小林 眞一郎 ou2株式会社 常務取締役 二級FP技能士
「テナント経営に興味はあるけれど、どんな土地活用なのかイメージが湧かない」「収益性が高いと聞くけれど、リスクはないの?」そんな疑問や不安をお持ちではありませんか。
本記事では、テナント経営の基本的な種類から、なぜ近年注目されているのかという人気の背景まで、初心者にもわかりやすく解説します。実際にテナント経営を行う際のメリット・デメリットや、失敗を避けるために知っておきたいポイントについても触れています。
本記事を読むことで、テナント経営の全体像を把握でき、自分に向いている土地活用かどうかを判断しやすくなるでしょう。これから土地活用を検討したい方や、安定した収益を得られる方法を探している方は、ぜひ参考にしてみてください。
テナント経営は土地活用の方法のひとつで、飲食店や物販店などに土地や建物の一部を貸し出し、賃料や地代を得る経営方法です。賃貸経営と似ていますが、契約形態や貸し出す対象、運用の仕方などにおいて両者には大きな違いがあります。
ここでは以下2つの観点から、テナント経営とはなにかを詳しく解説していきます。
テナント経営についてより深く理解するためにも、ぜひ読み進めてください。
テナント経営には大きく分けて「土地をそのまま貸し出す方法」と「建物を建ててテナントに貸し出す方法」の2種類があります。それぞれの方法によって契約形態や初期費用、運用の手間が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。
以下の表に、両者の主な契約形態や特徴をまとめました。
項目 | 土地をそのまま貸す方法 | 建物を建てて貸す方法 |
---|---|---|
初期費用 | 原則不要(建物を建てないため) | 建築費が必要 |
契約方法の種類 |
■事業用借地契約 土地のみを一定期間貸すシンプルな契約 |
■リースバック契約 事業者から建設協力金を受け取り、建物を建てて一括で賃貸する方法 ■普通借家契約 1年以上の契約で、契約満了時に更新が可能 ■定期借家契約 契約期間が満了すると更新なしで終了(1年未満でも可) |
運用の手間 | 比較的少ない | 設備管理や修繕など手間がかかる |
このように、テナント経営の種類によって契約方法や運用スタイルが異なります。
それぞれの特徴を理解し、自身の状況やニーズに合った経営方法を選ぶことが成功への第一歩です。
テナントにはいくつかの種類があり、それぞれの特徴や注意点も異なります。また、収益性にも差があるため、どのようなテナントの種類があるのか理解しておくことが大切です。主なテナントの種類と特徴は以下の通りです。
それぞれのテナントには異なるメリット・デメリットがあるため、土地の立地や周辺環境に合った選択をすることが重要です。
以下の記事ではテナントビル経営のメリットやデメリットについて詳しく紹介しています。興味のある方は併せて参考にしてください。
また、M-LINEでは、テナントビルや店舗付きの賃貸併用住宅などの建築実績が豊富にあります。これまでの施工事例やご提案内容をまとめたカタログを無料でお届けしています。ご希望の方はお気軽にお申込みください。
テナント経営が人気を集めている理由としては、主に以下の5つが挙げられます。
上記に挙げた人気の理由は、アパート経営などの土地活用と比べて初期費用を抑えながら資産形成ができるといった、テナント経営ならではのメリットともいえます。詳細について、以下で詳しくみていきましょう。
テナント経営が人気を集める理由のひとつは、収益性の高さにあります。収益性が高い土地活用としては、アパート経営やマンション経営などの賃貸経営がイメージされがちです。しかし、アパート経営とテナント経営を比べた場合、テナント経営の方が賃料は1.5〜2倍近く高い傾向にあります。
とはいえ、収益の高さだけでなく、初期費用や運用コストも考慮し、バランスの良い計画を立てることが成功のポイントです。
テナント経営は、初期費用を抑えられる点も人気の理由です。
アパートやマンション経営と比べて、内装や設備投資の負担が少ないのが特徴です。多くの場合、内装やデザインは借り手である事業者が自分で行うため、オーナー側の初期投資を抑えられます。
初期費用を抑えられることで、投資回収までの期間が短くなり、結果的に高い収益性につながるのも魅力のひとつです。
テナント経営は、ランニングコストを抑えやすい点も魅力です。ランニングコストを節約できる背景には、テナント特有の「保証金制度」があります。これは一般的に賃料の6〜12ヶ月分が設定される仕組みで、住宅賃貸における敷金に近いものです。
保証金は退去時の原状回復費用や家賃滞納時の補填などに充てられるため、オーナー側の経済的なリスクを軽減し、維持費用の削減にもつながります。
テナント経営はアパート経営などに比べて、生活トラブルが発生しにくい点でも人気があります。アパートのような居住用物件では、住民同士の騒音やゴミの分別をめぐるトラブルが発生することも少なくありません。
一方で、テナントの場合は法人を相手に貸し出すケースが多く、利用時間も限られていることから、騒音やマナーに関する問題が起こりにくいのが特徴です。
経営に伴うトラブルをできるだけ避けたい方にとって、安心して運用できる選択肢といえるでしょう。
テナント経営は、相続税対策としても注目されています。不動産を他人に貸している状態であれば、土地や建物の評価額を一定の方法で減額できるためです。
例えば、テナントが入居している土地は「自由に使えない状態」とみなされ、相続税評価額が下がります。評価の際には、借地権や借家権、賃貸割合などが考慮され、課税対象となる額が抑えられる仕組みです。
さらに、一定の条件を満たすと「小規模宅地等の特例」が適用され、対象の土地については評価額が大きく減額されることもあります。(※)
テナント経営によって土地の評価額を下げられるため、将来的な相続税の軽減を見据えて導入を検討するオーナーも増えているといえます。
※出典:小規模宅地等の特例|国税庁
テナント経営には、メリットだけでなくデメリットもあります。主なデメリットは、以下の5つです。
テナント経営を検討している方は、メリットだけでなくデメリットについても把握しておくことが大切です。デメリットを理解し、事前に対策を取るなどのリスク回避を考えましょう。
テナント経営は景気の影響を受けやすいため、景気によって利用者が減少する可能性があります。その点、マンションやアパートでは入居者からの家賃収入となるため景気にそれほど影響することはありません。
不況が続くと、新たなテナントを募集するのにも苦労してしまいます。また、相場よりも高めの賃料設定をしていると入居者が見つけにくくなるため、利用者を減らさないためにも注意が必要です。
レストランや居酒屋などの飲食店の場合、調理による火事のリスクがあります。そのほかにも、設備故障などのトラブルも考えられるため、各種保険に加入し、リスクヘッジを検討しておくことが大切です。
ただし、テナント経営は居住用物件ではないため、地震保険には加入できないということを知っておきましょう。
テナントに対する融資を依頼する場合、審査は決して甘くはないため融資を受けにくい可能性があります。審査では、物件が持つ担保力やオーナーの資金力、経済状況などを厳しく判断されます。
中には、テナントへの融資をNGにしている金融機関もあるため、融資を検討している場合は事前に確認しておきましょう。
テナント経営の場合、住宅用地よりも固定資産税が高い傾向にあります。固定資産税とは、毎年1月1日の時点で土地や建物を所有している人に対して課される税金のことです。そのほかにも、土地や建物を所有していることで、市町村からの条例で課される都市計画税を納付する場合もあります。
テナント用に建てた場合、固定資産税・都市計画税については軽減措置がされない可能性があるため、住宅用地よりも高額に感じる場合もあるでしょう。アパートやマンションなどの住宅用地の場合だと、固定資産税の課税標準を3分の1に減額されるほか、200㎡以下の部分に関しては課税業順は6分の1に軽減措置がされます。
そのため、土地評価額が高いものを所有していると、住宅用地よりも固定資産税は高くかかってしまうため節税対策を目的とする方は気をつけましょう。
テナント経営では、地震保険に加入できないケースがある点もデメリットでしょう。
地震保険は原則として、居住用建物を対象とした制度のため、テナントビルや店舗などの商業用物件は対象外とされるケースが一般的です。居住スペースがない場合は加入できず、万が一地震で被害を受けた際も補償を受けられません。
テナントオーナーは代替手段として「地震危険補償特約」などを検討することになります。ただし、地震危険補償特約は保険料が高く、補償内容も限定的です。加入したからといって安心とは言い切れず、十分なリスクカバーが難しい場面も出てきます。
特に問題となるのが、地震による建物の損壊や、営業停止によって発生する経済的損失です。保険でカバーできなければ、修繕費や収益減少の影響がダイレクトに経営に跳ね返ってきます。ビル全体に複数のテナントが入っている場合、その影響範囲はより大きくなるでしょう。
こうしたリスクに備えるには、保険以外の対策も必要です。例えば、耐震性の高い建物設計などが挙げられます。万が一に備えて、複数の視点からリスクを管理する姿勢が求められます。
地震保険に加入できないという制約は、テナント経営の盲点になりがちですが、十分に考慮すべき要素です。初期段階からこのリスクを踏まえた準備を整えておくことが、安定した経営につながります。
ここからは、テナント経営にかかる主なコストを以下2つの観点からみていきましょう。
テナント経営では、建物を建てる前と後で発生するコストが大きく異なります。成功するためには、それぞれの段階で必要となる費用を把握し、適切に備えることが重要です。順に解説していきます。
建築前の段階では、主に初期投資に関する費用が発生します。以下は代表的な費用項目です。
これらの費用を計算し、十分な資金を準備することで、無理のないスタートがきれます。
建築後には、建物の運営・維持にかかわる継続的な費用が発生します。以下に主なコストをリストアップします。
<建物の維持管理費>
<清掃費用>
<法定点検・安全管理費>
<税金・保険に関する費用>
なお、建物や設備の修繕や管理については、基本的には貸主側が「貸せる状態」を維持する義務を負いますが、契約内容によってはテナント側に一部費用負担を求めるケースもあります。責任範囲については、事前に賃貸契約の内容をしっかり確認しておくことが重要です。
まずは上記のような費用の全体像を把握し、長期的な視点で資金計画を立てておきましょう。
テナント経営を成功させるためには、段階を踏んで計画的に準備を進めることが重要です。主な流れは、大きく以下の4つのステップに分かれます。
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 土地の用途区域を確認 | 所有する土地が市街化区域か市街化調整区域かを確認する | 制限がある場合は自治体の規定を確認 |
2. ニーズ調査・ターゲット設定 | 周辺地域のニーズを調査し、適したテナント業種を決定 | 需要に合った業種を選ぶことが成功の鍵 |
3. 建物・設備の計画 | 建物の設計と必要な設備の検討。複数の建築会社に相談し、比較・検討することも重要 | 法的基準を満たし、費用対効果の高い提案を選ぶ |
4. 契約締結・入居準備 | テナントと賃貸借契約を結び、入居の準備を進める | 契約内容は双方が納得するよう細かく確認 |
これらのステップを順に着実に進めることで、安定したテナント経営の基盤をきずけるでしょう。
テナント経営で失敗しないためのポイントは、主に以下の3つが挙げられます。
テナント経営の成功へとつなげるため、上記のポイントを押さえることが大切です。
どのようなテナントを入れるのか、まずはターゲットを決めることが大切です。どんなニーズがあるのかしっかり調査し、利用する事業者のターゲットを絞ることで、需要のあるテナントを選ぶことができます。
ニーズを調べる方法としては、周辺地域で最も儲かっているテナントを見つけるというシンプルな方法となります。儲かっているテナントがよく分からないという方は、実際に近隣住民にアンケートを取ることで、需要の多い事業が明確になってくるでしょう。
法人に土地を貸して賃料を得るという手段もありますが、知識がないままテナント経営に踏み出すのはリスクが高いといえます。契約方法やテナントの種類には様々な選択肢があり、それぞれに応じた対応が求められるため、事前に十分な知識を身につけておくことが大切です。
また、オーナー自身がテナント経営を行う場合、経営戦略やテナント誘致の方法などを理解していないと思わぬ失敗につながる可能性もあります。安心して経営を進めるためにも、必要な知識をしっかりと備えておきましょう。
テナント経営に少しでも不安や疑問がある方は、専門のプロに相談することをおすすめします。さらに、オーナー自身が経営に直接関わらず、間接的にテナント経営に参画するという選択肢もあります。
プロに依頼する場合は、テナント経営の実績が豊富な専門業者を選びましょう。専門業者に任せることで、煩雑な契約手続きや交渉、トラブルへの対応などの負担を軽減できます。
テナント経営以外にも、土地活用にはいくつかの選択肢があります。ここで挙げられる選択肢としては、以下の通りです。
テナント経営だけに目を向けるのではなく、幅広い視野を持って土地活用を検討することが大切です。また、土地活用を決める際には、メリット・デメリットの両方を考慮して決めるようにしましょう。
駐車場経営は、駐車場を設け駐車料金を収益として得る土地活用です。駐車場経営のメリットは、以下の通りです。
駐車場経営の大きなメリットは、安定した収入が期待できることと投資リスクが低いことです。テナントやアパートとは違って建物を建てる必要がないため、少ない初期費用で運用を開始できます。また、建物が不要な駐車場は、ほかの用途に転用しやすいというメリットもあります。
一方、デメリットは以下の通りです。
安定した収入が期待できる反面、収益が比較的低いというデメリットがあります。駐車場は税制面で優遇されにくい傾向にもあるため、節税目的で土地活用を検討している方にはおすすめしない活用方法となるでしょう。
以下の記事ではコインパーキング経営で土地活用を行うメリット・デメリットについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
トランクルーム経営とは、設置したトランクルームを個人や企業に倉庫として貸し出し、使用料を収益として得る土地活用です。トランクルーム経営のメリットは以下の通りです。
トランクルームは倉庫を設置するだけで運用可能なため、経営を始めやすく初期費用も比較的少ないというメリットがあります。駐車場と同様に投資リスクも低いため、他の用途にも転用しやすいです。デメリットについては、以下の通りです。
トランクルームは認知され利用者を獲得してから収益を得るため、収益化までに時間がかかるというデメリットがあります。また、トランクルームは税制面での優遇がされにくいため節税目的の方には向かない土地活用といえます。収益についてもテナントやアパートに比べて低いため、収益を重視する場合にはデメリットとなるでしょう。
以下の記事ではトランクルーム経営で土地活用を行うメリット・デメリットについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
アパートやマンション経営では、建物を賃貸として第三者に貸し出し、家賃収入として収益を得る土地活用です。メリットとしては、以下のものが挙げられます。
アパートやマンションなどの建築物を建てることで、大きな資産になります。また、節税できる場合もあるため、相続税対策などを目的に土地活用を検討している方にもおすすめの活用方法です。さらに、空室が出ない限り長期的に安定した収入を期待できるというメリットもあります。
デメリットは、以下の通りです。
アパートやマンションでは、共有部分の修繕費が発生するなどのデメリットがあります。災害などによるリスクもあるため、保険に加入するなどの対策を取っておくことも必要です。アパートやマンション経営では、ほかの土地活用よりもイニシャルコストとランニングコストがかかります。
アパートやマンションでは、しっかりと資金計画を立て収支シミュレーションをしておくことで対策を取ることが可能です。
アパートやマンション経営を検討している方は、一度MLINEへご相談ください。MLINEでは、相場よりも安い建築費用をご提案しているため、少しでも費用を抑えたいと考えている方は以下からお問い合わせください。
また、以下の記事ではアパート経営について網羅的に解説しています。併せて参考にしてみてください。
テナント経営は飲食店などのテナントに場所を貸して収益を得る経営方法ですが、契約方法や種類がいくつかあるため自身に合ったものを選ぶようにしましょう。
テナント経営を成功させるためにも、ターゲットを決める・自身で知識を深めておく・プロに相談するなどを意識することが大切です。テナント経営についてや土地活用の方法に悩んでいるという方は、ぜひMLINEへご相談ください。
MLINEでは、所有されている土地に最適なテナント経営や土地活用の提案・サポートを行っています。少しでも不安や疑問がある方は、お気軽にお問い合わせください。
2025/07/31
2025/07/31
2025/07/31