小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
副業を検討しているサラリーマンの中には、マンション経営が気になっている方も多いのではないでしょうか。「サラリーマンでもマンション経営はできるの?」「サラリーマンのマンション経営は副業におすすめ?」と気になりますよね。
結論から述べると、マンション経営には自由な時間を確保しつつ収入を増やせることや、節税効果を得られることなど、さまざまなメリットがあります。しかし、注意点もあるため慎重に取り組むことが大切です。
本記事では、サラリーマンがマンション経営を副業にするメリットやポイントをわかりやすく解説します。マンション経営に関するよくある質問もまとめました。ぜひお役立てください。
サラリーマンがマンション経営を行う場合、税法上は「副業」ではなく「不動産所得」として扱われます。基本的にはマンション経営は投資の一種であり、副業という法的な扱いにはなりません。
ただし、規模が大きくなると取扱いが変わるため注意が必要です。国税庁では、アパートで10室以上、または独立した家屋を5棟以上貸している場合を「事業としての不動産貸付け」とみなす基準の目安としています。この場合、青色申告の特別控除や事業税の課税に影響があります。
一方で「年間500万円以上の賃貸収入」という基準は国家公務員の兼業規制における承認要件であり、一般の会社員に一律で当てはまるものではありません。
そのため会社員がマンション経営を始める際は、まず勤め先の就業規則を確認することが重要です。副業禁止の規定がある場合、それを無視すると懲戒処分の対象となる恐れがあります。
近年は政府が副業を推進していることもあり、副業を認める企業も増えています。本業に支障が出ない範囲であれば問題視されないケースも少なくありません。不安がある場合は、自己判断せず会社に相談しておくと安心です。
出典:事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁
サラリーマンがマンション経営をする主なメリットは、以下の3つです。
具体的なメリットを把握することで、マンション経営を始めるかどうかの判断がしやすくなります。ぜひご確認ください。
サラリーマンがマンション経営をする最大のメリットは、収入の柱が増えることです。
マンション経営がうまくいけば、本業以上の収入が得られる可能性もあります。定年後も一定の収入を得ながら安定した生活を送ることが可能でしょう。
また、マンション経営は、実際に労働していなくても賃貸料が収入として得られる不労所得に近いことが魅力です。副業のなかには実働しなければ収入が得られないものも多くありますが、マンション経営は管理会社に業務を委託すればほとんど手間がかからず、時間や労力をかけずに追加収入を得られます。
さらに、収入の柱が増えることでリスクが分散される点もメリットです。仮に健康上や精神的な理由で本業を続けられなくなったとしても、マンション経営によって安定した収入を得られる可能性があります。本業以外の収入源を持つことで、金銭的にも精神的にもゆとりのある生活を送りやすくなるでしょう。
サラリーマンがマンション経営をする2つ目のメリットは、節税対策になることです。
マンション経営が節税対策になる理由は、「損益通算制度」が適用されることにあります。損益通算制度とは、投資や事業において生じた損失と利益を相殺して計算し、最終的な課税対象所得を算定する制度です。
例えば、課税所得が1,000万円のサラリーマンがマンション経営で500万円の赤字を出した場合、損益通算が適用されることで課税所得は500万円(1,000万円-500万円)となります。
この500万円を基準に所得税や住民税が計算されるため、本来1,000万円で計算される場合よりも税額を抑えることができます。つまり、マンション経営の損失を活用することで、本業の給与から引かれる税金を減らすことが可能になるのです。
ただし、マンション経営する目的が収入アップの場合は、収益を増やすことが重要なので、節税効果は副次的なメリットとして捉えるようにしましょう。
また、マンション経営をすることは相続税対策にも効果的です。将来、資産を子どもや孫に相続したいと考えている場合、現金をマンションに換えて相続することで相続税を抑えられる可能性があります。現金はそのまま時価で評価される一方、不動産であるマンションは実際の取引価格より低い額で評価されることが多いためです。
サラリーマンがマンション経営する3つ目の利点は、生命保険代わりになることです。このメリットの背景には、マンションを購入するための融資を受ける際に加入する「団体信用生命保険(団信)」が関係しています。
団信とは、ローン契約者が死亡または高度障害になった場合、保険会社が代わりに残債を支払う仕組みのことです。ローンの残高がなくなるため、残された家族に資産のみを遺せます。言い換えれば、生命保険と同じような効果を得られるのです。
家族はマンションのローンを返済する必要がなく、家賃収入だけを受けとれるため、大黒柱を失った後も安定した収入を得られます。状況によっては、物件を売却してまとまった資金を受け取ることも可能でしょう。
団信には「がん保障付団信」「全疾病保障付団信」「三大疾病保障付団信」など様々なバリエーションがあるので、金利を考慮しながら比較検討しましょう。
ここからは、サラリーマンがマンション経営を始める具体的な手順を紹介していきます。
正しいステップを踏むことで、リスクを抑えながら安定した運用が可能になるでしょう。ぜひ参考にしてください。
最初のステップは、自己資金を十分に準備することです。自己資金が多いほど借入額を抑えられるため、返済負担が軽くなり経営の安定性が向上します。
自己資金額は、物件価格の10〜30%程度を目安に準備するのが理想です。例えば1億円の物件であれば、1000万〜3000万円程度の自己資金を準備すると良いでしょう。内訳としては、物件価格の10〜20%を頭金に充て、登記費用や仲介手数料、火災保険料などの諸費用には物件価格の5〜10%程度を見込むのが一般的です。
以下の記事ではマンション経営の初期費用について紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
2つ目のステップは、情報収集と収支シミュレーションをしっかり行うことです。このステップを踏むことで、適切な物件選びや経営戦略の策定が可能になり、リスクを抑えた運用に大きく近づけます。
情報収集では、投資を検討している地域や物件の特性、市場動向を把握しましょう。地域の人口動態や経済状況、将来の発展性を調べることで、空室リスクを低減できる物件を選びやすくなります。
収支シミュレーションでは、家賃収入を現実的に見積もり、管理費や固定資産税、修繕費、保険料などの支出を正確に算出します。その結果をもとに、表面利回りと実質利回りを計算し、物件の収益性を評価しましょう。専用のシミュレーションツールやエクセルを活用すると、様々なシナリオを試算でき、リスクをより具体的に把握できます。
以下の記事では不動産投資の利回りや計算方法について詳しく紹介しています。ぜひ収支シミュレーションを行う際にお役立てください。
次のステップは、物件の購入申込とローン審査です。購入物件を決めたら、不動産会社を通じて買付申込書を売主に提出します。
書類には物件情報や買付希望金額、支払方法、手付金の額を記入します。融資が成立しなかった場合に契約をキャンセルできる「融資特約」を付けることで、リスクを軽減することが可能です。
その後、金融機関でローンの事前審査を受け、通過すれば本審査に進みます。本審査では事業収支計画表や物件評価書などが求められるため、しっかりと準備しましょう。融資が確定したら、ローン契約と抵当権設定契約を結び、融資が実行されることで物件購入が正式に完了します。
正式に物件の購入が決定したら、管理会社の選定に進みましょう。管理会社は入居者管理、建物管理、資金管理など日々の運営を幅広く担当するため、信頼できる会社を選ぶことが重要です。
管理会社を選ぶ際は複数社から見積もりを取り、サービス内容や料金などを比較検討しましょう。過去の入居率やトラブル対応の実績、地域の賃貸市場に対する知識の豊富さなども確認すると、管理会社の信頼性を判断しやすくなります。
さらに、担当者とのコミュニケーションの取りやすさや、迅速な対応が期待できるかも重要なポイントです。可能であれば管理会社が管理している物件を実際に訪問し、管理状況を確認するのもおすすめです。
最後のステップは運用の開始と家賃収入に伴う確定申告を行うことです。
運用においては、入居者募集・家賃徴収・物件の維持管理が基本となります。入居者募集は管理会社を通して内覧や契約手続きを行い、審査を経て入居者を決定します。家賃は定期的に徴収し、滞納が発生した際の対応策もあらかじめ用意しておくことが大切です。
また、共用部分の清掃や設備点検、修繕といった維持管理も欠かせません。
さらに、確定申告も避けて通れない重要なステップです。マンション経営で得た家賃収入は「不動産所得」として扱われ、一定の条件を満たす場合には申告が必要になります。
以下の記事では、マンションオーナーの確定申告について詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。
サラリーマンがマンション経営を行う際は、本業を持ちながらも経営の安定性を意識することが重要です。特に以下の3つの項目に注意することが成功の鍵となります。
順に解説していきます。
マンション経営では、空室リスクに備えることが欠かせません。空室リスクとは、所有する物件に入居者がいないことで家賃収入が得られなくなるリスクです。空室が発生すると、家賃収入の減少、資産価値の低下、管理コストの増加など、さまざまな影響を受けます。
空室が発生する主な原因は、立地や周辺環境の不利、競合物件の増加、物件の老朽化などです。対策としては、以下の方法が有効です。
マンション経営を行う際は空室リスクを理解し、適切な対策を講じましょう。
以下の記事では、アパート経営で空室が増える原因や対策を詳しく紹介しています。マンション経営にも応用できる内容ですので、ぜひ参考にしてください。
ローンを利用してマンションを購入する場合、金利上昇リスクにも注意が必要です。金利上昇リスクとは、借入金利が上がることでローン返済額が増え、経営収支が悪化するリスクを指します。特に変動金利を利用している場合、家賃収入だけでは返済が賄えず、赤字に転落するリスクがあります。
対策としては、以下の方法が有効です。
事前に金利変動の影響を想定しておくことで、マンション経営の安定性を維持できます。
マンション経営では、修繕費や建物の老朽化を見込んだ計画を立てることが重要です。
修繕費には、設備の修理や部屋の改修といった小規模修繕と、外壁塗装や屋根修理などの大規模修繕があります。毎月の修繕積立金を通じて計画的に資金を準備しておけば、突発的な出費を抑え、経営の安定性を維持できます。
老朽化による資産価値の低下や費用の増大に備えるためにも、長期的な資金計画を整えておくことが欠かせません。
対策としては、定期的な点検やメンテナンスで早期に問題を発見すること、長期的な修繕計画を策定して必要な費用を見込むこと、専門家に相談して適切な修繕計画を立てることが有効です。
続いて、サラリーマンがマンション経営をする際のポイントを3つ紹介します。
これらのポイントに留意することがマンション経営を成功させる鍵です。それぞれ解説します。
需要のあるマンションを見極めることは、安定した経営をするうえでとても重要です。
ポイントは、ターゲット層をしっかりと絞り込み、ターゲットに合った立地や物件タイプを選定することです。例えば、最近は単身者が増加していることからシングル用のマンションの需要が高まっています。都心へのアクセスが良く、利便性の高いエリアであれば入居者が安定して長期間住んでくれる可能性も高まります。
マンションを選ぶ際は購入費用だけではなく、マンションの需要を見極め、将来的な収入を予測することが重要です。
どのようなマンションに需要が集まっているかを自分で判断することが難しい場合は、専門家に相談すると良いでしょう。地域の不動産市場の動向や将来性などについてアドバイスをもらえる可能性があります。
サラリーマンがマンション経営を始める際には、無理のない資金計画を立てることが欠かせません。計画をあまく見積もってしまうと、返済が経営を圧迫し、最悪の場合は行き詰まる可能性があります。
特に重要なのが、収支シミュレーションです。家賃収入から税金や管理費、修繕費などを差し引いた上で、実際にどの程度の利益が残るのかを計算します。その際、空室や家賃の下落、金利の上昇といった不測の事態も想定し、余裕を持たせた計画にしておくことが大切です。
併せて、融資条件の確認も欠かせません。サラリーマンは安定した給与があるため比較的融資を受けやすい立場ですが、すでに住宅ローンを利用している場合は条件が厳しくなることもあります。金融機関ごとの審査基準や借入上限を事前に把握し、複数の選択肢を比較することで、より有利な条件を見つけやすくなるでしょう。
このように、収支シミュレーションと融資条件の確認を徹底することが、無理のない資金計画につながります。しっかり準備を整えておけば、サラリーマンでも安定したマンション経営を続けやすくなるでしょう。
マンション経営をスタートする際は、出口戦略を考えて進めることが欠かせません。
出口戦略とは、将来的にマンションをどのように扱うかを考えることです。つまり、長期的に賃貸で運用し続けるか、それとも売却するかなど、経営をどのように終えるかを考慮することです。
入居者がいる限りは安定した家賃収入を得られますが、マンションの築年数が古くなれば修繕費がかかったり、入居率が下がったりする可能性が高くなります。そうなれば、いつまでも安定した家賃収入を確保できる保証はありません。
また、賃貸用のマンションを売却する場合は、満室状態であれば資産価値が高く、収益面でも高評価を得やすいため、買い手を見つけやすいでしょう。逆に、空室率が高いと次の買主が金融機関からの融資を受けにくくなるため、売却が難航する可能性があります。
このように、マンションの将来性を考慮し、売却を含む出口戦略を事前に考えておくことは、マンション経営を成功させるうえで必要不可欠です。
マンション経営のより詳しいポイントを知りたい方は、ぜひM-LINEにご相談ください。M-LINEでは、土地の有効活用方法のご提案から、税金・固定資産税に関するお悩みの解決、マンションの代行賃貸管理まで幅広くサポートしています。
最後に、サラリーマンのマンション経営に関するよくある4つの質問に回答します。
サラリーマンのマンション経営に関してより深く理解するためにも、ぜひチェックしてみてください。
マンション経営ができるか否かは、主にマンションを購入するための融資が受けられるかどうかに大きく影響します。
融資を受ける際に必要な年収は、金融機関や申込者の属性によって異なりますが、一般的な目安として500万円以上あると望ましいです。また、年収が高いほど、融資を受けられる可能性が高まります。
なお、金融機関のなかには、年収の審査基準を300万円以上に設定しているところもあるため、複数の機関を比較することが大切です。
マンションを購入する際に適用されるアパートローンは、年収の10倍以上の融資を受けることも可能なため、審査に通れば、年収に関わらずマンション経営を始めることは可能でしょう。
サラリーマンでマンション経営に向いている人の特徴は以下の通りです。
マンション経営に向いている方は、資金と時間に余裕があり、将来の安定収入を確保したい方です。マンション経営は一度軌道に乗れば長期的に安定した収入を得られ、相続税や所得税の節税効果も期待できます。さらに、団体信用生命保険(団信)に加入すれば、生命保険代わりとしてのメリットもあります。
ただし、マンション経営にはリスクも伴うため、慎重な検討が必要です。
サラリーマンの借入可能額は金融機関の審査基準によって異なりますが、主に以下の4つが借入可能額に影響するポイントとして挙げられます。
借入可能額は、本人の返済能力やマンションの収益性などから総合的に判断されます。具体的にいくらまで借りられるかは複数の金融機関に確認すると良いでしょう。
マンション経営をする際にかかる手間は複数あります。
例えば、テナントの管理や入居者の契約手続き、家賃滞納やトラブル対応などが挙げられます。ほかにも、水回りのトラブルがおきたら早急に業者を手配する必要があるでしょう。地震や火事などの災害時には柔軟な対応が求められます。
さらに、毎年の確定申告も欠かせない作業です。本業と並行するのが難しい場合は管理会社に業務を委託したり、税理士に任せたりすることで、手間を大幅に削減できるでしょう。
サラリーマンがマンション経営を副業にすることで、将来的に安定した収入を得られたり、節税対策になったりと多くのメリットがあります。サラリーマンは本業があるため融資が通りやすく、マンション経営を始めやすいことも利点です。
ただし、マンション経営には注意が必要な点もあります。この記事で紹介したポイントを押さえ、慎重に検討することが大切です。
自己判断が難しい場合は、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。例えばM-LINEでは、サラリーマンのマンション経営の相談も承っており、土地や環境に合ったプランの提案やサブリースなども行っています。マンション経営を成功させたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。
2025/08/28
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