二世帯住宅の完全分離型は、親世帯と子世帯がプライベート空間を確保できる理想の間取りです。「二世帯住宅にするなら完全分離型にしたい!」というご家庭も多いでしょう。
しかし、完全分離型の二世帯住宅でも隣や上下階に親や子世帯と一緒に住むことに「後悔しないのか?」「デメリットがないのか?」と不安に思う方も多いですよね。結論からいうと、完全分離型でも後悔や失敗する事例もあります。
そのため、まずは失敗例やデメリットを把握し、リスクを回避する家づくりをすることが重要なポイント。また、家族でライフスタイルや支払いなどについて、二世帯住宅を建てる前に話し合っておくなどの準備も必要です。
そこで、本記事では完全分離型の二世帯住宅で後悔する失敗例や、後悔しないためのポイントについて徹底解説。完全分離型の二世帯住宅に関するよくある質問についても解説しているので、二世帯住宅を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
二世帯住宅の完全分離型とは、居住空間を世帯ごとに完全に分離させた住宅のことです。玄関・浴室・キッチンなど間取りや設備が世帯ごとに分かれているのが特徴で、親世帯・子世帯で独立した空間になっています。
同居というよりは隣同士や上下に住まいがある賃貸といったイメージで、ライフスタイルを合わせたり、プライバシーを確保できたりするのが完全分離型の大きなメリットです。
ただし、別々の空間を作るためには、その分設計料や土地の広さが必要になり、建築費用が高額になる傾向にあります。
建築コストを抑えるためには、住居の一部分を家族と共用する一部共用型や、リビングやキッチンなどもすべて共用する完全共用型の二世帯住宅の選択肢もあります。
さらに、土地の広さが限られている場合は、無理に完全分離型を建てようとすると空間に圧迫感のある間取りとなってしまうケースもあるので注意が必要です。あえて完全分離型にせず、共用スペースを増やし家自体を広く見せる例もあるため、ハウスメーカーや工務店などに相談しながら家づくりを行いましょう。
ここでは、完全分離型二世帯住宅の特徴について説明していきます。特徴は以下の3つです。
後悔しないように目を通しておきましょう。
完全分離型二世帯住宅は、親世帯と子世帯が独立した生活空間を持つため、建築費が高くなるのが大きな特徴です。
通常は1つで済む設備(キッチン、バスルーム、トイレなど)が、完全分離型では世帯ごとに必要となり、その分費用が増加します。また、各世帯が独立した玄関を持つ場合、玄関の建設や外構工事費用も追加されます。さらに、二世帯分の配管や配線工事も複雑になり、施工コストが上がる要因となります。
特に、二世帯が平等に快適な空間を保持できるように設計すると、居住面積が広くなり、建物全体の費用がさらに増加する傾向があります。
完全分離型二世帯住宅の建築費については以下の記事でも解説しています。
完全分離型二世帯住宅の2つ目の特徴は、プライバシーが確保されやすい点です。
それぞれのリビングやキッチン、浴室が独立しているため、音や明かりを気にせず、好きな時間に料理や入浴が可能です。
また、お互いの生活音が伝わりにくく、ストレスを軽減できます。
しかし、上下分離型の場合は、上の階のシャワー音や足音が響き、プライバシーが侵害されることもあるため、注意が必要です。
完全分離型二世帯住宅は、将来的な柔軟性が高い点が特徴です。
それぞれの世帯が独立して暮らせる構造のため、親世帯が高齢になり介護が必要になった際も、バリアフリー設計にしてサポートしやすい環境を整えられます。また、子世帯の子どもが独立した後や親世帯が亡くなってしまった場合には、簡単なリフォームを行うだけで賃貸に転用することが可能です。
このように、ライフステージの変化に応じて住まいの使い方を柔軟に調整できる点が、大きな特徴です。
二世帯住宅の完全分離型で後悔する失敗例は、以下の5つが挙げられます。
二世帯住宅には、親の資金援助が受けられたり子育てや家事のサポートが受けられたりメリットも多いですが、きちんと対策できていないと後悔するケースも多くあります。失敗例をしっかりと把握し、間取りやルールづくりの参考にしてみてください。
二世帯住宅の完全分離型でも生活音にストレスが溜まり、後悔する例があります。理由としては、ライフスタイルの違いや、二世帯住宅の間取りの設計や設備に配慮できてないケースが多いからです。
例えば、完全分離型でも以下のような後悔した事例があります。
防音や遮音設備を入れても入居するまでは実際に生活音が確認ができないため、実際に住んでみて防音対策をしてもうるさかったと後悔したというケースもあります。
例えば、子世帯が2階ではなく1階の方が足音や物音が気になりにくくなります。こうした生活音については大きなストレスとなる場合があるため、慎重に検討することが大切です。
完全分離型タイプの二世帯住宅は、庭・バルコニー・駐車場を共有する場合が多いです。そのため、完全分離型でも共用スペースで世帯間で顔を合わせる場合も多く、両親の配偶者以外は気を遣うと後悔する事例があります。
ガーデニングが趣味の人がいる場合は、特に話し合う時間を設ける必要があるでしょう。
また、庭やバルコニーの手入れはどちらがするのか、駐車場の停め方などについてトラブルとなるケースもあるようです。庭は分離することができなくても、バルコニーは別々に用意する、駐車場のルールは事前に決めておくなどの対策が必要でしょう。
完全分離型タイプの二世帯住宅では、両親の介護がストレスとなるケースがあります。理由としては、完全分離型は生活空間を完全に分離しているため不便だからです。
完全分離型は、一部共用型や完全同居型タイプの二世帯住宅と違って、配膳や介助をするために一度玄関を出ないといけません。食事やトイレのたびに頻繁に行き来しなければならなかった場合、空間を共有していた方が移動が楽になります。
また、介護士に依頼する場合にも、目を離すことになるため、介護士との間でなにかトラブルがあった場合には面倒なことになります。
上記のように将来的な介護の導線についてもよく考え、間取りや設備を検討するのがおすすめです。
完全分離型タイプの二世帯住宅では、光熱費の支払いで揉めるケースがあります。こちらの問題は完全分離型に限られる訳ではありませんが、「どちらが費用を支払うのか」を事前に決めておかなかったことが問題となる事例が多いです。
二世帯住宅の計画を立てる段階で、水道光熱費はどちらの世帯がどの程度の割合を負担するのか話し合っておくことが大切です。お金の問題は想像以上にトラブルとなるケースがあり、以下のような大きな問題となる可能性もあるので注意しましょう。
【トラブルの例】
完全分離型の二世帯住宅でも、来客に気を遣うことがあるという声が少なくありません。理由の一つとして、隣や上階に親族が住んでいると、賃貸や一戸建てで他人が隣人の場合とは異なり、話し声などのボリュームに気を遣う必要があるからです。
特に、たまには家庭の愚痴をこぼしたり、リラックスしておしゃべりを楽しみたいと考える方にとって、こうした気遣いが思った以上にストレスになる可能性があります。
このような後悔をなくすには、防音性が高い完全分離型タイプの二世帯住宅がおすすめです。M-LINEでは防音性に優れた完全分離型タイプの二世帯住宅を建設していますので、ぜひお問い合わせください。
二世帯住宅の完全分離型で後悔しないためのポイントは、以下の3つです。
完全分離型だからといって絶対後悔しないということはありません。さまざまなリスクを考慮したうえで、快適な住まいとなるように準備しておきましょう。
完全分離型の二世帯住宅で後悔しないためには、光熱費や住宅ローンの支払いについて事前に話し合っておきましょう。完全分離型は建築費用も他のタイプと比較して高額になる可能性も高いため、両親の老後や死後なども支払い続けられるのかも確認しましょう。
水道光熱費・電気代・ネット代などの支払いは、世帯ごとに分けておくのがおすすめ。完全に支払いも分かれていれば、割合や使用量に関してもトラブルにならないでしょう。
支払いを一緒にする場合は「誰が支払うのか」「老後はどうするのか」「どのくらいの割合で支払うのか」などをきちんと事前に話し合っておくことが重要なポイントです。
さらに、設備の修繕費やリフォーム費用など突発的な出費への支払いについても事前に話し合っておくとさらに良いでしょう。
完全分離型の二世帯住宅で後悔しないためには、親の老後や死後についても考慮した間取りにするのがポイント。とくに老後自宅で両親の面倒を見ようと思っている方は、自宅を行き来できる鍵付き扉を作りましょう。
そうすれば必要な際に鍵を開けて両親の元へ行き来できるため、配膳や介助の際に便利です。また、将来賃貸に出せるように設計すれば、親の死後に空いた住居を有効に活用できるようになります。
節税や住宅ローンの支払い対策としても、ライフステージが変化した将来を考慮した家づくりを行いましょう。
完全分離型の二世帯住宅では、家族一人一人のライフスタイルを把握して間取りに取り入れるのが成功のコツです。なぜなら、完全分離型の二世帯住宅で後悔した例では、生活導線やライフスタイルなどに十分に配慮できておらず、失敗するケースが多いためです。
家族全員の活動開始時間・洗濯や掃除を行う時間・帰宅時間などライフスタイルを把握し、できるだけ生活音が気にならないように間取りや設備を工夫することが大切です。
また、どちらか一方の間取りに偏るのではなく、両世帯にとって公平な間取りにするのが二世帯住宅でうまくいくコツでしょう。
世帯住宅の完全分離型で後悔しないためには、防音・断熱性能を重視することが重要です。完全分離型とはいえ、壁や床を介して音や熱が伝わることは避けられません。特に子どもが走り回る足音や夜間の生活音などが原因で、思わぬトラブルになることもあります。
防音性能を高めるためには、間仕切り壁や床材に遮音性の高い素材を使用するのがおすすめです。また、断熱性能を重視することで、各世帯が快適な温度を維持できるだけでなく、光熱費の削減にもつながります。
さらに、窓やドアの性能も重要です。遮音性・断熱性の高い製品を選ぶことで、外部の騒音や気温の影響を最小限に抑えることができます。
二世帯住宅の完全分離型で後悔しないためには、将来の活用方法を見据えて設計することが大切です。親の介護や世帯間のライフステージの変化、さらには親世帯の空きスペースの活用方法などをあらかじめ考えておく必要があります。
たとえば、親世帯の居住スペースを将来的に賃貸物件として活用できるよう、独立した設備やプライバシーを確保するような設計もおすすめです。
さらに、リフォームがしやすい設計も、家族の状況やニーズに応じた将来的な対応が可能となり、長期的に住み心地の良い二世帯住宅が実現するでしょう。
完全分離型二世帯住宅を検討する際の注意点は以下の3つです。
完全分離型二世帯住宅を検討する際には、建築会社とのコミュニケーションを密に取ることが重要です。完全分離型は各世帯のプライバシーを確保しつつ、快適に暮らせる設計が求められるため、家族の要望や生活スタイルを細かく伝える必要があります。
例えば、玄関や水回りの配置、防音対策、将来のリフォームを見据えた設計など、細部にわたる確認が必要です。また、予算や施工スケジュールに関する情報共有も欠かせません。
建築会社としっかりコミュニケーションを取ることで、後悔のない理想の完全分離型二世帯住宅が完成するでしょう。
建築基準法では「二世帯住宅」の定義はなく、住宅は「共同住宅」「長屋」「一戸建て」に分類されます。
共同住宅は2戸以上で各住戸に居室や台所、便所が必要で、共用の廊下や階段があります。長屋は2戸以上の住宅で共用部分がなく、戸数により横または上下に連続します。一戸建ては1戸の住宅で基本的な設備が必要です。二世帯住宅はハウスメーカーの商品名であり、親子が独立した世帯として住む住宅を指します。
以上のことをしっかりと確認しておきましょう。
また、完全分離型二世帯住宅に適用される以下の4つの税制の優遇も確認しておきましょう。
二世帯住宅で利用できる補助金については、以下の記事で解説しています。
完全分離型二世帯住宅を検討する際、地域性や周辺環境を考慮することは重要です。
例えば、交通アクセスや買い物の利便性、学校や医療機関の距離などをチェックしましょう。また、隣接する住民の特性や交通量や開発地域など騒音などの問題も考慮しましょう。
さらに将来的に賃貸に出すことを検討している場合は、長期間に渡って需要が続く地域であることも重要な要素になります。
ここからは、二世帯住宅の完全分離型に関するよくある質問5つを紹介します。
完全分離型の二世帯住宅を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
完全分離型の二世帯住宅のメリットは、以下の例が挙げられます。
そのため、二世帯住宅でも両親世帯や子世帯との関わり方に不安がある方、将来的に賃貸に出すことも視野にいれている方などにおすすめのタイプです。
完全分離型の二世帯住宅のデメリットは、以下の例が挙げられます。
このように土地の広さによって圧迫感のある間取りとなったり、費用や光熱費が高額になったりするデメリットもあるので注意が必要。家族間でどこまで許容範囲なのか話し合っておきましょう。
完全分離型タイプの二世帯住宅の建築費用の目安は、2,900万円~5,500万円程度です。目安の金額の幅が広い理由については、土地がありかなしか、間取りや設備、グレードなどによって建築費用が大きく変わるためです。
完全分離型は、寝室・リビング・玄関・浴室・洗面所など両世帯のすべての空間を分ける間取りとなるため、二世帯住宅の中でも高額になる傾向にあります。ただし、水周りを1か所のまとめたり、内外装のグレードを落としたり工夫することによって費用を抑えられるでしょう。
次の事例では、完全分離型の二世帯住宅を2,900万円(土地代なし)で建てた事例です。間取り・延べ床面積・家族構成などを紹介するので、参考にしてみてください。
【完全分離型の費用相場の実例】
建築費用 | 約2,900万円 |
間取り | 2LDK+3LDK |
延べ床面積 | 約152㎡(約46坪) |
工法 | 木造軸組 |
家族構成 | 夫婦2人・子ども・両親 |
また、以下の記事では完全分離型・一部共用型・完全分離型の建築費用相場について解説しているのでチェックしてみてください。
完全分離型の二世帯住宅は、最低でも45坪~50坪程度の広さが必要です。理由としては、間取り係数を用いて以下のような計算方法で必要な坪数を算出しました。
【例:両親・子供夫婦・子2人世帯(計6人世帯)】
間取り | 計算方法 |
---|---|
・寝室(8畳×2部屋) ・LDK(10畳×2) ・子ども部屋(5畳×2) ・収納等のスペース(4畳) ・その他分離するスペース8畳 |
間取り合計の58畳×1.6=92.8畳(45.47坪) |
この坪数については、間取り係数(※ゆとり度:1.6~2.0)をかけて、必要な延べ床面積を算出しています。
間取り係数とは、建築家の吉田佳二さんが考案した数値で、係数が大きいほどゆとりのある間取りが算出されるのが特徴。今回の場合は最低限の坪数を求めたかったため、1.6をかけて計算しています。
完全分離型の二世帯住宅でさらにゆとりのある間取りとしたい場合は、50坪~60坪程度の土地が必要になるでしょう。
また、完全分離型以外のタイプの坪数の目安を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
完全分離型の二世帯住宅で成功した間取りの事例を紹介します。
世帯 | 間取り例 |
---|---|
(親世帯)1階 | LDK(17畳)+洋室6畳+洋室6畳+浴室+トイレ+洗面所 |
(子世帯)2階 | 初LDK(18畳)+多目的スペース(5.5畳)+洋室(5畳)+バルコニー+洗面所+トイレ+シャワールーム |
上記の例では、上下階に2つの広々としたLDKを設置。浴室は2つある訳ではありませんが、シャワールームを完備しているため、共有スペースが重なる時間でも手軽にシャワーで済ませられるように配慮されています。
また、広々としたバルコニーを2階に設置することで、庭のようなプライベート空間を実現しているのもポイント。水回りはまとめつつ、費用面にも配慮しているのも工夫の1つです。
二世帯住宅は完全分離型だからといって後悔しない訳ではありません。しかし、失敗や後悔する事例は、お互い話し合いができていなかったり、生活リズムについて把握していなかったりする場合が多くあります。
そのため、家族で二世帯住宅について話し合いを行い、ライフスタイルを把握して生活音に配慮する間取りにしたり、事前に生活におけるルールを決めたりすることが必要です。
二世帯住宅のデメリットを補うような間取りや設計にすることで、子育てや介護がしやすいなどメリットを活かせる二世帯住宅が建てられます。
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