小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
二世帯住宅は、設計や間取りを工夫することで、ライフステージに合わせて親族と暮らしたり、将来的に賃貸物件として活用したりすることができます。しかし、「収益性はどうか」「住宅ローンは利用できるのか」と気になる方も多いでしょう。
賃貸併用住宅は、設計次第で住宅ローンの利用が可能です。また、最初は二世帯住宅として住み、将来的に賃貸併用住宅に切り替えるなど、柔軟に活用することもできます。
本記事では、賃貸併用の二世帯住宅のメリット・デメリットや建てる際のポイントをわかりやすく解説します。さらに、3つの二世帯住宅タイプの特徴や将来賃貸として活用できるかについても紹介しているので、興味がある方はぜひご覧ください。
賃貸併用の二世帯住宅を建てるメリットは、以下の3つが挙げられます。
賃貸併用の二世帯住宅は、ライフステージに合わせて使い方を変更したり、住宅ローンの支払いを軽減できたりメリットが大きいです。ただし、仕組みを理解していないと損する場合もあるため、しっかりと理由について確認しておきましょう
賃貸併用の二世帯住宅を建てると、子供や兄弟などの親族と将来二世帯住宅で暮らせるのがメリットです。空いた世帯分は、賃貸としたり自分の家族と暮らしたりと柔軟に対応できるからです。
例えば、親族が住まない間は一世帯分の間取りを貸し出して家賃収入を得て、空室になったら家族が住むという選択肢が増えます。
今は元気でも将来介護が必要になった際に、同居できる環境に備えられます。また、家族に子供が生まれた際に親の助けが必要になり、同居する場合も多いです。
また、二世帯住宅に二世帯の家族が暮らしている場合でも、子どもが独立した際などに一世帯分を賃貸に出すという選択肢もあります。このように、賃貸併用の二世帯住宅はライフステージに合わせて柔軟に活用できる点が大きなメリットです。
【二世帯住宅に家族と住むメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・家事や子育てに協力的になる ・介護が楽になる ・親族が近いので安心感がある ・生活費を節約することができる |
・プライバシーがなくなる可能性がある ・親族が近いことでストレスになる場合もある |
賃貸併用の二世帯住宅は、住宅ローンの負担を軽減できる点も大きなメリットです。これは、賃貸部分から得られる家賃収入をローン返済に充てられるためです。
家賃収入でローン返済や管理費、税金、空室時のための積立金などの諸経費をカバーできれば、自宅部分のローン返済や貯蓄に充てることもできます。住む人にとって快適な住宅を設計すると同時に、収支バランスを考慮した適正な家賃設定を行うことが大切です。
賃貸併用の二世帯住宅は、相続税が減額されるメリットがあります。なぜなら、小規模宅地の適用が受けられるためです。
対象 | 要件 | 限度面積 | 減額される割合 |
---|---|---|---|
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 | 特定居住用宅地等に該当する宅地等 | 330㎡ | 80% |
被相続人等の貸付事業用の宅地等 | 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 | 200㎡ | 50% |
出典:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例|国税庁
上記のように、小規模宅地の特例では、賃貸併用の二世帯住宅の居住部分(330㎡が限度)の相続税評価額を80%減らせます。また、賃貸住宅部分(200㎡が限度)も貸付建付地として評価額を50%減らせるのがメリットです。
ただし、相続する住宅に二世帯で同居する場合は、2戸の住宅として登記を行うと同居とはみなされないため注意が必要です。二世帯住宅を共有登記とすることで小規模宅地の特例が使えるようになります。
小規模宅地の特例の適用条件は個人で判断するのは難しいため、ハウスメーカーや税理士など専門家に相談してみましょう。
以下の記事では、二世帯住宅のメリットについて詳しく紹介しています。二世帯住宅の税金の優遇措置についても解説しているので併せて参考にしてみてください。
賃貸併用の二世帯住宅を建てる際のデメリットは、以下の3つが挙げられます。
賃貸併用の二世帯住宅のデメリットも理解し、納得のいく家づくりを行いましょう。
賃貸併用の二世帯住宅は、プライバシーがなくなる可能性がある点がデメリットです。なぜなら、自宅と賃貸物件または親族の住宅が併設されているため、常に隣の部屋や二階などに人がいる状況になるからです。
壁や床で完全に区切られていても、同じ建物内に人がいると話し声や足音が聞こえることがあります。そのため、騒音が苦手で静かな環境を重視する方には、賃貸併用の二世帯住宅はあまり向いていません。
ただし、壁やドアに防音・遮音素材を使用したり、間取りを工夫したりすることで、ある程度プライバシーを確保することは可能です。
賃貸併用の二世帯住宅は、売却しにくいのも難点です。なぜなら、買い手が「賃貸併用の二世帯住宅が欲しい人」に限られてしまうからです。
例えば、一般的な住宅を求める人と二世帯住宅を求める人の需要を比べると、一般的な戸建てを希望する人のほうが多い傾向にあります。
賃貸併用の二世帯住宅は、売却を考えるよりも、しっかりと計画を立てて長く安定して賃貸経営をしていくことが大切です。その土地のニーズ、魅力的な付加価値などを付け、空室率を極力下げるように工夫しましょう。
賃貸併用の二世帯住宅には、管理コストがかかることもデメリットです。管理コストを軽視すると、将来的にトラブルや予期せぬ出費が発生する可能性があるため注意しましょう。
賃貸部分では、固定資産税や都市計画税、修繕費、保険料などの維持管理費用がかかります。これらは賃貸収入から差し引かれるため、収益性に影響する可能性があります。また、自分で管理せずに管理会社に委託する場合は、家賃の5%程度の管理費用が発生する点も理解しておきましょう。
賃貸併用住宅にかかる管理コストをあらかじめ把握し、収入と支出のバランスを考えて計画を立てることが、安定した運用には欠かせません。
賃貸併用住宅として二世帯住宅を検討しているものの、活用方法に不安を感じている方は、専門知識を持つM-LINEにご相談ください。M-LINEでは、賃貸併用住宅や二世帯住宅の建築はもちろん、賃貸経営、税金対策、固定資産税に関するお悩みなどをトータルでサポートしています。
二世帯住宅には主に3つの種類があります。まずは、3つのタイプのメリット・デメリットをみていきましょう。
タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
完全分離型 |
・賃貸併用住宅にできる ・ある程度のプライバシーが守られて快適に暮らせる ・光熱費などを世帯ごとに分けられる ・生活音が気になりにくい |
・建築費用が高額になる ・土地の広さも必要になる |
完全共有型 |
・子どもの世話など協力してもらいやすい ・家事や介護がしやすい ・建築費用が抑えられる ・家族間でコミュニケーションが取りやすい |
・プライバシーの確保が難しい ・賃貸併用住宅にはできない ・光熱費などの支払いを分けにくい ・共有部分の使い方でストレスを感じる場合もある |
一部共有型 | ・完全分離型より建築コストを抑えてある程度のプライベート空間を確保できる |
・賃貸併用住宅にするのは難しい ・共有部分の使い方でストレスを感じる場合もある ・ある程度の土地の広さが必要 |
上記3つのタイプのなかで、賃貸併用の二世帯住宅に最も適しているのは完全分離型です。ここでは、3つのタイプの特徴や、賃貸併用にできるかどうかについて詳しく紹介していきます。
完全分離型の二世帯住宅は、玄関・キッチン・浴室・トイレなどをすべて世帯ごとに分け、独立した住まいとして成り立つタイプです。互いの生活空間が交わらず、プライバシーを守りやすいのが特徴です。
このような完全分離型は、賃貸併用住宅として特におすすめです。各世帯の生活空間が完全に分かれているため、入居者と共有するスペースがなく、プライベートをしっかり確保できる点が大きな理由です。また将来的に一世帯で住む場合でも、簡単なリフォームだけで賃貸併用住宅に転用できる柔軟性があります。
ただし、賃貸用の駐車場や独立した間取りを整えるには、十分な土地の広さと建築費用が必要です。
完全共有型の二世帯住宅は、玄関・キッチン・浴室・リビングなどを共用し、寝室など一部だけを分けるタイプです。生活空間の多くを共有するため、二世帯が協力して楽しく暮らせる一方、プライバシーの確保が難しいのが特徴です。
このような完全共有型は、賃貸併用住宅としての利用にはあまり適していません。入居者と共用部分が多くなることで生活上の干渉が避けられず、快適な住環境を提供しにくいためです。もし賃貸化を検討する場合は、完全分離型へ大規模なリフォームが必要となり、建築コストや設備費用が大きく膨らんでしまいます。
賃貸併用住宅としての活用を視野に入れるなら、最初から完全分離型にするか、将来的に分離しやすい設計を採用しておくことが望ましいでしょう。
一部共有型の二世帯住宅は、玄関やキッチンなどを分け、お風呂や洗面所など一部の生活空間を共有するタイプです。一定のプライベートは保てるものの、完全に独立した住まいとしては成り立ちにくいのが特徴です。
このような一部共有型は、賃貸併用住宅として活用するのは難しいケースが多いです。共有スペースがあるため、入居者が生活する際にプライバシーを守りにくい点が大きな理由です。ただし、共有部分をリフォームして生活空間を分離できれば、賃貸に転用できる可能性はあります。
とはいえ、共有スペースの広さや生活動線によってはリフォームが困難な場合もあるため、事前に設計段階で将来の活用方法を想定しておくことが大切です。最初は二世帯で暮らし、将来的に一世帯になった際に賃貸へ転用したいと考えている場合は、ハウスメーカーや工務店に相談し、可能なプランを提案してもらうとよいでしょう。
賃貸併用の二世帯住宅を成功させるためのコツには、以下の7つが挙げられます。
順に解説していきます。
賃貸併用の二世帯住宅を建てる際は、間取りや設備を「賃貸活用」を前提に設計することが大切です。
もし賃貸部分の住み心地や利便性が十分でなければ入居者が集まりにくくなり、安定した収益につながりません。特に重視すべきは、玄関や水回りなどの独立性です。専用の玄関やキッチン、浴室、トイレを備えることで「完全に独立した住居」として認識され、安心して暮らせる環境になります。
また、防音・遮音性能を高めることで生活音のトラブルを防ぎ、長期入居を獲得しやすくなります。
検討しておきたい主なポイントをまとめると、以下の通りです。
賃貸利用者にとって快適な住環境を整えておくことが、賃貸活用を成功させるための第一歩です。
賃貸併用の二世帯住宅を建てる際は、自宅部分の面積を全体の50%以上にするのがおすすめです。なぜなら、自宅部分を全体の50%以上にすることで、住宅ローンや住宅ローン控除を利用できるからです。
賃貸併用住宅を建てる際には、「住宅ローン」と「不動産投資ローン」の2種類が利用できます。このうち住宅ローンは金利が低いため、不動産経営のキャッシュフローを良くすることが可能です。
三井住友銀行のローン金利 | 変動金利コース | 固定金利コース(10年) |
---|---|---|
住宅ローン | 年0.73% | 年2.095% |
不動産投資ローン | 年2.975% | 年4.69% |
出典:住宅ローン|三井住友銀行
※2025年8月時点の情報
また、ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅など、一定の省エネ基準を満たす住宅であれば住宅ローン控除が受けられる場合もあります。
このように、自宅部分の面積を全体の50%以上にすることで、賃貸経営の収益性を高められる可能性があります。
賃貸併用の二世帯住宅を建てる際は、光熱費のメーターや配管を世帯ごとに分けておくことが重要です。メーターを分けておけば、各世帯が自分たちの使用量に応じて費用を精算でき、不公平感やトラブルを防ぐことができます。特に親世帯と子世帯で人数や生活スタイルが異なる場合、使用量の差が大きくなることも多いため、あらかじめ分離しておくと安心です。
さらに、将来的に賃貸部分を外部に貸し出す場合も、メーターが独立していれば入居者に透明性の高い料金体系を提示でき、信頼性のある賃貸経営が実現しやすくなります。
配管についても、建築時に世帯ごとに分けて設計しておくのが理想です。後から工事を行うと大掛かりになりコストも高くつくため、新築時に分離を検討しましょう。水道メーターを分ける場合は、別途水道管の引き込みが必要になる場合もあります。
賃貸併用の二世帯住宅を成功させるには、立地条件と入居者ニーズの調査が欠かせません。あらかじめ十分に調べておくことで、入居者が集まりやすく、将来的に収益を生み出せる物件を計画しやすくなります。
立地条件の確認ポイントは、以下の通りです。
続いて、入居者ニーズの調査ポイントは以下の通りです。
なお、賃貸需要の調べ方については以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてみてください。
賃貸併用の二世帯住宅を建てる際は、事前に収支シミュレーションを行うことが重要です。収支シミュレーションをすることで、賃貸併用としての経営が成り立つかどうかを客観的に判断できます。重要なのは「家賃収入でローンが返せるか」だけで判断せず、空室が発生した場合のリスクや将来的に必要となる修繕費なども含めて現実的な計画を立てることです。
収支シミュレーションは、ハウスメーカーや工務店など賃貸経営に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。複数の立場から意見をもらうことで、より正確で収益性の高いシミュレーションが可能になります。
賃貸併用の二世帯住宅を成功させるには、親子や親族間で十分に話し合い、合意形成を図ることが欠かせません。事前に意見をすり合わせることで、将来的なトラブルを避け、各世帯が快適に暮らせる環境を整えられます。
以下は、特に確認しておきたいポイントをまとめたものです。
親族間での十分な話し合いと合意形成を行うことで、円滑な二世帯住宅と安定した賃貸併用住宅の運営が実現します。
賃貸併用の二世帯住宅を長く安定して運用するためには、建てた後のメンテナンスや管理方法をあらかじめ考えておきましょう。建物は時間の経過とともに劣化していくため、長期的な視点で資産価値を守る工夫が必要です。
長期的なメンテナンスや管理方法を考える際の主なポイントは、以下の通りです。
長期的な視点で計画的に取り組むことで、入居者の満足度を高め、安定した賃貸経営と資産価値の維持を実現できます。
今回は、賃貸併用住宅の二世帯住宅を建てるメリット・デメリット、賃貸併用住宅の二世帯を建てるポイントなどについて解説しました。
賃貸併用住宅は、親族と一緒に暮らしたり、賃貸物件として利用したりとライフステージに合わせて利用できるのが魅力です。設計を工夫することで住宅ローンを利用できる点もポイントといえます。
また、完全分離型の二世帯住宅は賃貸併用物件に転用しやすい一方、完全共有型や一部共有型は賃貸に出すのは難しい場合もあるので注意しましょう。
M-LINEでは、賃貸併用の二世帯住宅のご相談も承っております。「これから二世帯住宅を建てる」「将来的に一世帯分を賃貸に出したい」などどのようなご相談でもぜひ一度ご相談ください。
賃貸併用住宅に関する豊富な経験と実績を持つ専門スタッフがお客さまのご要望を伺った上で、最適な提案をさせていただきます。
2025/08/28
2025/08/28
2025/08/28