらえやすくなります。
賃貸併用住宅の運用をするにあたって「自分が居住・賃貸のどちらにどれくらい力を入れたいのか」についてよく考える必要があります。
あくまでマイホームとしての機能をメインにするのであれば居住スペースを最大にし、残った部分を賃貸に活用すると割り切るのが有効です。
それだけでもローンの返済に家賃収入をあてるなどのメリットは十分に見込むことができます。
また、賃貸物件として十分に活用する場合、住宅ローン借入条件や住宅ローン控除の条件に注意しつつもレンタブル比をできるだけ最大にするようにしましょう。
レンタブル比とは賃貸併用住宅における総床面積にて賃貸面積がどれくらいの割合を占めるのかを算出したものです。
※計算式:専有面積(賃貸可能面積)÷総床面積=レンタブル比
収益性を重視してレンタブル比を最大にし、その上で居住スペースに不安がある方もいることでしょう。
そのような方は、まず賃貸には活用しないであろう3階や屋上をルーフバルコニー、屋上テラスに活用するなどの工夫をするのがおすすめです。
レンタブル比が高ければ高いほど利回りが上がります。ハウスメーカーだけでなく家族とも相談をして、どこを切り詰めるかなどをじっくり突き詰める必要があるでしょう。
傾斜というと一見、住居には不都合に思えます。
しかし、傾斜地であることで周りに高い建物が少なく見晴らしが良い場合が多く、今後高い建物が周りに建つ可能性が低めというメリットがあります。
加えてm傾斜地は高低差が大きいことから基礎を深くしなければならず、傾斜地にある物件は地上階だけでなく地下階もあることが珍しくありません。
地下室は気温が低く防音性も高いので酷暑が厳しい夏でも比較的住みやすいのが特徴的です。
建物を建てる場合、その土地に定められた容積率の上限をクリアする必要がありますが「地盤面からの高さ1メートル以下に天井が設けられたものについては、その建築物の床面積の合計の3分の1までは、容積率の計算のもととなる延床面積に算入されない」という決まりがあります。
これにより、傾斜建設をして地下室を有効活用すると、本来よりも容積率が高い建物を建てることが可能です。
広さはそのままその物件の利回りの上昇にも繋がるので、容積率の上限の確認を忘れずに行って有効活用しましょう。
建物を建てる場合、建物を木造にするかRC造にするかを考えることになりますが、木造は安く、修繕費も押さえられる代わりに災害に弱く、白アリの危険があり、耐久性が弱く、防音性と遮音性も不安があります。
そこで、おすすめなのはRC造になります。RC造は、防音性・遮音性が高く、頑丈で減価償却期間も長く、大きな建物にするにも適しているのが特徴的です。
賃貸併用住宅の場合、今は家族の住居として使っているエリアも場合によっては貸出することになることもあります。
そのような場合、防音性や断熱性能が初めから高く、造りがしっかりして頑丈なことから大胆なリフォームにも耐えられるという、RC造りの拡張性の高さが活きてくるでしょう。
RC造りは上下の振動や音にも強いので、屋上を自分用のガーデニングテラスにしたり、ルーフバルコニーにしたりといったプライベートへの転用がしやすいのも大きなメリットです。
賃貸併用住宅となると住居と運営の区別が難しいかもしれませんが、確定申告をすることはできます。
賃貸エリアのためにかけた費用は、経費として家賃収入額から引いて申告可能です。「ローン返済額の利息分」「賃貸併用住宅にかかった保険料」「管理費」「修繕費」「広告費」「不動産会社や管理会社への接待費用」「水道光熱費」「消耗品」「減価償却費用」などを経費に入れることができます。
多くの項目を経費計上することで、所得にかかる所得税を軽減させることが可能になります。忘れずに行いましょう。
経費にできるかわからない出費がある場合は、必ず専門家に相談をして判断を仰ぎましょう。
賃貸併用住宅は住宅ローンの対象になったり、使わない部屋を居住者に貸出したりできるメリットがあります。
その一方で、賃貸併用住宅は見逃すことができない以下のようなリスクもあります。
それぞれがどのような形でリスクになるのかを参考にしましょう。
土地のニーズを読み間違えた、不測の環境の変化があった、施設にお金をかけなさすぎたなど、さまざまな理由から空室が発生することがあります。
賃貸併用住宅である以上、空き室が多くても住居として活用することができますが、入居者がいない部屋は一切の家賃収入を発生させません。
しかし、人がいないからと部屋の手入れを怠っていると急に入居希望者が来た場合に困ってしまいます。
空き室を出さないためには事前に家賃や設備のグレードがどれくらいの相場なのかを市場調査でしっかり調べ、不安な場合は専門家である不動産会社に依頼しましょう。
入居者が来ないからと部屋のグレードを下げるのは高いリスクがあります。
設備や壁紙のグレードを下げると入居者の満足度が下がり、内見希望の方もあまり良い印象を持てないリスクを抱えることになるので注意が必要です。
賃貸併用住宅は、純粋な利便性からも、住居スペースと賃貸エリアの割合は前者の方が多くなる傾向にあります。
それは、賃貸併用住宅は住居と賃貸を縦割りか横割りで分けるからです。
つまり、一見土地を効率よく使う方法にも見える賃貸併用住宅ですが、住居スペースを大きくすれば賃貸エリアも大きくなりますし、その逆も同じということになります。住居スペースを小さくしようとすると、今度は賃貸エリアも同じく小さくなります。
そうなると収益性が下がり、利回りが低くなってしまうでしょう。
周りが賃貸エリアの中に居住スペースを置くということもできますが、そうなると入居者との距離感が近くなりすぎ、プライバシーがなくなってしまうデメリットが発生することもあるので注意が必要です。
住居スペースと賃貸エリアは前者を優先すると後者が犠牲になり、後者を優先すると前者の満足度が下がってしまうのが賃貸併用住宅の難しさです。どちらをどれだけ優先するのかを意識しましょう。
通常のアパートやマンションの場合は、大家さんは別の建物に住んでいることが多いです。
ですが、賃貸併用住宅の場合は入居者と大家家族は同じ屋根の下で生活します。
入居者との相性が悪いことがありえますし、入居者が毎晩友だちを呼んで夜遅くまで騒いでしまうということもあります。ごみ捨てにルーズな場合は近隣住民も巻き込んだトラブルに発展するという可能性も否定できません。
そして、入居者が無断でペットを飼ってしまうと、退去後に壁紙の修繕から大規模工事をする必要が出てきます。
また、賃貸併用住宅での入居者とのトラブルというのは、大家側から入居者に対してのみ出てくるわけではなく逆もあります。
「聞いていた話と違う」「こんなはずじゃなかった」「騙された」と考えた入居者が大家さんに対して不信感や不満感を持ち、場合によっては訴訟を起こすということもあるかもしれません。
そういった状況にならないのに重要なのが、しっかり入居審査することと、事前に賃貸借契約書にて「入居した際の禁止事項」を事細かに説明することです。
お互いの合意形成をしっかりしておけば、入居者との距離が近いことは信頼関係の構築の上でプラスに繋がります。
賃貸併用住宅は条件を満たせば住宅ローンの借り入れができることは紹介しましたが、住宅ローン控除はあくまで「居住スペース」に限定されるということを覚えておきましょう。
住宅ローン控除条件は以下の通りです。
以上の条件を満たせば、住宅ローン控除の対象になります。
住宅ローン控除の対象になると「住宅ローンの借入金残高」か「住宅取得対価」のどちらか少ない方の金額1%が、所得税から10年間に渡って控除されます。
ただし、総面積の50%以上が居住スペースで、借入金残高が6,000万円である場合、住宅ローン控除の対象額は半分の3,000万円ということになるので覚えておくのがおすすめです。
賃貸併用住宅は住宅と賃貸物件が融合した、自由度が高いようで非常に扱いが難しい物件です。
利回りをどのようにして高くするか、利回りを高くするために居住スペースをどれだけ犠牲にできるか、プライバシー確保と防音のために力を入れて工事すべきはどこかなど、一人では気づきにくいところがたくさんあります。
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2024/12/27
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