小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
ライフスタイルの変化に応じて、持ち家や実家を二世帯住宅に建て替えたいと考えていませんか。
二世帯住宅は、子育てや介護のサポートがしやすかったり、老後を孫と楽しく過ごせたりなどのメリットが多い暮らし方です。ただし、通常の建て替えに比べて費用が高額になるので、資金計画を綿密に行うことが欠かせません。
そこで本記事では、二世帯住宅の建て替えの平均費用や、建て替えるメリット、デメリットなどを詳しく解説します。
二世帯住宅の建て替えに興味がある方は、ぜひお役立てください。
まず、二世帯住宅の建て替えにかかる平均費用について詳しく解説します。建て替えの際は、以下3つの費用について考える必要があります。
二世帯住宅を建てる際は、必要な費用を把握し両世帯でしっかりと話し合うことが重要です。それぞれ順に解説します。
解体工事とは、既存の建物を取り壊して更地にする作業のことをいいます。
解体工事費は対象となる建物の種類や広さによって異なりますが、目安は以下の通りです。
木造建物 | 1坪あたり4万円前後 |
鉄骨造建物 | 1坪あたり5万円前後 |
3鉄筋コンクリート造 | 1坪あたり7万円前後 |
たとえば35坪の木造建物の場合、解体費用の目安は140万円です。ただし、新しい木造建物は丈夫な構造を採用していることがあり、解体が難しいことがあります。その場合は解体費用が高くなる可能性があるので、注意が必要です。また、解体する面積が広くなったり階層が増えたりすれば、そのぶん解体費用も増加します。特に、地下階や井戸などの埋設物がある場合は、撤去代が予想以上に高額になる可能性があることを覚えておきましょう。
建物の立地によっても解体費用が変わります。傾斜地や狭小地では使用できる重機が限られるため、費用が高くなることが一般的。また、住宅密集地や道路が狭い場所でも、重機の制限や近隣への配慮が必要なため、費用が増えることがあります。
建築工事費は、どのような二世帯住宅の間取りパターンを選択するかによって異なります。二世帯住宅は大きく、完全分離型・完全同居型・部分共有型の3つの間取りパターンにわかれます。各間取りの詳細については、記事の後半で詳しく紹介しているのでご確認ください。
間取り別の建築費用のポイントは、共有部分が少ないほど建築費が割高になることです。建築費の相場は以下を参考にしてください。
<相場例>
完全共有型 | 1,500万~3,500万ほど |
部分共有型 | 2,500万~4,500万ほど |
完全分離型 | 3,000万~5,500万ほど |
建築コストは設備や階層、デザイン、建材などによっても大きく変わります。また世界情勢の影響も大きく、たとえば、2021年のウッドショックや、2022年のロシア・ウクライナ情勢などの影響を受け、建築資材が大幅に高騰した背景があります。
予算内で収めるためには、施工会社に予算を伝え、適切な提案を受けることが重要です。経験豊富な二世帯住宅の施工会社に相談しましょう。
諸経費には、火災保険料や住宅ローンの借入費用、登記費用などが含まれます。
諸経費の目安は、全体の建築費の3〜6%ほど。たとえば、解体費が140万円で建築費が4,000万円の場合、諸経費は120万〜250万程度になります。また、建て替え中は仮住まいが必要になることもあるでしょう。賃貸住宅に住む場合は、建て替えにかかる約6カ月分の家賃が発生することも考慮しましょう。
資金計画を立てる際には、諸経費も忘れずに計算することが大切です。
二世帯住宅に建て替えるメリットは、以下の5つです。
二世帯住宅に建て替えることは、費用面でも生活面でもメリットが多いことが特徴。ご自身の暮らしにかかわるメリットはどれか確認しながら読み進めてみてください。
二世帯住宅に建て替える大きなメリットは、土地代がかからないことです。
二世帯住宅に建て替える場合、親が所有している土地を活用することがほとんどでしょう。子世帯は新たに土地を取得する必要がなく、建て替えにかかる費用を大幅に削減できます。
だし、中には自治体によって再建築不可の物件に指定されていることもあります。その場合、建て替えはできないため注意しましょう。二世帯住宅の計画をスタートする前に、まずは、所有している土地の条件をしっかりと確認することが重要です。確認は、対象となる建物を管轄する市町村役所の窓口でできます。
二二世帯住宅は、各世帯が1戸建てを2つ建てるよりも費用を抑えられることが利点。特に、親世帯が古くなった家を建て替えるタイミングと、子世帯が持ち家を建てることを考えているタイミングが重なる場合は、そのメリットが大きくなります。
また、親世帯が建て替えを検討していなかったとしても、二世帯住宅に新築することで、家の老朽化を心配することなく、性能の優れた新しい家で暮らすことができます。建て替えの際に、親世帯の間取りをバリアフリーにすれば、長期的に安全に過ごせるでしょう。
二世帯住宅は、子育てや介護のサポートがしやすいことも大きな利点でしょう。
子世帯にとっては、保育園の送り迎えや長期休みの預け先に悩まず、仕事を続けることができます。親世帯にとっても、同じ敷地内に子世帯がいることで、将来的に身体が不自由になった場合でも、日常的にサポートが得られるため安心です。家族や孫と楽しく充実した暮らしを送れることも嬉しいポイントでしょう。
二世帯住宅にすることで物理的な距離が近くなり、お互いをサポートし合いながら暮らせるでしょう。
二世帯住宅は家事の分担がしやすく、両世帯の負担を軽減できることもポイントです。
たとえば、親世帯が得意な料理を担当し、体力のある子世帯が庭の手入れや掃除を担当するなどの役割分担が考えられます。
高齢になると、電球を取り替えたり重い家具を移動させたりすることは大変なもの。高齢者の家庭内事故はとても多く、日常のちょっとした作業が大きな怪我につながることがあります。しかし、子世帯が側にいてくれることで、気軽にサポートを受けやすく、事故を事前に予防できるでしょう。
子世帯も、帰宅後に急いで食事を作る必要がないことは大きな助けになります。特に育ち盛りの子供がいる場合は、夕飯の心配をしなくて済むので日々のストレスが軽減されるという方もいるでしょう。
親の住む家を二世帯住宅に建て替えることで、「小規模宅地等の特例」が適用される可能性があります。「小規模住宅地の特例」とは、一定の要件を満たす宅地については330㎡までの部分について土地の評価額を最大80%減額し、相続税の負担を軽減できる制度です。
たとえば、330㎡以内の評価額が5,000万円の土地の場合、特例が適用されると評価額が1,000万円に減額されたうえで、相続税の計算が行われます。その結果、大幅な節税が可能になります。
小規模宅地等の特例の適用要件は主に以下の通りです。
二世帯住宅でも、居住部分を区分所有登記(1つの建物を2つ以上の居住空間に気切り、それぞれが別の所有権の対象となっていること)している場合は生活を共にしていないとみなされ、この特例が適用されない可能性があります。詳細については、税の専門家や税務署に相談することをおすすめします。
続いて、二世帯住宅に建て替えるデメリットについて紹介します。二世帯住宅は、通常の建て替えに比べて費用が高額になること以外にも、以下3つのデメリットが存在します。
デメリットを把握したうえで、慎重に検討することが大切です。
1つ目のデメリットは、プライバシーの確保がしにくいこと。二世帯住宅は同じ敷地に別々の家族が住むため、常に監視されているような感覚を持つことも少なくありません。
特にお互いの価値観が違う場合には注意が必要です。子育てを手伝ってもらうために二世帯住宅にしたにもかかわらず、子育ての仕方を干渉されることにストレスを感じ、トラブルが生じるケースもあります。また、子供がいたり生活リズムが違ったりする場合は、騒音にも配慮する必要があります。
2つ目のデメリットは、共有スペースの家事や使い方に関するトラブルが起こりやすいことです。
共有スペースがあると、誰が掃除をするかや、いつ共有スペースを使っていいかといったルールを事前に決めておかないと、生活の中で問題が生じることがあります。親世帯が子世帯のために気を使っているつもりでも、子世帯からは過干渉だと感じられ、不和につながることもあります。また、電気代や水道代を折半している場合、使い方の違いがストレスとなることもあるでしょう。
共有部分のある二世帯住宅を選ぶ場合は、使用時間や掃除の分担などについて、前もって話し合っておくことが重要です。お互いに譲れない点がある場合は、後でトラブルが起きないように、間取りを分けることをおすすめします。
3つ目のデメリットは、将来的に売却しにくいことです。理由は、二世帯住宅は通常の戸建てと比べて需要が少なく、買い手がつきにくい傾向にあるからです。
ただし、二世帯住宅ならではの活用方法もあります。たとえば、どちらかの居住スペースが不要になった場合は、賃貸住宅に転用することも一つの手です。
二世帯住宅に建て替える際は、将来的な運用方法について検討しておくと良いでしょう。
二世帯住宅の建て替えを検討する際は、間取りパターンをしっかりと検討することが大切です。ここでは、以下3つのパターンについて詳しく解説します。
1つ目は、完全分離型です。完全分離型とは、玄関から水回りまですべてを世帯ごとにわけ、共有部分を作らないことが特徴。
完全分離型は、プライバシーを守り自由に生活ができたり、各世帯の好みに合わせた間取りや設備を取り入れられたりすることがメリットです。一方で、すべての設備が二世帯分ぶん必要になるため、建築費やランニングコストが高額になる、比較的広い土地が必要などのデメリットも存在します。
プライバシーの確保を重要視したい方や、広い土地を持っている方におすすめのパターンです。
2つ目は、完全同居型のパターンです。完全同居型は、通常の戸建て住宅を二世帯が共有する住み方です。
完全同居型のメリットは、分離型と比べて建て替え費用が節約できること。水回りの設備も1つのみのため、通常の一戸建てと変わらない費用で建てることができます。さらに、実際に暮らし始めてからも、光熱費や修繕費、家電などを両世帯で折半できるので、経済的な負担を軽減できることが魅力です。
対するデメリットは、お互いの距離が近く、プライバシーの確保が難しいことが挙げられます。また、世帯間で理想の間取りやデザインが異なる場合は、どちらかが妥協しなければならない点もデメリットでしょう。
費用の負担をできるだけ少なくしたい方や、所有している土地があまり広くない方におすすめのパターンです。
3つ目は、部分共有型のパターンです。部分共有型は、LDKやリビング、トイレなどは各世帯でわけ、玄関、浴室、洗面所などのスペースを共有するスタイルです。
部分共有型は、完全分離型と比べて建築費や光熱費を節約でき、かつ、完全共有型よりも一定のプライバシーを確保しやすいことが特徴。お互いの暮らし方や予算を話し合ったうえで、どの設備や空間を共有するのか計画することが大切です。
建て替えの費用を抑えつつ、プライバシーに配慮した暮らし方を実現したい方におすすめです。
二世帯住宅を建て替える際にかかる費用は、解体工事費、建築工事費、諸経費の3種類です。建て替え費用は、二世帯住宅の間取りパターンによって大きく異なります。両世帯で予算や資金計画について慎重に話し合うことが欠かせません。
二世帯住宅の建て替えは、土地の購入費を節約できる、節税対策になるなどの経済的なメリットから、両世帯でサポートし合えることによる生活面でのメリットまで幅広くあります。一方で、多世帯が同じ敷地に住むことでプライバシーの確保が難しいなどのデメリットも存在します。
二世帯住宅に建て替える際には、本記事で紹介した平均費用や、メリット、デメリットを参考に、納得できる家づくりを行いましょう。
また、二世帯住宅を建てる際は、実績が豊富な施工会社に相談することが重要です。
M-LINEでは、二世帯住宅のご相談もお気軽にできます。
豊富な経験と実績を持つ専門スタッフがお客さまのご要望を伺った上で、最適な提案をさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
2024/10/31
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