アパート経営で法人化するメリット・デメリットを解説

アパート経営で法人化するメリット・デメリットを解説

アパートを経営する場合、個人事業主として行う方法と、会社を設立して法人として行う方法があります。

個人で始めたとしても、事業規模が大きくなると、法人化するメリットが多くなるため、法人化を検討する方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、アパートを法人化するメリットやデメリットについて解説します。また、法人化するための具体的なステップについてもまとめました。これからアパート経営を法人化することを検討している方は、ぜひお役立てください。

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アパート経営で法人化する5つのメリット

アパート経営で法人化する5つのメリット

アパート経営で法人化するメリットは、主に以下の5つが挙げられます。

それぞれ詳しく解説します。

1.所得税を節税できる

1つ目のメリットは、法人化することで、個人よりも所得税を節税できる可能性があることです。

個人の所得税率は収入に応じて段階的に上がる累進課税ですが、法人税率は一定です。そのため、高額所得の場合は、法人化することで税負担を少なくすることができます。支払う税金が少なければ、アパート経営の利益をより多く手元に残すことが可能です。

また、法人化することで、所得分散ができるようになることも、所得税を節税できる理由です。

所得分散とは、所得を複数の人や法人に分散することを指します。具体的には、個人が単独で受けていた所得(給与や不動産収入など)を、家族や法人など複数の受益者に分け与えることです。

例えば、法人を設立後、配偶者や子供を役員として登用し、役員報酬を支払うことで、家族間で所得を移すことが可能になります。オーナーが単独で受けていた所得(家賃収入など)を、法人を通じて家族全体に分散できるのです。

所得を分散することで、個人の税率よりも低い税率が適用される場合があり、家族全体での所得税負担が軽減される可能性があります。

2.経費の範囲が広がる

2つ目のメリットは、法人にすることで経費として認められる範囲が広がることです。

例えば、保険の種類や契約条件によって異なりますが、法人が役員や従業員のために加入する生命保険料の一部を法人の経費として計上することができます。

また、法人化することで、家族に支払う給与や退職金なども経費として計上できることもポイントです。個人の場合でも給与を経費にする方法はありますが、要件が厳しく、特定の条件を満たすことが必要になってきます。加えて、家族を専従者として雇用する場合には、配偶者控除や扶養控除などの対象から除かれてしまうなどのデメリットも考慮する必要があります。

しかし、法人化することで、これらのデメリットを避けつつ、経費を法人の費用として認められるのは利点でしょう。さらに、法人から事業主自身に給与や退職金を支払うこともでき、法人の経費として計上できる場合があります。

法人は基本的にすべての行為が事業として認められます。その結果、経費として捉えられる範囲が個人よりも広がることがメリットです。

3.相続対策になる

3つ目のメリットは、相続対策ができることです。

まず、法人化することで、相続税の節税につながります。

例えば、不動産の賃貸収入を個人名義で受け取ると、将来的な相続財産が増える可能性があります。一方で、不動産の賃貸収入を法人名義で運営すると、その収入は法人の資産として扱うことが可能です。法人が所有する不動産の賃貸収入は、一部の条件を満たせば相続税の対象外になる場合があるため、将来的な相続財産を減らし、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。

さらに、法人化することで、相続資産を分割しやすくなることも利点です。

アパートを法人化すると、不動産そのものではなく法人の株式として扱われます。不動産を分割することは難しいため、相続人同士の間で不平等な状況が生じることは少なくありません。しかし、株式の分割は比較的容易に行えるため、共有名義の不動産よりも分割がスムーズになることがあります。

4.贈与税が発生しない

個人でアパート経営をしている場合、収益を相続人に渡すと年間110万円を超える部分に、もらった個人が負担する贈与税がかかります。

しかし、アパートを法人経営にすれば、収益を役員報酬として相続人に分配できるため、贈与税がかからずに家賃収入を分配できるようになります。

家賃収入の分配をしたいと考えている場合には、法人化することで贈与税の節税ができることは重要なメリットでしょう。

5.欠損金の繰越期間が長くなる

法人にすると、欠損金の繰越期間が個人よりも長く設定される場合があります。

欠損金とは、事業や投資活動において発生した損失のことです。例えば、売上高よりも経費や費用が多く、赤字を出した場合の損失金額がこれにあたります。

法人の場合は、最長で10年にわたって欠損金を繰越して利用することができます。これに対して個人の場合は、一定の制約のもとで繰越が可能ですが、期間は法人よりも短い3年です。

アパート経営で法人化する3つのデメリット

アパート経営で法人化する3つのデメリット

アパート経営を法人化することで、所得税の負担を減らせたり相続トラブルを回避できたりなどのメリットがある一方、デメリットもいくつか存在します。

ここでは、以下3つのデメリットについて詳しく解説します。

アパート経営で失敗しないための重要なポイントなので、読み進めてみましょう。

1.法人の設立コストがかかる

デメリットの1つ目に、法人の設立コストがかかることが挙げられます。個人事業主は開業届を提出するだけで事業を始められますが、法人化の場合は、設立登記をする必要があります。

法人化する際には、以下のようなコストが発生する可能性を考慮しましょう。

2.法人を運営するための維持費用がかかる

法人を運営するための維持費用がかかる点もデメリットでしょう。法人化によって発生する支出は、主に以下が挙げられます。

3.赤字でも住民税の支払いが生じる

最後のデメリットは、赤字でも住民税の支払いが発生することです。

法人化した場合、法人住民税には法人税割と均等割が設定されます。このうち、均等割は、法人の資本金や従業員数に応じて計算され、赤字であっても毎年最低7万円の納税が必要です。

個人事業主の場合は、赤字であれば原則として住民税の課税はありません。


アパート経営で法人化するタイミングはいつ?

アパート経営で法人化するタイミングはいつ?

個人の場合、所得が増えると累進課税により高い税率が適用され、所得税率が上昇します。例えば、900万〜1,800万円の場合、所得税率33%に加えて住民税が10%課され、合計43%の税率が適用されます。

一方、資本金1億円以下の法人の税率は一般的に35%前後です。このため、法人化することで税負担を抑えられる可能性が高まります。

ただし、所得が900万円以下の場合は、法人化しても税率の差がそれほど大きくないことがあります。また、不動産所得以外の収入も考慮して全体の所得を見極めることも欠かせません。

全体の所得が900万円を超えるような場合には、税理士などの専門家に相談し、個人と法人の税率を比較検討すると良いでしょう。

アパート経営で法人化する際の5つのステップ

アパート経営で法人化する際の5つのステップ

続いて、アパート経営で法人化する際の5つのステップを紹介します。

正しい手順に沿って進めることで、スムーズに法人化できます。ぜひ参考にしてください。

1.法人の種類選定

法人化する際には、まず設立する法人の種類を決めることが重要です。法人化の形態には「株式会社」「合同会社」「合資会社」などがあり、それぞれ特徴や設立手続き、費用が異なります。

株式会社 株主が会社の株を所有し、取締役が経営を行います。社会的な信頼が高く、多くの企業がこの形態を採用しています。資金調達がしやすく、利益の一部は配当金として株主に分配されます。 約20万円
合同会社 法人化の費用が株式会社よりも低く、社員全員が出資する形態。小規模な経営に適しており、個人事業主から法人化する場合に選ばれることが多いです。 約6万円
合資会社 個人事業主に近い形態で、少額の資本金で設立できます。ただし、アパート経営ではあまり一般的ではなく、主にグループ会社の傘下に新企業を設立する際に利用されます。 約6万円

それぞれの法人形態にはメリットとデメリットがあり、設立後の運営にも影響を与えるため、慎重に選ぶことが重要です。

個人での判断が難しい場合は、専門家の助言を受けることをおすすめします。

2.定款の作成と認証

次に、法人の定款(ていかん)を作成します。

定款とは、会社の基本的な運営方針や規則を定めた書類のことです。会社設立の際には、必ず定款を作成する必要があります。

定款には、主に以下の内容を記載します。

定款は個人でも作成できますが、法律や規則に基づいて正確に作成する必要があるため、専門家に依頼することが一般的です。

定款の作成が完了したら、公証役場で定款の認証を受けます。ただし、合同会社の場合には定款の認証は不要です。

3.登記書類の用意

続いて、登記書類の用意を進めます。

登記書類とは、法人設立にあたって提出する書類のことです。必要な書類とその概要は以下の通りです。

これらの書類は種類が多く、準備が複雑です。自身で書類を準備するのが不安な場合は、法務局や税務署、司法書士や税理士に依頼することも一つの方法です。専門家の助けを借りることで、手続きを確実かつ効率的に進められるでしょう。

4.設立登記の申請

提出書類の用意が終わったら、法務局に必要書類を提出し、設立登記を申請します。

手続きの方法には、オンラインと窓口の2つがありますが、初めての場合は、対面で確認しながら進める窓口がおすすめです。

また、手続きには登記費用がかかるため、事前に料金を確認しておくと安心でしょう。

設立登記が完了した日が会社の正式な設立日になります。

5.各種手続きの完了

最後に、以下の各種手続きを完了させます。

アパート経営で法人化する際の注意点

アパート経営で法人化する際の注意点

アパート経営で法人化する際の注意点を3つ紹介します。

注意点を事前に把握しておくことで、法人化がご自身に適しているのかより判断しやすくなるでしょう。

1.経営規模によってはメリットが出にくい

法人化した場合、設立費用や維持費用などのコストがかかります。

そのため、小規模のアパート経営では、法人化しても費用対効果が低いことがあります。特にアパート1〜2棟程度の場合、個人事業主としての経営の方が税制面や費用面で有利になることも少なくありません。

法人化する際は、コスト面でのメリットがあるのか綿密に確認しましょう。

2.帳簿の手間が大きい

法人化した場合、帳簿管理の手間が増える可能性があります。

法人の帳簿管理は、会計基準や税法に基づいた厳密な帳簿記録が求められるため、個人と比べて複雑です。帳簿付けが心配な場合は、税理士のサポートを受けることで誤りや漏れを防ぎ、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。

ただし、法人の確定申告を税理士に依頼する場合は、一般的には10〜30万円程度かかります。

3.売却時の税率が高くなる可能性がある

法人で不動産を売却する際、売却益に対する税率が高くなる可能性があります。

個人の場合、所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、税率は20%(所得税15%+住民税5%)ですが、法人の場合は所有期間に関係なく法人税率(約23%)が適用されます。

そのため、長期間保有している不動産を売却する場合は、個人の方が有利です。

まとめ:アパート経営で法人化を検討するならM-LINEへ相談を!

アパート経営で法人化を検討するならM-LINEへ相談を!

アパート経営で法人化をする場合、所得税の節税や相続対策などのメリットがある反面、経営規模によっては損失を被ったり帳簿の手間が大きく管理が難しくなったりなどのデメリットも存在します。

法人化する際は、適切なタイミングを見極め正しいステップで行うことが重要です。

もし、個人での判断が難しい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

「法人化に最適なタイミングを知りたい」「法人化についてアドバイスがほしい」という人は、一度M-LINEにご相談ください。

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執筆者情報

館山

館山

不動産管理会社の知識を活かしながら、フリーランスのライターとして活動をしています。

監修者情報

高坂 昇

高坂 昇 ou2株式会社 専務取締役 一級建築士

木造密集地域や防火地域において、木造ならではの施工性や設計の柔軟性、コストパフォーマンスを活かして木造耐火4階建て住宅(もくよん®)や、災害時の避難場所となる地下室や屋上を備えた災害住宅も提唱しています。

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